分子式
[Wikipedia|▼Menu]

Al 2 ( SO 4 ) 3 {\displaystyle {\ce {Al_2(SO_4)_3}}} 硫酸アルミニウムの化学式

H − C 。 H H 。 − C 。 H H 。 − C 。 H H 。 − C 。 H H 。 − H {\displaystyle {\ce {H-{\overset {\displaystyle H \atop |}{\underset {。\atop \displaystyle H}{C}}}-{\overset {\displaystyle H \atop |}{\underset {。\atop \displaystyle H}{C}}}-{\overset {\displaystyle H \atop |}{\underset {。\atop \displaystyle H}{C}}}-{\overset {\displaystyle H \atop |}{\underset {。\atop \displaystyle H}{C}}}-H}}} ブタン構造式

化学において、化学式(かがくしき、chemical formula)は、特定の化合物分子を構成する原子の化学的比率に関する情報を表す方法で、化学元素記号や数字に加え、丸括弧、ダッシュ、角括弧、コンマ、プラス (+) やマイナス (?) 記号などの他の記号も併用される。これらは、印刷上の1行に収まるよう制限されているが、下付き文字や上付き文字(英語版)を含むこともできる。ただし化学式は、単語を含まないため、化学名(英語版)ではない。また、化学式が単純な化学構造を示唆することもあるが、完全な化学構造式とは異なる。化学式は、最も単純な分子や化学物質の構造のみを完全に特定できるが、一般的に化学名や構造式よりも表現力は制限されている。

最も単純な化学式は実験式(empirical formulae)と呼ばれるもので、文字と数字を使用して、原子の種類ごとの数値比率を表す。分子式(molecular formulae)は、分子を構成する原子の種類ごとの単純な数を示すもので、構造に関する情報はない。たとえば、グルコースの実験式は CH
2O (水素原子は炭素酸素の2倍)だが、分子式は C
6H
12O
6 (水素原子12個、炭素と酸素原子6個)である。

化学式が示性式(condensed formula)[注釈 1]として記述される場合、原子が化学的に結合する固有の方法(共有結合イオン結合、またはその組み合わせ)に関する情報の追加によって複雑になることがある。これは、関連する結合が一次元で簡単に表現できるものであれば選択可能である。たとえば、エタノールの示性式は、CH
3?CH
2?OH、または CH
3CH
2OH である。しかし示性式でも、原子間の複雑な結合関係、特に4つ以上の異なる置換基との結合を持つ原子を表現するにはどうしても限界がある。

化学式は元素記号の一行で表現しなければならないため、化合物中の原子どうしの空間的関係をグラフィックで表現した完全な構造式ほど多くの情報量を伝えられないことが多い(たとえば、右下のブタンの構造式、化学式の図を参照)。分子の構造の複雑さのため、ある示性式が、異性体と呼ばれる互いに異なる分子に対応することがある。たとえば、グルコースの分子式は C
6H
12O
6 であるが、フルクトースガラクトースマンノースなどの異なる多くの糖類と共通している。複雑な構造を一意に特定できる線形等価化学名[訳語疑問点]も存在するが(化学命名法(英語版)を参照)、このような名前には、化学式を定義する単純な元素記号、数字、単純な活版印刷用記号だけではなく、多くの用語を使用しなくてはならない。

化学式は、イオン性化合物 (en:英語版) の溶液への溶解など、化学反応やその他の化学転換を記述するために、化学方程式(chemical equations、化学反応式とも)に使用されることがある。上述のように化学式は、構造式のように原子間での化学的結びつきを示すことはできないが、化学反応における原子の数や電荷の数を把握するには十分であり、化学方程式の収支をとることで原子や電荷の保存を含む化学問題で利用することができる。
概要

化学式は、化合物を構成する各元素化学記号で識別し、各元素の原子数の比率を示すものである。実験式の場合、これらの比率は、化合物中の主要な元素から始まって、その元素に対する比率で他の元素の原子数を割り当てる。分子化合物の場合、これらの比率の値はすべて整数で表すことができる。たとえば、エタノールの実験式は C
2H
6O と表記されることがあるが、これはエタノールの分子はすべて2個の炭素原子、6個の水素原子、1個の酸素原子を含んでいるからである。しかし、イオン性化合物の中には、実験式をすべて整数で表現できないものもある。たとえば炭化ホウ素の場合、その式 CB
n は、n が 4-6.5 の間で可変の非正数比である。

化合物が単純な分子で構成されている場合、化学式は分子の構造を示唆する記述法をとることが多い。このような式は、分子式あるいは示性式として広く知られている。分子式は、分子内の原子の数を反映させるために原子数を列挙する。そのため、グルコースの分子式は C
6H
12O
6 となり、実験式の CH
2O とは異なる。しかし、非常に単純な物質を除いて、分子の化学式は必要な構造情報を欠いていて、曖昧となる。

単純な分子の場合、示性式(または半構造式)は、正しい構造を完全に示唆する可能性のある化学式の一つである。たとえば、エタノールは CH
3CH
2OH という示性式で、ジメチルエーテルは CH
3OCH
3 という示性式で表すことができる。この2つの分子は同じ実験式と分子式(C
2H
6O)を持っているが、単純な有機化合物の完全な構造を表すのに十分な示性式が示されることで、分子を区別することができる。

また、示性式はイオン性化合物も表現することができる。イオン性化合物は個別の分子としては存在せず、その内部に共有結合したクラスターを含んでいる。これらの多原子イオンは、たとえば硫酸イオン [SO
4]2-
のように、全体としてイオン電荷を持つ、共有結合した原子のグループである。化合物中の各多原子イオンは、グループ分けを説明するために個別に表記される。たとえば、六酸化二塩素(英語版)という化合物は、実験式は ClO
3 、分子式は Cl
2O
6 で表されるが、液体や固体ではイオン示性式 [ClO
2]+
[ClO
4]?
で表す方がより正確であり、この化合物が [ClO
2]+
イオンと [ClO
4]?
イオンから構成されることを示している。このような場合、示性式は各イオン種の少なくとも1つを示すのに十分な複雑さであればよい。

本記事で説明する化学式は、化学命名法(英語版)のさまざまな体系で使用されている非常に複雑な化学系統名とは異なるものである。たとえば、グルコースの系統名の一つに、(2R,3S,4R,5R)-2,3,4,5,6-pentahydroxyhexanal がある。この名前はその背景にある規則によって解釈され、グルコースの構造を完全に特定しているが、通常の意味での化学式ではなく、化学式では用いられない用語や単語を使っている。このような名前は、基本式とは違って、グラフィックを使わなくても完全な構造を表すことができる可能性がある。
種類
実験式詳細は「実験式」を参照

化学では、化学物質の実験式(empirical formula)とは、化合物質に含まれる原子の種類ごとの相対的な数、または元素の比率を簡単に表したものである。化学物質の元素組成を示すことから、元素組成式(compositional formula, nominal composition)、あるいは単に組成式と呼ぶこともある。CaCl
2 のようなイオン性化合物や、SiO
2 のような高分子化合物では、実験式が標準となる。実験式では、異性、構造、原子の絶対数には言及しない。実験(empirical)という用語は、元素分析のプロセスを意味しており、これは純粋な化学物質の元素ごとの相対的な組成を決定するのに使われる分析化学の技術である。

たとえば、ヘキサンは分子式は C
6H
14 で、n-ヘキサン(異性体の一つ)の構造式は CH
3CH
2CH
2CH
2CH
2CH
3 であり、6個の炭素原子と14個の水素原子からなる直鎖構造を持っていることを意味する。しかし、ヘキサンの実験式は C
3H
7 となる。同様に、過酸化水素 H
2O
2 の実験式は単純に HO で、構成元素が 1:1 の比率であることを表している。ホルムアルデヒド酢酸の実験式は同じ CH
2O である。これは、ホルムアルデヒドの実際の化学式でもあるが、酢酸はこの2倍の原子数を持っている。
分子式イソブタンの構造式
分子式: C
4H
10
示性式: (CH
3)
3CH H − C 。 H H 。 − C 。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:40 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef