労働時間
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経済協力開発機構(OECD)の報告による各国年間平均労働時間の推移(1970年以降)[1]

労働時間(ろうどうじかん)とは、使用者または監督者の下で労働に服しなければならない時間のことを指す。労働者が使用者の下で労働に服するにあたり、労働者は使用者の指揮命令下におかれ、その間の時間を労働のために費やすこととなる。つまり、労働者はこの時間において使用者によって拘束され、労働者の行動は大きく制限される。

カール・マルクスの『資本論』においては、資本家に対して労働者が己の労働力そして時間を売り、その対価として資本家から賃金を得るものとされている。

国際労働機関(ILO)1号条約では、家内労働者を除いた工業におけるすべての労働者の労働時間は1日8時間、1週48時間を超えてはならないとされている[2]。さらに第30号条約[3]などにより商業および他の業種も同じ程度の労働時間が決められている。
八時間労働制

国際労働機関(ILO)1号条約は、その正式名称を工業的企業に於ける労働時間を1日8時間かつ1週48時間に制限する条約としており、以下の企業における労働時間を規制している(第1条)。

山業、石切業其の他土地より鉱物を採取する事業

物品の製造、改造、浄洗、修理、装飾、仕上、販売の為にする仕立、破壊若は解体、材料の変造を為す工業(造船並電気又は各種動力の発生、変更及伝導を含む)

建物、鉄道、軌道、港、船渠、棧橋、運河、内地水路、道路、隧道、橋梁、陸橋、下水道、排水道、井、電信電話装置、電気工作物、瓦斯工作物、水道其の他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更又は解体及上記の工作物又は建設物の準備又は基礎工事

道路、鉄軌道、海又は内地水路に依る旅客又は貨物の運送(船渠、岸壁、波止場又は倉庫に於ける貨物の取扱を含むも人力に依る運送を含まず。)

なお以下の例外条項が存在する(第2条)

管理監督者、機密の事務を処理する者は除外される

政令または団体協約が存在する場合、週において労働時間が1日あたり8時間未満であった場合には、その分を同じ週の他の日において振替可能。

シフト勤務の場合、3週以下の期間において、その間の労働時間の平均が1日8時間または1週48時間を超えない範囲において。

なお商業および事務所においては、国際労働機関30号条約が同様に1週48時間かつ1日8時間以内と規定している。
各国の労働時間OECD各国における一日の時間配分(15-64歳人口)。
赤は有償労働、橙は無償労働、青はパーソナルケア、緑はレジャー。

世界の労働時間は1980年以降、減少傾向にある国と横ばいで推移する国とに二分される。OECDの報告において、2019年でOECD加盟諸国のうちで労働者の就労時間が最も長いのは、年間2,137時間を計上したメキシコであった。次点が1,967時間で2011年までトップだった大韓民国、更に、ギリシャチリイスラエルポーランドチェコと続く。日本は1990年ごろまでは2000時間を超えトップグループに位置し、勤勉だと思われていたが、近年はアメリカよりも労働時間が短い。但し、労働力調査による日本の年間労働時間は、2019年で年間1,981時間であり、その場合は、メキシコに次いで2番目に高い国となる[4]

独立行政法人労働政策研究・研修機構発行「データブック国際労働比較2019」[5]によれば、主要諸外国についても、概ね減少傾向なっており、2018年には、韓国は2,005時間、アメリカが1,786時間、イタリア1,723時間、日本1,680時間(労働力調査では1,997時間)、イギリス1,538時間、フランス1,520時間、スウェーデン1,474時間、ドイツ1,363時間などとなっている[注 1]

OECD各国の週平均労働時間(男性)

OECD各国の週平均労働時間(女性)

EU労働時間指令

欧州連合労働時間指令(Working Time Directive 2003, 2003/88/EC)では、労働時間、休息期間について以下と規制している。

Article 3 ? 24時間のうち、連続した11時間を休息期間として確保すること(勤務間インターバル)。

Article 4 - 6時間を超える労働では、途中休憩時間を確保すること。

Article 5 - 7日間ごとに最低24時間の中断されない休憩期間(週休)を設けること。

Article 6 - (b).平均労働時間は各7日間につき、時間外労働を含め48時間を超えてはならない。

イギリス

英国においては、週あたりの平均労働時間は最大48時間に規制される(17週間で平均される)[6]。労働者が自発的に書面で申し出た場合、この規制をオプトアウトすることが可能であり、これは雇用契約後でもいつでも取り消すことが可能[6]。契約時間数を超える労働(残業)についての割増賃金は不要である[7]
日本.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
労働条件通知書

本項で労働基準法について以下では条数のみを挙げる。日本の公務員については勤務時間を参照。

日本では、日本国憲法第27条2項の規定を受け、労働基準法(昭和22年4月7日法律49号)等により、割増賃金の不要な法定労働時間の上限やその計算方法が定められている。

労働基準法に定められた労働時間を法定労働時間就業規則などに定められた労働時間から休憩時間を除いた時間を所定労働時間という。法定労働時間または所定労働時間のいずれか長い時間を越えた時間外労働の時間を法定外労働時間、所定労働時間を越え法定労働時間未満を所定外労働時間ということがある。また、就業時間は、労働時間、特に所定労働時間の意味でもちいられる。なお、労働時間を1日あたりに割り振った場合の1日単位を労働日という。

始業及び終業の時刻、休憩時間に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項となっているため、使用者は就業規則にこれらに関する事項を必ず記載しなければならない(第89条)。また、労働条件の絶対的明示事項ともされていて(第15条件)、使用者は労働契約締結に際し書面でこれらに関する事項を明示しなければならない。

一方で、日本はILOの労働時間に関する条約(1号、30号、153号など)を1つも批准していない。日本の法制は、基本的原則はILO条約に倣ったものとなっているが、法定労働時間は例外が規定されており、三六協定などを用いれば労働時間に事実上、上限は無いことが問題とされてきた。深夜12時を過ぎる残業や翌朝までの残業が行われているケースもあり、著しい長時間労働は労働者の健康を害し、うつ病などの精神疾患過労死自殺の原因となっている。こうしたことから、 事業主は、労働時間等[注 2]の設定の改善を図るため、必要な措置を講ずるよう努めなければならない とする「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」(時限立法であった「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」を改正し、恒久化して成立)が平成18年4月1日から施行されている。同法により、事業主は、労働時間等の設定に当たっては、その雇用する労働者のうち、その心身の状況及びその労働時間等に関する実情に照らして、健康の保持に努める必要があると認められる労働者に対して、休暇の付与その他の必要な措置を講ずるように努めるほか、その雇用する労働者のうち、その子の養育又は家族の介護を行う労働者、単身赴任者、自ら職業に関する教育訓練を受ける労働者その他の特に配慮を必要とする労働者について、その事情を考慮してこれを行う等その改善に努めなければならないとされる(同法第2条)。


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