冥王星
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冥王星
134340 Pluto

探査機ニュー・ホライズンズが撮影した実際の色の冥王星(2015年)
分類準惑星
冥王星型天体
軌道の種類エッジワース・
カイパーベルト

冥王星族
海王星横断
発見
発見日1930年2月18日
発見者クライド・トンボー
発見方法写真乾板
軌道要素と性質
元期:2006年9月22日 (JD 2,454,000.5)
軌道長半径 (a)39.44506973 au[1]
近日点距離 (q)29.57399177 au[1]
遠日点距離 (Q)49.31614768 au[1]
離心率 (e)0.250248713[1]
公転周期 (P)247.7406624 [1]
(90487.27693 日[1]
軌道傾斜角 (i)17.08900092 [1]
近日点引数 (ω)112.5971417 度[1]
昇交点黄経 (Ω)110.376958 度[1]
平均近点角 (M)25.24718971 度[1]
前回近日点通過1984年12月頃
次回近日点通過2233年頃
衛星の数5
物理的性質
赤道面での直径2,370 km[2]
表面積1.764 ×107 km2
(地球の0.033倍)
体積7.15 ×109 km3
(地球の0.0066倍)
質量1.3 ×1022 kg[3]
地球との相対質量0.0021
地球との相対半径0.185[2]
平均密度1.852 g/cm3[1]
表面重力0.62 m/s2[4]
(0.059g
脱出速度1.21 km/s[4]
自転周期-6.387230日
6日 9時間 17分 36秒
絶対等級 (H)-0.8[1]
アルベド(反射能)0.56[1]
0.49 - 0.66[5][6]
赤道傾斜角119.59°
(軌道面に対して)/
112.78°
黄道面に対して)
表面温度

最低平均最高
33 K~50 K[4]55 K

色指数 (B-V)0.82(in 1988)
色指数 (U-B)0.34(in 1988)
色指数 (V-I)0.83
大気の性質
大気圧1.0パスカル
(in 2015)
窒素90%
メタン10%
Template (ノート 解説) ■Project

太陽系外縁天体
エッジワース
・カイパー
ベルト

(海王星との
軌道共鳴)(3:4)
冥王星族 (2:3)
(3:5)
キュビワノ族 ( - )
(1:2)
散乱円盤天体
オールトの雲
類似天体ケンタウルス族
海王星トロヤ群
彗星遷移天体
関連項目準惑星冥王星型天体
太陽系小天体
■Portal ■Project ■Template

冥王星(めいおうせい、134340 Pluto)は、太陽系外縁天体内のサブグループ(冥王星型天体)の代表例とされる、準惑星に区分される天体である。1930年クライド・トンボーによって発見され、2006年までは太陽系第9惑星とされていた。しかし他の8惑星と比べて離心率のある軌道黄道面から傾いた軌道傾斜角を持つ。直径は2,370キロメートル[2] であり、地球衛星であるの直径(3,474キロメートル)よりも小さい。冥王星の最大の衛星カロンは直径が冥王星の半分以上あり、それを理由に二重天体とみなされることもある。
歴史
発見トンボーはこのブリンクコンパレータを用いて、撮影した写真を比較した

1930年、天文学者クライド・トンボーローウェル天文台で第9惑星を探すプロジェクトに取り組んでいた。トンボーは、当時最新の技術であった天体写真を用いて、空の同じ区域の写真を数週間の間隔を空けて2枚撮影し、その画像の間で動いている天体を探すという方法で捜索を行った。撮影した膨大な写真を丹念に精査した結果、トンボーは1930年2月18日に、同年1月23日1月29日に撮影された写真乾板の間で動いていると思われる天体を見つけた。それだけでなく、1月20日の写真も質は悪かったが動きを確認するのには役立った。ローウェル天文台はさらに確証的な写真を得るよう努力したあと、発見の報を1930年3月13日ハーバード大学天文台電報で送った。のちに冥王星の写真は1915年3月19日までさかのぼって見つかった。このような経緯から発見日は一般に1930年2月18日とされているが、小惑星センターに登録された一覧上では発見日は同年1月23日とされている[7]
海王星・天王星との関係

冥王星が発見されるまでの歴史は、海王星の発見および天王星の存在と密接に結びついている。1840年代ユルバン・ルヴェリエジョン・クーチ・アダムズニュートン力学を用いて、天王星の軌道における摂動の分析から、当時未発見の惑星だった海王星の位置を正確に予測した。摂動はほかの惑星から重力で引かれることで起こるということが理論化され、ヨハン・ゴットフリート・ガレが海王星を1846年9月23日に発見した。

天文学者たちは19世紀後半の海王星の観測から、天王星の軌道が海王星に乱されていたのと同じように、海王星の軌道もまたほかの未発見の惑星(「惑星X」)によって乱されていると推測し始めた。1909年までに、ウィリアム・ヘンリー・ピッカリングパーシヴァル・ローウェルは、そのような惑星が存在する可能性のある天球座標をいくつか提唱した。1911年5月には、インド人の天文学者ヴェンカテシュ・ケタカルによる、未発見の惑星の位置を予測した計算がフランス天文学協会の会報で公表された。
ローウェルの影響カンザス州で観測を行っていた時のクライド・トンボー

パーシヴァル・ローウェルは冥王星の発見に関して重大な影響があった。1905年ローウェル天文台(ローウェルが1894年に設立した)は、存在するかもしれない第9惑星を捜索する一大プロジェクトを開始した[8]。プロジェクトはローウェルが1916年に死去するまでの11年間続けられた。ローウェルの死後、彼の遺産である天文台をめぐるローウェルの妻との10年にも及ぶ法廷闘争によって、惑星Xの探索は1929年に再開されるまでの間一度も実施されなかった。1929年に当時の天文台長ヴェスト・スライファーがトンボーにこの仕事を預け、1930年の発見に至った。

皮肉にも、捜索のきっかけとなった海王星の軌道の摂動の原因となるには、冥王星はあまりにも小さすぎた。19世紀に天文学者が観測した海王星の軌道の計算との食い違いは、海王星の質量の見積もりが正確でなかったことが原因だった。いったんそれが分かると、冥王星が非常に暗く、望遠鏡で円盤状に見えないことから、冥王星はローウェルの考えた惑星Xであるという考えに疑問の目が向けられた。ローウェルは1915年に惑星Xの位置を予測しており、これは当時の冥王星の実際の位置にかなり近かった。しかし、アーネスト・ウィリアム・ブラウンはほとんど即座にこれは偶然の一致だと結論づけ、この見方は今日でも支持されている[9]。したがって、冥王星がピッカリング・ローウェル・ケタカルの予測した領域の近くにあったことがただの偶然にすぎないことを考慮すると、トンボーが冥王星を発見したことはさらに驚くべきことになる。
命名「ヴァニーシア・バーニー」も参照

発見された新天体を命名する権利は、ローウェル天文台と所長のスライファーにあった。名前の提案は世界中から殺到すると考えられ、トンボーは他の誰かに提案される前に早く新天体の名前を提案するようにスライファーをせきたてた[8]。ローウェルの妻コンスタンスは、「ゼウス (Zeus)」、次いで「パーシヴァル(Percival)」、さらに「コンスタンス(Constance)」を提案したが、どれも支持は得られなかった[10]

プルート(Pluto)」という名前を最初に提案したのは、イングランドオックスフォード出身で当時11歳の少女・ヴァニーシア・バーニーである[11]。天文学と同じぐらいローマ神話ギリシア神話にも興味があった彼女は、オックスフォード大学ボドレアン図書館[12] で以前司書をしていた祖父ファルコナー・マダンとの会話の中で、ギリシア神話のハデスに対応するこの名前「Pluto」を選び、それを提案した。プルート(プルートー)とはローマ神話に登場する冥府の王である。マダンはこの提案をハーバート・ターナー教授に伝え、ターナーはこの提案をさらにアメリカにいた同僚に電報で送った。

1930年3月24日、ローウェル天文台のメンバーにより、ミネルヴァ (Minerva)・クロノス(Cronus)・プルート(Pluto)の3つの候補への投票が行われた。同じ名前の小惑星があることが指摘されるまではミネルヴァが最有力と思われたが[13]、最終的にプルートが満場一致で選ばれ、正式に「Pluto」と命名された[14]。「Pluto」の最初の2文字がパーシヴァル・ローウェル(Percival Lowell)のイニシャルであることもプルートに有利に働いた[15]。この名前は1930年5月1日にローウェル天文台から公表された。
アジア語圏の命名事情

日本語名の「冥王星」は、日本人の野尻抱影がPlutoの訳語として提案した名称である。彼はこの名称を「幽王星」というもうひとつの候補とともに雑誌科学画報の1930年10月号に紹介した。この名称は京都天文台ではすぐに採用されたが、東京天文台(現・国立天文台)では英語のままの「プルートー」が用いられた(当時、東京天文台と京都天文台は異なる用語を用いていることがしばしばあった)。東京天文台が「冥王星」を採用したのは太平洋戦争中に外来語(カタカナ語)を禁止した1943年のことであった。

1933年には中国でも「冥王星」が使われ始め、現在では、中国語では日本語と同じ「冥王星(mingwangx?ng)」が用いられている。

漢字をほぼ廃止した朝鮮語では、漢字で冥王星にあたる「???(myeongwangseong)」を用いている。


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