前川 知大(まえかわ ともひろ、1974年 - )は、日本の劇作家、演出家。イキウメ、カタルシツを主宰する。 新潟県柏崎市出身[1][2]。2000年東洋大学文学部哲学科卒業[3]。活動の拠点とするイキウメは2003年結成。超常的な世界観で、身近な生活と隣り合わせに現れる異界を描く。空間と時間を同時に編集するシームレスな演出を特徴とする。 2007年『散歩する侵略者』(2005年初演)を小説として発表する(現在、角川文庫刊)。2008年上演の『表と裏と、その向こう』で、読売演劇大賞 優秀作品賞、優秀演出家賞。2009年上演の『関数ドミノ』『奇ッ怪?小泉八雲から聞いた話』で、紀伊國屋演劇賞 個人賞、芸術選奨新人賞ほか受賞。 2010年ロンドン・ロイヤルコート劇場 Royal Court Theatre
経歴
2013年劇団の実験室、カタルシツを開始。第一回公演ではドストエフスキー原作『地下室の手記』を翻案、演出。『地下室の手記』『片鱗』の演出で、第21回読売演劇大賞 優秀演出家賞、『片鱗』で優秀作品賞を受賞する。
2017年『散歩する侵略者』が黒沢清監督により映画化され、第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品。同年制作スピンオフのテレビドラマは、劇場版『予兆 散歩する侵略者』(黒沢清監督)として公開され、第68回ベルリン国際映画祭 パノラマ部門に出品される。
2017年『天の敵』『散歩する侵略者』で、第52回紀伊國屋演劇賞 団体賞を受賞する(イキウメ)。
2016年『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』(原作 柳田国男、世田谷パブリックシアターほかで上演)、2018年『ゲゲゲの先生へ』(原作 水木しげる、東京芸術劇場プレイハウスほかで上演)、2019年『終わりのない』(原典 ホメロス「オデュッセイア」、世田谷パブリックシアターほかで上演)などプロデュース公演での脚本・演出。
2016年ロンドンで『太陽』英語リーディング上演(The Studio Theatre, RADA)。2018年パリ市立劇場が『散歩する侵略者』フランス語リーディング上演、ラジオフランスでラジオドラマを放送。
2018年ソウルのカンパニーLASによる韓国語『散歩する侵略者』(イ・キプム演出)、2019年アルコ芸術劇場が再演上演(アーツカウンシルコリア主催)。2021年『太陽』ドゥサン アートセンター主催で上演(キム・ジョン演出)、キム・ジョンファが本作で東亜演劇賞 新人演技賞。2023年同作が国立チョンドン劇場主催で再演。Company Sigaによるダンス作品『太陽』(前川知大 原作、イ・ジェヨン 振付)が、大学路芸術劇場で上演される。
2021年頃より、翻訳戯曲が各国で出版される。『散歩する侵略者』フランス語(エスパス34出版社)、韓国語(ALMA出版社)。『太陽』スペイン語(Satrori出版社)、韓国語(ALMA出版社)、英語(Methuen Drama,an imprint of Bloomsbury Publishing House)、ロシア語(Hyperion Publishing House)、アラビア語(DarAl Maaref Publishers)、中国語(青島出版社)。
2022年『A la Marge(外の道・パリ公演)』イキウメ初の海外公演で作・演出(フランス語字幕)、パリ日本文化会館大ホールで上演する。フェスティバル・ドートンヌ・ア・パリ参加。
2024年『人魂を届けに』で、第31回読売演劇大賞 最優秀作品賞、優秀演出家賞を受賞する。
作品リスト
脚本・演出
ヘリコプター畑(2003年)
ボッサ!世界担当 (2003年)
窓際のベリーロール(2004年)
思慮深いモンスター(2004年)
はばかるな(2005年 脚本)
短篇集 図書館的人生vol.1(2005年)
双魚(2006年 脚本)
PLAYER(2006年)
江戸から着信!?(2007年 脚本)
煙の先(2007年 脚本)
狂想のユニオン(2007年)
抜け穴の会議室(2007・2010年)
ウラノス(2008年 脚本)
眠りのともだち(2008年)
表と裏と、その向こう(2008年)
図書館的人生vol.2 盾と矛(2008年)
相思双愛(2009年 脚本)
奇ッ怪?小泉八雲から聞いた話(2009年)
狭き門より入れ(2009年)
見えざるモノの生き残り(2009年)
図書館的人生Vol.3 食べもの連鎖(2010年)
現代能楽集Y 奇ッ怪 其ノ弐(2011年)
ミッション(2012年 脚本)
The Library of Life (2012年)
片鱗(2013年)
空ヲ刻ム者(2014年)
太陽2068(2014年 脚本)
暗いところからやってくる (2012・2014年 脚本)
新しい祝日(2014年)
地下室の手記(2013年二人芝居版、2015年ひとり芝居版)
プランクトンの踊り場(2010年)、聖地X(2015年改題)
語る室(2015年)
太陽(2011年、2016年)[4]
遠野物語・奇ッ怪 其ノ参(2016年)
生きてる時間(2017年)
プレイヤー(2017年 脚本)
散歩する侵略者(2005・2007・2011・2017年)
図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの(2018年)
ゲゲゲの先生へ(2018年)
CO.JP(2018年 脚本演出協力、脚本・演出 安井順平)
獣の柱(2013・2019年)[5]
終わりのない(2019年)[6]
関数ドミノ(2005・2009・2014年、2017脚本、2022年)
天の敵(2017・2022年)
外の道(2021・2022年パリ公演「A la Marge」)
人魂を届けに(2023年)
無駄な抵抗(2023年)
小説
散歩する侵略者 (2007年12月 メディアファクトリー、2017年7月 角川文庫)
鬼の頭 (群像 2011年4月号掲載、日本文藝家協会「文学2012」所収 2012年4月 講談社)
ヤブ蚊と母の血 (小説新潮 2014年8月号掲載 新潮社、2018年7月新潮文庫nex「だから見るなといったのに: 九つの奇妙な物語」所収)
太陽 (2016年2月 KADOKAWA)
絵本
くらいところからやってくる (絵:小林系