加味逍遥散
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加味逍遙散(かみしょうようさん)とは、漢方処方の一つ。『和剤局方』に収載されている「逍遙散」に山梔子牡丹皮を加えた処方で、別名「丹梔逍遙散」(たんししょうようさん)ともいう[1]。加味逍遙散の出典については諸説ある[2]。主に女性に用いられる漢方薬である。不安感やイライラ等には性別問わず適応。病院で処方される医療用医薬品と薬局等で購入できる一般用医薬品がある。味は苦みが強く飲みにくいため錠剤漢方もある[3]。出典の詳細については出典の節を参照
効果・効能

比較的体質虚弱で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やイライラ、いらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症 : 冷え症、虚弱体質、月経不順月経困難更年期障害血の道症不眠症[4]
組成

加味逍遙散の構成生薬は以下の10味からなる[4]

当帰(トウキ)3、芍薬(シャクヤク)3、白朮(ビャクジュツ)[† 1]3、茯苓(ブクリョウ)3、柴胡(サイコ)3、牡丹皮(ボタンピ)2、山梔子(サンシシ)2、甘草(カンゾウ)1.5-2、生姜(ショウキョウ)1、薄荷葉(ハッカヨウ)1

当帰

芍薬

白朮

茯苓

柴胡

牡丹皮

山梔子

甘草

生姜

薄荷葉

局方収載

第十五改正の日本薬局方から、上記構成生薬を乾燥エキス化した「加味逍遙散エキス」(Kamishoyosan Extract)が収載された[5][6]
出典『内科摘要』中の「加味逍遙散」

加味逍遙散の出典にとしては、『和剤局方[† 2]、『女科撮要』[† 3]、『内科摘要』[† 4]、『万病回春』[† 5]など諸説ある[2]中国北宋代の『和剤局方』にはその婦人諸病門に「逍遙散」が収載されているが、「加味逍遙散」の記述は見られない。「逍遙散」の初出はこの『和剤局方』であると考えられており、現在の「加味逍遙散」の構成生薬のうち山梔子と牡丹皮を含まない8味からなる処方であり「加味逍遙散」の原方である。「加味逍遙散」との名称は中期の薛己(セツキ:薛立斎とも)の撰述による『女科撮要』、『内科摘要』(嘉靖年間1529年)に初めてみられ、この2出典にて構成生薬に山梔子と牡丹皮が加えられているが、生姜と薄荷葉を含まない8味の構成となっている。『女科撮要』、『内科摘要』以外の『薛氏医案』[7][† 6]では、『明医雑著』[8]の附方に収載の「加味逍遙散」で生姜は含まれているが、薄荷葉はやはり含まれていない。現在と同じ10味の処方構成としては、?延賢の撰述による『万病回春』(明の万暦年間1587年)にその記述が初めてみられる。以上のような医史学的考察を行った小山は、本方のように複雑な過程を経て完成に至った場合、出典を一つに絞るのではなく全てが出典の一部をなすと考えるべきであり、『和剤局方』、『薛氏医案』、『万病回春』を出典とすべきであると述べている[2]
処方名

「逍遙散」に山梔子と牡丹皮を加味したという意であるが[1]、「逍遙散」とは逍遙?翔(しょうようこうしょう:フラフラ飛び廻る様な)として定まらない愁訴を治すとの意味である[9]
慎重投与
著しく胃腸の虚弱な患者

食欲不振、悪心、嘔吐のある患者

相互作用
併用注意
カンゾウ含有製剤

グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤

副作用
重大な副作用

偽アルドステロン症ミオパシー肝機能障害、黄疸
その他の副作用
過敏症:発疹、発赤、掻痒等

消化器:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等

薬効・薬理
動物実験
更年期障害モデル(
卵巣摘出)マウスに加味逍遙散を経口投与したところ、ストレス負荷によるペントバルビタールナトリウム誘発睡眠時間の短縮が抑制された[10]

更年期障害モデル(卵巣摘出)ラットに加味逍遙散を経口投与したところ、性腺刺激ホルモン放出ホルモン (LH-RH)による皮膚温上昇が抑制された[11]

更年期障害モデル(卵巣摘出)ラットに加味逍遙散を経口前投与したところ、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRF)脳室内投与による自発運動亢進が抑制された[12]

関連処方

逍遙散

加味逍遙散合四物湯

関連項目

日本薬局方

和剤局方

更年期障害

血の道症

脚注[脚注の使い方]^ メーカーによっては蒼朮(ソウジュツ)で代用されているが、これは日本独自の古方派に由来するもので、微妙に効果が異なるため現在では投与目的に応じて白朮配合のものと蒼朮配合のものを使い分けるケースもみられる。
^ 『一般用漢方処方の手引き』(厚生省薬務局監修『一般用漢方処方の手引き』薬事時報社、1990年、p41-45)、『経験・漢方処方分量集』(大塚敬節矢数道明監修、気賀林一編『経験・漢方処方分量集』医道の日本社、1981年、p28-29)では『和剤局方』
^ 『改訂新版漢方処方集』(龍野一雄『改訂新版漢方処方集』中国漢方、1991年、p20)では『女科撮要』
^ 『中医処方解説』(伊藤良、山本巖監修、神戸中医学研究会編著『中医処方解説』医歯薬出版、1984年、p217)では『内科摘要』
^ 『図説東洋医学湯液編1:薬方解説』(山田光胤、橋本竹二郎『図説東洋医学湯液編1:薬方解説』学習研究社、1984年、p167、ISBN 4-05-004724-1)では『万病回春』


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