内閣総辞職
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内閣総辞職(ないかくそうじしょく)とは、内閣を構成する内閣総理大臣及び国務大臣の全員が辞職することをいう。
日本国憲法下の内閣総辞職
法制度
憲法に明文化されている総辞職

日本国憲法において、内閣総辞職は憲法上の制度として定められており、内閣が総辞職すべき場合につき以下のように定められている。
衆議院内閣不信任決議案が可決され、又は内閣信任決議案が否決されて、10日以内に衆議院解散されないとき(日本国憲法第69条)。内閣は議会の信任を要するとするもので議院内閣制の核心的原則である[1]。ただ、議会が不信任決議を行った場合には当然に内閣は総辞職すべきとする法制と内閣総辞職か議会の解散かの二者択一とする法制がある[2]。日本国憲法は後者を採用し、衆議院で内閣不信任決議が可決又は内閣信任決議が否決された場合にも、無条件に総辞職とするのではなく10日以内に衆議院を解散すれば一定期間内閣は存在することとしている[1]。そして、衆議院の解散を選択する場合にも衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があった時には内閣は総辞職することになるが(日本国憲法第70条)、総選挙の結果、首相支持勢力が衆議院で過半数以上となっていれば内閣総理大臣指名選挙で再任される形で内閣総理大臣を続けることが可能であり、反対に首相支持勢力が衆議院で過半数を割り込んでいれば内閣総理大臣指名選挙で再任されることができず内閣総理大臣を続けることができないことになる。なお、内閣信任決議が内閣によって上程された例は2001年までの時点で存在しない[3]

内閣総理大臣が欠けたとき[注 1]日本国憲法第70条)内閣総理大臣を中心とする内閣の一体性を保障するもので[1]、内閣総理大臣は国会で指名され他の国務大臣を任免する地位にあり、内閣総理大臣が欠ける場合には内閣は中核的存在を欠くことになるため総辞職しなければならないとする趣旨である[4]。「欠けたとき」の定義としては、死去昏睡状態[注 2]失踪、国外への亡命[5]文民たる資格を喪失する場合又は除名・資格争訟・選挙争訟・当選訴訟等によって国会議員たる資格を喪失する場合[1][6][7][5][注 3]がこれにあたり、これらの事由が発生した場合には法的には当然に内閣は総辞職することになる[8]。ただし、衆議院議員たる内閣総理大臣が衆議院解散や任期満了により国会議員の資格を失ったとき(解散や任期満了という一般的理由によって衆議院議員の全てが職を失う場合)はこれに含まれず[1][9]、この場合には衆議院議員総選挙ののち国会が召集されることから、日本国憲法第70条の規定に従って「衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があった時」に総辞職することになる[10](詳細は下記3を参照)。内閣総理大臣の自発的な辞職つまり総理大臣が内閣を残して単独で辞任出来るか否かについては、日本国憲法第70条の「内閣総理大臣が欠けたとき」に含まないとすると日本国憲法第71条の「前二条」の場合に含まれないことになり職務執行内閣が成立する根拠が失われる。このようなことから通説では日本国憲法第70条の「内閣総理大臣が欠けたとき」には内閣総理大臣の辞職を含むとする[5]。これに対して内閣総理大臣が辞職する場合に内閣が総辞職することは特に規定を要しなくとも自明であるとみる学説もあり[6](国会法第64条も内閣総理大臣が「欠けたとき」と「辞表を提出したとき」とを分けている)、この説においても内閣総理大臣の辞職によって内閣総辞職となる場合には条理上同様の措置をとるべき(職務執行内閣が成立する)とされている[6]。いずれにしても内閣総理大臣が辞職したときは必然的に内閣総辞職を伴うことになる[11]。他方、病気による入院等は内閣法第9条の「内閣総理大臣に事故のあるとき」にすぎず[12]、内閣は総辞職する必要はなく内閣総理大臣臨時代理が置かれるにすぎない。なお、首相が留任したまま国務大臣各員の入れ替えが行われるのは、それが総替えであっても飽くまで内閣改造で、総辞職ではない。

衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があった時(日本国憲法第70条)。それまでの内閣総理大臣を指名した衆議院が存在しなくなり、衆議院議員総選挙によって新たに衆議院が構成されることになった以上、たとえ同一の者が内閣総理大臣に指名されるとしても内閣は新たにその信任の基礎を得るべきであるとの趣旨である[10]。総選挙後に初めて国会が召集された場合、法的には当然に内閣は総辞職することになる[8]。既述されているように憲法70条の「内閣総理大臣が欠けたとき」には国会議員の資格を失った場合も含まれ、内閣総理大臣が衆議院議員である場合には衆議院解散や任期満了により国会議員の資格を失えば直ちに総辞職することになりそうであるが、衆議院議員総選挙後には新たに国会が召集されることが予定されていることから、任期満了や衆議院の解散によって衆議院議員総選挙が行われる場合について日本国憲法第70条は「衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があった時」に内閣は総辞職すべきとしてその時期を新国会の召集時にまで延ばしている[10][13]。したがって、内閣は衆議院解散や任期満了時に一旦総辞職し更に総選挙後の初めての国会にも重ねて総辞職するということになるわけではない。内閣総理大臣が衆議院議員総選挙で落選した場合にも直ちにその地位を去るのではなく、衆議院議員総選挙後の初めての国会の召集時に総辞職することになると解されている[13]。このように憲法では衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があった時は内閣は総辞職しなければならないと定めるが、衆議院解散から国会の召集の時までに死亡などの理由で「内閣総理大臣が欠けたとき」となった場合(上の2と3の事由が重なる場合)については、このような場合には内閣総理大臣が欠けたときではあるが国会召集時までは総辞職すべきでないと解する学説と直ちに総辞職すべきで国会召集時に重ねて総辞職する必要はないと解する学説が対立している(日本国憲法第70条参照)[14]。先例では1980年(昭和55年)5月19日に衆議院が解散された際(ハプニング解散)、同年6月22日の総選挙を前にした同年6月12日に大平正芳総理が急逝したため、同日第2次大平内閣は総辞職し、国会召集時には総辞職を行わなかった[15]。これは衆議院解散後から総選挙後初めての国会の召集時までに死亡等により内閣総理大臣が欠けることとなった場合には直ちに総辞職すべきとの見解に立つものであるが、国会召集時に重ねて総辞職する必要がないとされるのは、内閣は内閣総理大臣が欠けたときに既に総辞職しており国会召集時に総辞職することは不可能と解されるためである[16]

自発的な総辞職

内閣の自発的な総辞職あるいは内閣総理大臣の辞職も当然に認められていると解されている[17]。内閣総理大臣の辞職については、前述のように日本国憲法第70条の「内閣総理大臣が欠けたとき」に含まないとすると日本国憲法第71条の「前二条」の場合に含まれないことになってしまい職務執行内閣が成立する根拠が失われるといった問題を生じるため、通説では日本国憲法第70条の「内閣総理大臣が欠けたとき」には内閣総理大臣の辞職を含むとみている[5]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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