労働貴族
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労働貴族(ろうどうきぞく、英語: Labor aristocracy)とは、労働者の中の貴族を意味する用語。一般の労働者よりも不当に特別高い賃金や特権的な待遇を得ている労働組合幹部層または労働組合そのものを批判的に指す用語[1][2][3][4][5][6]。類似用語は赤い貴族、貴族労組(きぞくろうそ、英:Aristocratic union)など[5][7][8]
概要

小学館のデジタル大辞泉によると一般労働者よりも特別に賃金が高い又は高い社会的地位を得ている特権的な労働者層。また、大企業の労使協調的な労働組合幹部をさすこともあると解説している[9]

ブリタニカ・ジャパンブリタニカ国際大百科事典によると、イギリス資本主義の発展段階で植民地収奪に基づく超過利潤の分け前で経済的・社会的地位の改善をはかった熟練労働者など一般の労働者よりも高い賃金や高い地位を得たことで、価値観や世界観がプチブルジョア化した特権的労働者層を指すとしている。レーニンは『帝国主義論』において、独占に基づく労働貴族の発生を説明し、批判をしていた[9]平凡社世界大百科事典によるとフリードリヒ・エンゲルスは著書『イギリスにおける労働者階級の状態』の1892年版の序文で、当時のクラフト・ユニオン(職能別組合)が排他的手段で職業ごとの利益を追求していると非難してこの用語を使用し、大衆的労働運動を主張する人々の間でこの用語が普及した。20世紀以降に労働組合が大衆化・巨大化して労働組合役員が固定的な層になると、これを批判する用語「労働官僚」とほぼ同じ意味でも使用されている[9]

1916年、ウラジーミル・レーニンは著書『帝国主義論』で、労働運動・社会主義運動の中で労働貴族は、海外の植民地支配など帝国主義によってもたらされた超過利潤によって買収されて自国の帝国主義戦争を支持し、労働者階級の利益を裏切っている人々を「労働貴族」と記して批判していた。

newsweekは韓国の自動車業界で不況に伴う給与や福利厚生、企業年金のカットが続く中、韓国で最も賃金の高いブルーカラー労働者の一つであり、1987年から4年を除いて毎年ストライキを行うヒュンダイ自動車労組のことを「 Hyundai's all-powerful aristocratic union 」と表現している。現代で車を1台作るのに30時間かかるのに対し、トヨタでは約22時間、フォードでさえ26時間である。そのため、サムスン証券の自動車アナリスト、キム・ハクジョーは、「現代自動車の人件費は、生産性に比べて高すぎる」「トヨタとのギャップはますます拡大している。」と語っている。組合の過度の要求と汚職スキャンダルに、韓国人消費者は現代自動車をボイコットするキャンペーンを行った[1]
社会主義国の例

「全ての労働者の平等」の実現をその最大の目的においた共産主義社会主義が発展する段階で、党中央や労働組合などに所属する一部の労働者が、その運動や活動の過程で権力や財力を得て「全ての労働者の平等」とは懸け離れた状態、そのような行為を行っている人物を指す。旧ソビエト連邦中華人民共和国など、社会主義や共産主義を標榜する国家における共産貴族ノーメンクラトゥーラなど。ベネズエラでは労働組合幹部が、資本家とともに福祉を独占していた。
資本主義国の例
南アフリカ共和国

南アフリカ共和国では、財界・企業経営者と一部労働組合の癒着が見られる。南アフリカの国営企業は、2009年から約9年続いたズマ政権下で汚職や縁故主義がはびこり、軒並み経営の危機にある。国営電力会社エスコムは、国内の電力シェアの9割以上を担いながら度々計画停電を行い、安定した電力供給ができておらず、更に4000億ランド以上の債務を抱えている。また、破綻の危機が伝えられる国営南アフリカ航空について、南アフリカ公営企業省は2019年12月1日に「今のままでは存続できない」との声明を発表した。南アフリカ航空では、同年11月に賃上げやリストラ計画を巡って労働組合が約1週間にわたるストライキを実施し、財務内容が急激に悪化したことで、大手旅行会社が同社の航空券の取り扱い中止を表明する事態になっていた。国営企業の経営難は経済の足を引っ張っており、国家による国営企業への巨額の支援は、景気刺激の財政出動も縛っている[10]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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