再販売価格維持
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「再販」はこの項目へ転送されています。その他の語義については「wikt:再販」を、転売をする職業については「バイヤー」をご覧ください。

再販売価格維持(さいはんばいかかくいじ、英語: resale price maintenance、ドイツ語: Bindung der Wiederverkaufspreise)は、生産者・供給者が取引先である事業者に対して転売する価格(再販売価格)を、あらかじめ決定し指示し遵守させることをいう[1]。再販売価格維持行為(再販行為)、再販売価格の拘束ともいう。商品の供給元が小売業者の売価変更を許容せず、定価販売を指示すること。

互いに競争関係にある複数の生産者あるいは販売業者が、利潤の増大・確保のため競争制限を目的として協定を結ぶことを「横の結合」あるいは「水平的結合」「水平的カルテル」と呼ぶが、再販売価格維持は生産者、小売業者の間で「垂直」に行われる「縦の価格拘束」(英:vertical price fixing、独:vertikale Preisbindung)であるために、「縦の結合」「垂直的カルテル」と呼ばれることがある[2]

再販売価格維持は、流通段階の自由で公正な競争を阻害し、需要と供給の原則に基づく正常な価格形成を妨げて消費者利益を損なうため、資本主義経済国家の多くは、独占禁止法で原則禁止している。例外的に一部商品は一定要件で再販行為を容認している場合があり、再販制度と通称する。
効果「価格統制」も参照
社会全体への影響

需要に応ずる価格形成は停滞、販売数量は減少、市場は縮小、顧客は隣接する中古などの市場へ流出し、社会的余剰は減少する。

ブランド内の競争は減少するが、ブランド間の競争は激化し、社会的余剰の減少を確約しない。寡占的市場は企業の協調行動によりブランド間で競われない。

競争が不要であるために非効率的な取引慣行が温存されやすく、流通の合理化は進捗しない。

経済学者のホテリングによれば、製品差別化は行われず、類似性が高い商品が店頭に並ぶ[3]
生産者・小売業者への影響

メーカーは、再販分で超過利潤を得て、小売の価格競争が回避され、卸価格が安定し、利益の変動を抑制する。再販は最低利潤が保証される場合が多く、小規模の小売業者は薄利多売を回避する利点がある。

売価を有効に設定すれば、数量の下落と単価の上昇が均衡して、生産者余剰を増加させる。
消費者への影響

消費者は、安価な購入手段を得られず、定価が限界効用を上回る場合は買い控え、消費者余剰は減少する。
実施主体

売価の設定は顧客の誘引に重要で、有力な小売業者は再販で価格決定権が奪われることを好まず、可能な限り商品を代替して回避を図るため、再販の実施に

商品の差別化に成功

製造が大規模

市場が非競争的、閉鎖的、寡占的

などが要件となる。
類型

本制度は、再販行為を義務付けておらずに任意であり、メーカーや販売業者らが取り決めて運用できる。
時限再販
一定の期間が経過した商品を再販契約の対象から除外する。対義語は「永久再販」。
部分再販
一部の商品を再販契約の対象から除外する。対義語は「包括再販」。
値幅再販
一定の値引き販売を許容する。対義語は「確定再販」。

販売業者がポイントサービスを採用する例があるが、これは値幅再販に近い。
各国の状況

書籍は、OECD加盟国の調査対象26か国のうち18か国が定価 (Fixed Book Price) 制度を採用している[4]。その他、個別の状況を以下に記す。
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この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

日本は、再販行為が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)2条第9項の不公正な取引方法に該当するとして、原則として禁止されている。例外として、著作物(書籍雑誌新聞・音楽ソフト(レコードカセットテープ・音楽用CD)のメディア四品目)および公正取引委員会(公取委)の指定を受けた商品(「指定再販商品」)がある。

再販行為の認定は正当な理由が要件で、再販行為が一般消費者の利益を不当に害する場合、販売業者が生産者の意に反してする場合は認められない。業界団体が会員企業に再販行為を強制、非再販商品の発売を禁止、などは、日本レコード協会の事例から8条に違反とされる。

共済組合生活協同組合は独禁法第23条5項の規定により再販契約を遵守する義務を負わず、大学生協などは再販商品も値引が可能である。

再販行為の実施は、メーカーや販売業者らが再販価格維持契約(再販契約)を締結して公取委へ届出が要件とされ、通常は商品ごとに契約を要する。

実質的にメーカーが販売していると認められる、いわゆる委託取引の場合、一定の要件を満たしていれば再販行為を行っても通常は違法とされない。自らが在庫リスクおよび売れ残りのリスクを負担して取引しており、メーカーが直接消費者に商品を販売していることと同視できることから、契約自由の原則で価格決定の自由を認めても自由競争を減殺する怖れがない。アパレル分野などの高級ブランドは、委託取引方式や直営店を通じた販売方式を採用して、上記以外の商品分野で価格統制している。

なお、たばこたばこ事業法に基づき財務大臣の認可を受けた小売定価以外での販売が禁止されている(第33条から第37条)。
適用商品

独占禁止法で例外的に再販行為が容認されている商品は、「著作物」と公取委の指定を受けた「指定再販商品」の2種類である。著作物の再販を指定再販に対して「法定再販」と称すると、著作物の再販は法で強制されていると誤解され易く、「著作物再販」の表現がより確実である。

再販行為を行ってよい著作物の範囲は独占禁止法の条文上限定はない。一方で、公正取引委員会はその範囲を限定的に解釈しており、平成4年4月15日公表文「レコード盤,音楽用テープ及び音楽用CDの再販適用除外の取扱いに関する公正取引委員会の見解」において、昭和28年の再販制度導入時に定価販売慣行があった書籍、雑誌、新聞及びレコード盤の4品目並びにレコード盤と機能・効用が同一である音楽用テープ及び音楽用CDの2品目の計6品目のみが再販行為可能な著作物であるとしている。この公正取引委員会の解釈に従えば、映像ソフト(ビデオDVDブルーレイディスク)、音楽ソフトでも法令に明示していないパッケージソフト(Super Audio CDDVD-Audioのみで構成される単体ソフト)、コンピュータソフト(「ソフトウェア」と呼ばれるもの)ゲームソフト[注 1]、ならびにインターネットからのダウンロード形式により販売される電子データ電子書籍といったものは再販行為を行ってはならないということになる。

指定再販商品は、2005年現在で指定されていない。かつては1953年から1959年にかけて、おとり廉売からブランドを守る目的で、化粧品、毛染め、歯磨き、家庭用石けん合成洗剤、雑酒、キャラメル医薬品写真機ワイシャツの9商品が指定され、「品質が一様であることを容易に識別することができるもの」「一般消費者により日常使用されるもの」「自由な競争が行われているもの」の条件に該当すれば、公正取引委員会に契約内容を届け出れば再販売価格維持ができた。当時、物価高騰の原因に再販制度の弊害が指摘されて消費者の批判が増加し、1966年以降徐々に指定が取り消され、1997年3月31日に化粧品と医薬品が最後に指定を廃止された。
再販制度の主旨


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