刺青の男_(小説)
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『刺青の男』(いれずみのおとこ、: The Illustrated Man)は、1951年に刊行されたレイ・ブラッドベリの短編集。

「刺青の男」の全身に彫られた刺青が動き出して18の物語を演ずる、という設定のもとで全体がひとまとまりになっている。「刺青の男」は予知能力を持っていることが示唆されており、各物語は未来世界を描いたものであろうと思われる。ほとんどが「宇宙時代」をテーマにしたSF小説であるが、全体的にディストピア的な雰囲気をもった作品が多く、火星人の襲来や世界の終わりのように古典的なSF的モチーフを扱った話もある。また、ブラッドベリのほかの作品と同様に、文明批判と受け取れる記述が多い。

日本語版は小笠原豊樹の翻訳で、早川書房ハヤカワ・SF・シリーズ)から1960年に刊行されている。
各編の題名

プロローグ 刺青の男 Prologue:The Illustrated Man

草原 The Veldt

万華鏡 Kaleidoscope

形勢逆転 The Other Foot

街道 The Highway

その男 The Man

長雨 The Long Rain

ロケット・マン The Rocket Man

火の玉 The Fire Balloons

今夜限り世界が The Last Night of the World

亡命者たち The Exiles

日付のない夜と朝 No Particular Night or Morning

狐と森 The Fox and the Forest

訪問者 The Visitor

コンクリート・ミキサー The Concrete Mixer

マリオネット株式会社 Marionettes,Inc.

町 The City

ゼロ・アワー Zero Hour

ロケット The Rocket

エピローグ Epilogue

ストーリー
プロローグ 刺青の男

9月上旬のある日、「わたし」は全身に美しい刺青をした男と出逢った。男は見世物小屋で働いているのだが、夜になると絵が動き出して未来のことを予言するので、すぐ仕事をクビになってしまうのだという。刺青は50年前の1900年に「未来から来た」という老婆に彫ってもらったのだが、老婆は未来へ帰ってしまった。男の右の肩甲骨には絵が描かれていないが、だれかが永く眺めていればその人の一生があらわれるという。すみきった夜。月あかりのなか、刺青の絵はひとつひとつ順番に動き出した。
草原

ジョージとリディアは彼らの子ども、ウェンディとピーターのことで心配していた。子どもたちは、精神に感応して望みどおりの風景を見せてくれる子供部屋に入り浸るようになっていた。2人が部屋に入ると、アフリカサバンナが広がっていた。悲鳴が聞こえ、ライオンが突進してくる。臭音装置(オドロフォニックス)から漂う血の臭い。リディアは部屋の鍵をかけてしまって、2 - 3日旅行に行こうと提案した。子どもたちが帰ってきた。部屋のことを問い詰めても、知らんぷりをした。ウェンディと一緒に部屋にはいると、部屋は美しい森に変わっていた。森の中にはジョージの古い財布が落ちていた。財布には血が付いていた。ジョージは部屋に鍵をかけることに決めた。それでも子どもたちは鍵を破って部屋に入っていた。ライオンはうまそうに獲物を食べていた。ジョージは心理学者のマクリーンに部屋を見せた。マクリーンは、子どもたちが破壊的な思想に向かっているといい、今まで甘やかしてきたのに、いきなり抑圧するようになったのが原因だと教えた。2人は子供部屋のスイッチを切った。子どもたちはヒステリーを起こした。見かねたリディアが、最後に1分間だけ子供部屋を使わせることにした。子どもたちは言った「お父さん、お母さん、早く来て!」。2人が部屋へ行くと、ライオンが突進して来た。悲鳴を上げる2人。マクリーンが来ると、2人はいなくなり、ライオンが獲物を食べていた。
万華鏡

突然ロケットが破裂して、乗員たちは宇宙空間に投げ出されて散りぢりに離れていった。なすすべもなく流星のように飛んでいきながら、隊員たちは電話で会話を続ける。このまま行けば隊長はにぶつかるらしい。ストーンは流星群へ。アプルゲイトは冥王星へ。ホリスは地球へ向かっている。大気圏で燃え尽きてしまうだろう。別れの挨拶が繰り返される。ホリスは自分の人生は死人同然だったと感じた。楽しい思い出がひとつも無かったのだ。ホリスは最後に自分にしかわからない何かいいことがしたいと思った。大気圏に突入したら、おれは流星のように燃えるだろう。ホリスは言った「ひょっとして、だれかにおれの姿が見えないものだろうか」。田舎の道を歩いていた少年が、空を見上げて叫んだ。「あ、お母さん、見てごらん!流れ星!」母親が言った。「願いごとをおっしゃい」
形成逆転

20年ぶりに白い人の乗ったロケットが来ると聞いて、黒い人たちは空を見上げた。20年前、黒人たちはロケットで火星にやってきた。地球では原子戦争が始まり、数年後にはロケットが1つも無くなっていた。やっと新しいロケットができてようやく訪ねてきたのだった。ウィリーは地球で白人から受けた差別を忘れていなかった。彼の両親はさんざん働いた挙句、吊るされてしまったのだった。ウィリーは町の人々を煽動して、銃と塗料とロープを持ってこさせた。バスと電車に塗料で「FOR WHITES:REAR SECTION(白人は後ろの座席へ)」と書いた。劇場の一番うしろの2列をロープで囲って白人専用の座席をつくった。ウィリーは言った「黒人と白人の結婚を禁止する法律をつくろう。最低賃金法を決めよう、白人の最低賃金は一時間10セント」。町では通りという通りに<外来客お断り>の看板が立った。ロケットが到着した。ひとりの白人が降りてきて話を始めた。第三次世界大戦は去年ようやく終わりを迎えた。世界中の都市が爆撃されて灰燼に帰した。放射能で何もかも汚染された。現在の地球にはせいぜい50万人しか残っていない。彼らは廃墟に残った金属をかき集めて、ロケットを1台つくった。地球人たちはようやく自分たちの愚かさに気づき、新しい世界をつくるために火星に助力を求めてやって来たのだという。今やウィリーの両親が殺された場所も、吊るされた木も消えていた。黒人たちは看板を壊し、銃の弾を抜き、ペンキを塗りなおした。ウィリーは言った「馬鹿者の時代は終わったよ。おれたちは馬鹿者ではない何者かにならなきゃいかん」
街道

雨がやんだらもういちど畠に鋤を入れるつもりで、エルナンドは待っていた。足にはタイヤのゴムでつくった草鞋を履いていた。コンクリートの街道にはもう1時間も車が通らなかった。いつもならカメラを持った観光客が小屋に立ち寄ってくるはずだった。突然、何百台もの車が列をなして走り抜けていき、やがて静かになった。そのとき、古めかしいフォードが、エルナンドの前で停まった。ラジエータが焼けていたのだ。運転者は二十一、二歳の青年だった。車にはほかに5人の若い娘たちが乗っていた。エルナンドは鉢代わりのハブ・キャップに水を汲んでくると、青年に何があったのか尋ねた。青年は言った「始まったんですよ」「戦争ですよ!」。青年たちは礼を言うと、車を走らせた。再び静かになった。エルナンドは「世界の終わりって、なんのことだろうな」と独りごとを言った。
その男

ハート隊長のロケットが、ようやくある惑星に着陸した。しかし1時間待ってみても住民が出迎えにこない。副官のマーティンが市長に面会に行くと、とんでもない事実が明らかになった。きのう、この町にどえらい男があらわれた。善良で、知的で、情け深くて、限りなく賢い男だった。その男には名前がなく、いろいろな惑星でそれぞれ違う名前で呼ばれている。その男は病人を治し、貧乏人をなぐさめ、偽善や汚職と戦い、人々に道を説いて聞かせた。隊長とマーティンは、その男が、地球人が20世紀のあいだ語り続けてきたあの男だと直感した。マーティンは深く感動して、この町に残りたいと言ったが、隊長は信じることができず、先に来たバートンかアシュリが住民をだましているだけだと主張した。そこへバートンの宇宙船とアシュリの宇宙船が到着し、2人は宇宙嵐に遭遇して既に死亡していると聞かされた。真相を知った隊長とマーティンはその男に会いに町へ行ったが、既に他の惑星に行ってしまったと教えられた。隊長はすぐにロケットで後を追ったが、マーティンはこの惑星に残る決心をした。残されたマーティンに、市長は手を差し伸べていった「さあ、参りましょう。あの方を待たせてはいけません」
長雨

4人の男が雨の中を歩いていた。金星では絶対に雨が降り止まない。一行はロケットが不時着した地点から、太陽ドームを目指してジャングルの小道を歩いていたのだった。疲労は限界に近づいていた。雨のせいで眠ることができないのだった。ようやく太陽ドームが見えてきた。しかしそれは不時着したロケットだった。金星の怪獣が起こす電気嵐のせいでコンパスが狂っていた。隊員の1人がパニックになって走り出し、電気に撃たれて焼死した。3人は歩き続けた。ようやく本物の太陽ドームにたどり着いた。しかし、そこは既に廃墟になっていた。金星人の攻撃を受けたのだ。金星にはあと一つしか太陽ドームがない。一行は出発したが、途中でピカードが発狂して失神した。放っておけば雨が肺に入って死ぬだろう。シモンズが拳銃でピカードを撃ち殺した。20分歩いてもドームは見えなかった。シモンズは耳をやられていた。彼はここで死ぬと言って座り込んだ。隊長は出発した。あと5分歩いて見つからなかったら海に入って死のうと考えた。そのとき、太陽ドームを見つけた。ふらふらになりながら辿り着くと、中には暖かい太陽が輝いていた。
ロケット・マン

ぼくは母さんに、今度こそ父さんを引き止めてくれと頼まれた。父さんはロケット・マンだった。父さんは帰ってきて2日目にはもう空を眺めるようになる。3日目の夜にはいつまでもポーチに座っている。そして4日目になると出発してしまうのだ。また3か月は帰ってこない。ぼくは最初の晩に父さんを展示会にさそった。母さんはにっこりした。3次元の展示品の前で、ぼくはうっかり宇宙旅行のことを父さんに聞いてしまった。父さんは「一番すばらしいことだ」と答えたあと、気がついて「大したことはない」と言い直した。家に帰ると、ぼくは父さんに制服を着て見せてもらった。母さんは恨めしそうな顔をしていた。次の日カリフォルニアに旅行に行った。ぼくと父さんは浜辺に寝そべって話をした。父さんは、「大きくなったら、ロケット・マンにだけはならないでくれ」と言った。宇宙に行くと、地球に帰りたくなるが、帰ってくると、また行きたくなるのだという。ぼくは、前からロケット・マンになりたかった、と言った。晩御飯は豪勢だった。母さんは、次の感謝祭ごろにはもういないだろうから、と言った。父さんは、もう行かない、と言おうとしたが、言えなかった。次の日の朝、今度こそ最後にすると言って、父さんは出かけてしまった。母さんは、父さんはもう亡くなったと思うようにしている、と言った。次の日、電報が届いた。母さんは泣かなかった。父さんの宇宙船は、太陽に落ちたのだった。ぼくたちは永いこと、太陽の見えない雨の日だけ散歩するのが習慣になった。
火の玉

宇宙船「十字架」号が、布教のために火星へ向かった。


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