冷蔵車
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この項目では、鉄道車両の一種について説明しています。貨物自動車の一種については「冷凍冷蔵車」をご覧ください。

冷蔵車(れいぞうしゃ)とは、鉄道貨車の一種で、腐りやすい生鮮食品などを温度を保持して輸送することができるように設計された車両である。日本国有鉄道における車種記号は「レ」。
概要レム5000形レム5465 尼崎駅にて

有蓋車から派生した車種であり、構造は有蓋車と似ているが、何らかの断熱構造を備えていることが特徴である。野菜や果物を輸送するためにもっぱら用いられる通風車とは異なり、冷蔵車には何らかの保冷装置・冷却装置が設置されている。冷蔵車では、氷・ドライアイス・機械的な冷凍機などで冷却が行われる。牛乳輸送用車両やその他の急行冷蔵車では、旅客列車に連結して高速で走行できるように台車などに改良が加えられたものがあり、そうした車両では冷却装置がなく単に断熱されているだけのものもある。

冷蔵車の使用目的は大きく分けて5つある。
乳製品鶏肉の輸送用。内部に棚を持った冷蔵車を使用する。

果物野菜などの輸送用。季節的に利用されることが多い。また青果の冷蔵車の利用は長距離輸送中心で、短距離では積み荷が熟する時に発生する(とアセトアルデヒドエチレンなどのガス)を取り除くために通風車を使用すれば十分なことが多い。

食品ビールワインなどの輸送用。これらでは冷蔵機能は必要ではなく、単に保温のために断熱機能が利用されることが多い。冬期に保冷ではなく、保温(凍結防止)のために用いることがある。

食肉の輸送用。内部に肉を吊るすレールや塩水を利用した低温冷却装置を備えている。食肉輸送用のものは食肉業者の私有貨車が多かった。

魚介類の輸送用。氷を詰めた発泡スチロール容器や木箱に魚を一緒に入れることが多く、車両に備えられた氷槽はあまり利用されなかった。

日本では、機械式冷凍機を備えた車両は実験的にしか現れず、氷槽を備えた車両でもそれをあまり利用せず、主に5の魚介類輸送目的で使用されていた。地方の漁港で水揚げされた鮮魚首都圏近畿圏などの大都市圏に輸送するために多く用いられ、レサ10000形とレムフ10000形で構成された特急鮮魚貨物列車「とびうお」や「ぎんりん」は代表的な列車であった[1]

道路網の拡充と冷凍機付きトラックの発展に伴い、輸送距離が短い日本では、積み替え時間の占める割合が大きい鉄道貨物輸送では太刀打ちできず、さらに冷蔵冷凍機能の付いた冷蔵コンテナが登場したことにより特急貨物列車もコンテナ化されたことから1986年(昭和61年)までに全て運用を離脱した。しかし世界的に見れば、今でも冷蔵車を運行している国は多い。
構造

冷蔵車の構造は、車体そのものや走り装置などについては通常の貨車と大差ない。他の貨車との違いは、冷却や断熱に関する構造にある。
冷却方式
無氷槽式
短距離の輸送である場合や後述するトップ・アイシングの場合は、車両側に特段の冷却装置を設けない。日本では主流の形態であった。
氷槽式
初期の冷蔵車で一般的であった、氷やそれに塩水を混ぜたものを入れるタンクを車体に備えて冷却する方式。氷槽の設置位置により妻氷槽式(半氷槽と全氷槽に分けられる)、天井氷槽式がある。
機械冷凍式
冷凍機を運転して冷却するもの。現代において一般的なものである。
特殊な冷却材を用いるもの
氷の代わりにドライアイス、液体
窒素、液体二酸化炭素、液体アンモニアシリカゲルなどを用いるもの。
断熱構造

側板・妻板・天井・床などの内部に断熱材を挟み車内の温度維持を図っていた。断熱材には様々なものが用いられ、フェルトコルク、アルセルボード[3]グラスウールポリスチレンなどがある。

家畜の毛を圧縮して作ったフェルトは、安価ではあるが欠点があり、3年から4年ほどの使用で腐って、車両の木造部分も腐敗させ、積み荷に腐敗臭を付けてしまう。亜麻の繊維から織った「リノフェルト」やコルクは高価であるためあまり広まらなかった。グラスウールやポリスチレンなどの第二次世界大戦後に導入された合成材料は安価で一般に使用された。
車体構造

に開き戸を用いる車両が多い。これは、通常の有蓋車のように引き戸を使用すると気密構造を作るのが難しく、保冷性に難があるからである。ただし、有蓋車兼用の車両の中には引き戸を採用したものもある。また、より新しい冷蔵車の中には気密構造と取り扱いやすさ、開口部の面積の大きさを両立できる、プラグドアを採用したものがある。車体は、初期には木造が多かったが、多くの貨車と同じように後に鋼製が主流となった。氷槽冷却式では水分を使用すること、場合によっては塩水を使うことから腐食は常に大きな問題であった。このため、後期の冷蔵車には内装をステンレスにしたものがある。また車体そのものをアルミニウムやステンレスで製造した車両も存在したが、コスト面で普及しなかった。

氷槽式の車両では、氷が融けた水を流しだすため車体中央部の床が低くなっており、床下へドレン管が取り付けられていた。このドレン管についても気密構造が考慮されている。車内には積み荷に応じて様々な装備がある。たとえば肉類を輸送する車両では肉を吊るレールやハンガーが天井付近に設置されていたり、箱入りの荷物を床置きする車両では排水と冷気の循環をよくするためにすのこが設置されていたりする。
運用
アメリカにおける氷槽式冷蔵車の運用方法冷蔵車への氷の積載作業


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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