出版取次
[Wikipedia|▼Menu]

出版取次(しゅっぱん とりつぎ)とは、出版とその関連業界で、出版社書店の間をつなぐ流通業者を指す言葉。単に取次とも。

取次と書店との関係は、卸売問屋と小売店の関係に当たるが、委託販売制度により、書店が在庫管理を考えなくて済むのが、他の業種との大きな違いである。
機能

20世紀の出版業は、他業界に比して取り扱う商品の種類が極端に多く、出版社や書店は多数の個別取引や商品管理の煩雑を抱えることになった、また書店は、雑誌などの商品が売れ残った場合の損失リスクが大きかった。このため、日本の出版流通は取次主導型の体制により、取引の仲介、配本・返品の管理、代金回収などを一手に引き受けるほか、取次が出版社と書店の仲に入って信用保証を行うことにより、再販売価格維持、委託販売制度といった日本独自の業界制度を実質的に維持する役割を担った。

また、雑誌、新刊本、人気本などで書店の仕入れ希望数合計が発行部数よりも多くなることもある書籍は、取次が一元的に各書店への配本数を調整し、全国に安定して配本する役割を果たした。

また、必要に応じて、書店に対して品揃えの調整・販売促進イベントやフェアの実施の助言をしたり、出版社に市況に合った書籍の助言をしたりするなど、コンサルティング機能を担うこともあった。

また、書店への代金回収の繰り延べや出版社への委託販売代金の見込払いといった、実質的な金融機能を担うこともあった。

一方で、中小出版社や書店も多い書籍関連業界において安定した流通を維持するためには、取次により徹底管理された護送船団方式的な横並びシステムとならざるを得ない面もあった。21世紀に入り、オンライン書店の台頭や電子書籍の普及といった情報革命が書籍関連業界に及んでも、中小出版社・書店での流通システム面でのイノベーションによる対応は緩慢であった。

取次は出版社や書店に対してパターナリズム的な支配関係を維持していたため、時には書店側の意向や公正な取引慣行を無視した要求が批判・摘発されることもある。平成10年2月25日には書籍流通システムの更新費用の負担を書店に強要したとして、出版取次大手の日本出版販売およびトーハン公正取引委員会から警告を受けている[1]

出版社、小売書店の両サイドで、取次を介さない相互の直接取引を増やすことを志向する企業がある[2][3]。出版社ではディスカヴァー・トゥエンティワントランスビューなど[4]。 小売ではアマゾンジャパンや丸善ジュンク堂書店などである[5]

大手出版社ではKADOKAWAが自社から直接書店に配送する会社の設立を予定[3]講談社でもアマゾンジャパンと取次を介さない直接取引を開始した[2]
歴史

明治の初めは出版社や書店が取次を兼業していたが、雑誌販売の増加にともなって専業取次が現われる。

大正時代には雑誌・書籍を取り扱う大取次、書籍を地方まで運ぶ中取次、市内の書店を小刻みに取り次ぐ小取次や、せどりやなどへと分化しており、その数も全国で300社余りもあった。

1941年、太平洋戦争第二次世界大戦)に伴う戦時統制の一環として全国の取次が強制的に解散させられ、日本出版配給(日配)に統合された。この時点で、それまでの取次はほとんど消滅した。戦後の1949年に日配は解体され、現在も続く取次会社の多くがこの頃に創業している。

取引形態は当初は買い切り、値引き販売が基本だった。

1909年 - 実業之日本社が雑誌の返品制(委託販売制)を初めて採用して成功を収め、以後他社も追随して雑誌の返品制が確立する。

1919年 - 東京書籍商組合が定価販売制を導入。

1926年 - 円本時代始まる。書籍の大量流通が始まって雑誌流通と一体化、書籍の返品制が始まる。

1953年 - 再販制度制定。

という流れを経て、書籍・雑誌流通の一体化、返品制、定価販売(再販売価格維持制度)という現在の方式に移行している。この方式は大量生産、大量流通を可能にした。これ以後、日本の経済発展に合わせて出版も規模を拡大、取次も成長していく。

ところが定価販売制の元では価格競争が起こらず、流通システムの効率化がなかなか進まなかった。その結果が書店の過剰出店や返品の増加となって現われ、近年の出版不況とあいまって、書店や出版社だけでなく取次をも苦しめている。

こうした状況を打破するための取り組みも行われている。1990年には須坂共同倉庫構想(須坂ジャパンブックセンター計画)が持ち上がり、2005年には日販ほか取次数社による出版共同流通や、トーハン桶川計画(トーハン桶川SCMセンター[6])が始まっている。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:25 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef