剤形(ざいけい、英: dosage form)は、医薬品や農薬をその目的、用途に応じ適切な形に製したものの形自体を意味する。剤型と表記する場合もある(表記に関しては“剤けい”の表記の項を参照)。
本稿では特に明記がない限り医薬品の剤形について述べる。
概要、崩壊剤その他の適切な添加剤などを加え、一定の製法により形を整えた剤形として錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤など、有効成分を適切な溶剤や基剤に溶解または混和するなど一定の製法により形を整えた剤形として液剤、ローション剤、軟膏剤などがあり[1]、整形された形とその製法によって剤形の名称が決まる[2]。
剤形の類義語として「製剤」(英: preparation(s))があるが、剤形は整形された医薬品等の形自体を意味する(つまり名詞)一方、製剤は整形・製造した医薬品等を意味する他、医薬品等を整形・製造すること自体の意味もある(名詞および動詞)。 剤形の歴史は製剤の歴史の項目を参照。 『日本薬局方第15改正』製剤総則では以下の28種の剤形の分類が掲載されており、その製法および形などを規定している[1]。
歴史
剤形の例硬カプセル剤の例軟カプセル剤の例丸剤の例注射剤の例
エアゾール剤
液剤(Liquids and Solutions):液状の内用液または外用液で、他の剤形に該当しないもの。有効成分をそのまま用いるかまたは溶剤に溶解する。
エキス剤(Extracts):生薬の浸出液を濃縮または乾燥したもので次の2種類がある。
軟エキス剤:水あめようの稠度
乾燥エキス剤:砕くことができる固塊、粒状または粉末
エリキシル剤(Elixirs):甘味・芳香のあるエタノールを含む澄明な内用液剤。医薬品またはその浸出液にエタノール、精製水、着香剤および白糖または甘味剤を加え、濾過等により透明な液に製する。
カプセル剤(Capsules):医薬品を液状、懸濁状、粉状、顆粒状などの形でカプセルに充填するか、カプセル基剤で被包成型したもので次の2種類がある。
硬カプセル剤:有効成分をそのままもしくは適切な賦形剤などの添加剤を混和して均質としたものか、有効成分を粒状もしくは成型物としてものをカプセルに充填する。
軟カプセル剤:主に油状の薬物、又は植物油に溶解・分散させた、液状、懸濁状、半固形状の主薬を、ゼラチンなどのカプセル基剤にグリセリンまたはソルビトールなどを加えて塑性を増し、被包成型する。
顆粒剤(Granules):医薬品を粒状にしたものでおおむね粒径355 - 1400 マイクロメートル (μm)のもの。有効成分をそのままもしくは賦形剤、結合剤、崩壊剤などの添加剤を混和して均質とした後、粒状とし粒子をそろえたもの。
丸剤(Pills):医薬品を球状にしたもの。有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤などの添加剤を加えて混和して均質とした後、球状に成型する。
眼軟膏剤(Ophthalmic Ointments):結膜嚢に適用する無菌に製した軟膏剤。ワセリンなどの基剤と医薬品の溶液または微細粉末を混和して均質として、チューブ等の容器に充填する。医薬品粒子の大きさは75 μm以下。
経皮吸収型製剤(Transdermal Systems):皮膚を通して全身循環血流に送達すべく設計された製剤。適切な基剤に有効成分を溶解または混濁し、必要に応じて粘着剤、溶剤、吸収促進剤などを加え、支持体またはライナーに展延し成型する。例:ホクナリンテープ
懸濁剤・乳剤(Suspensions and Emulsions):医薬品を液中に微細に懸濁または乳化させた液状の製剤。
懸濁剤:医薬品に懸濁化剤と精製水または油を加え、懸濁し均質にする。
乳剤:医薬品に乳化剤と精製水を加え、乳化し均質にする。
坐剤(Suppositories):医薬品を基剤により成形し、肛門または膣に適用する固形の外用剤。体温によって溶けるか、軟化するか、または分泌液で溶ける。肛門坐剤は円錐形または紡錘形、膣坐剤は球形または卵形。
散剤(Powders):有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤などの添加剤を加えて粉末または微粒状に製したもの。おおむね粒径500 μm以下のもの。
酒精剤(Spirits):揮発性医薬品をエタノールやエタノールと水の混液で溶かしたもの。
錠剤(Tablets):経口投与する一定の形状をした固形の製剤のこと。
口腔内崩壊錠:口腔内で速やかに溶解、又は崩壊させて服用する製剤のこと。適切な崩壊性を有する。
チュアブル錠:小児が服用しやすいように設計された、咀嚼して服用出来る錠剤のこと。口中で噛み砕くと急速に崩壊し、クリーム状になる。
発泡錠:水中で急激に発泡しながら溶解、又は分散する錠剤のこと。