内閣不信任決議
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この項目では、日本の内閣不信任の決議について説明しています。各国における行政府に対する不信任議決権については「不信任議決権」をご覧ください。
2012年9月、野田内閣不信任決議案の投票をする内閣総理大臣野田佳彦

内閣不信任決議(ないかくふしんにんのけつぎ)は、議会内閣に対して信任しないことを内容として行う決議で、現に行政を担っている特定の内閣を信任せず退陣を求めることを内容とする決議[1]
概要

内閣は議会の信任を要することは議院内閣制の核心的原則である[2]

したがって、内閣制度を採用する国のうちでも議院内閣制をとる国においては特に重要な意味を持ち、政治制度としては、議会が不信任決議を行った場合には内閣は当然に総辞職する制度をとるか、もしくは内閣は総辞職か議会の解散かの二者択一とする制度のいずれかがとられる[3]両院制を採る国においては内閣は特に下院の信任を要するものとされ、内閣不信任決議も下院のみに与えられる権限であることが多い。

内閣不信任決議が特定の内閣を信任せず退陣を求めることを内容とする決議であるのに対して[1]、特定の内閣に対しその職において行政権を行使することを委任することを内容とする決議として内閣信任決議がある[1]。内閣信任決議も現在の内閣を信任すべきか否かを問題とする点で内閣不信任決議と共通し、内閣不信任決議案が可決された場合と内閣信任決議案が否決された場合は、いずれも現在の内閣が議会からの信任を得ていないという点で共通する。このようなことから便宜上、内閣信任決議についてもこの項目で扱う。
日本国憲法下

日本国憲法第69条は「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、内閣は総辞職をしなければならない」とし、衆議院の内閣不信任決議と内閣信任決議について定めている。日本国憲法下においては内閣は第一次院たる衆議院における指導的勢力を基礎として存立する[4]

したがって、内閣が衆議院において議員の過半数からの信任を失っている場合にはその存立を維持することができないこととなり、日本国憲法第56条第2項の規定により衆議院で出席議員の過半数で内閣不信任決議案が可決または内閣信任決議案が否決されたときは、10日以内に衆議院が解散されない限り内閣は総辞職をしなければならないことになる[5](日本国憲法第69条)。

なお、憲法第69条は「衆議院で」と規定している通り、内閣不信任決議及び内閣信任決議は衆議院のみに認められる権能とされており、仮に参議院で「不信任」の名の下に内閣の問責を決議しても憲法69条のような法的効果を生ずることはなく政治的な効果を生じるにとどまると解されている[6][7]

内閣不信任決議案あるいは内閣信任決議案が衆議院に提出された場合、衆参両院の本会議・委員会における内閣提出による全ての議案の審議・審査・政府質疑が停止されることになる[8]
決議の内容
内閣不信任決議2012年9月、野田内閣不信任決議案が否決され一礼する野田内閣の閣僚

憲法第69条の「不信任」とは、現に行政を担っている特定の内閣を信任せず退陣を求める意思をいう[1]

先述の通り、内閣は内閣不信任決議が衆議院において可決された場合、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならないが(日本国憲法第69条)、実際は可決されたら即、衆議院解散かつ総選挙を選択する事が多い。

この憲法69条の効果を生じさせるための「不信任」については、決議の文章のうちに明文をもって示すまでの必要はないとされるが[9]、少なくとも不信任の意思を明確にするものである必要があるとされる[9][10]

議員が内閣の不信任に関する動議もしくは決議案を発議するときは、理由を附し、50人以上の賛成者と連署して、これを議長に提出しなければならない(衆議院規則第28条の3)。したがって、内閣不信任決議案の提出には少なくとも発議者1人と賛成者50人の計51人が必要となる。

内閣不信任決議案は他議案同様に、議長の諮問を受けて議院運営委員会が議事日程を作成する。ただし内閣不信任決議案は先決問題であり他の一般の議事に優先するので、議院構成の案件があったり、一事不再議(同一会期中に一度のみ)に抵触するといった理由がなければ議運は速やかな上程を答申する[11](内閣不信任決議案が内閣信任決議案と競合する場合については次節を参照)。もっとも、衆議院の解散は一切の議事・動議に優先して扱われるため、解散詔書が発せられたときは、議長は議事を直ちに中止して詔書の朗読を行うことになる[12][13][14](衆議院解散とともに本案は廃案となる)。提出者は委員会審査を省略して本会議に付することを求め、本会議はこれを認めるのが慣例である[11]

内閣不信任決議案についての議事手続としては、
趣旨弁明

本案についての反対討論

本案についての賛成討論

採決

票数並びに可否についての発表

の順で行われる。議員が表決に加わるためには議場にいなければならない[15][16](衆議院規則第148条参照)。

採決方法は本会議前の議院運営委員会において決せられる。一般的に採決方法は記名投票(本会議場の各議席に備え付けられた議員の氏名が予め記載されている白色と青色の二色の木札、通称“名刺”を用いるもの[15][17])であり、内閣不信任決議案に可とする議員は白色の木札(白票=賛成票)を、否とする議員は青色の木札(青票=反対票)を投票する(衆議院規則第153条参照)。記名投票は各議員が持参した白票又は青票を参事に手交する方法がとられている[17]。記名投票を行う際には予め議場を閉鎖することになっている[15](議場閉鎖)。これは投票には一定時間がかかるが、議場への出入りを禁じなければ過半数の算定の基礎となる出席議員数を固定できなくなることから議場を閉鎖する必要があるためである[18](この点は過半数算定の基礎が出席議員数ではなく投票総数で議場閉鎖の必要のない内閣総理大臣指名選挙とは異なる)。記名投票では白色と青色の二色の票を用いるため無効票を生じる余地はない[19](この点も投票用紙に被選人の氏名を記載することを要し無効票を生じうる内閣総理大臣指名選挙とは異なる)。記名投票の場合には「内閣不信任決議案を可とする議員の氏名」と「否とする議員の氏名」がそれぞれ会議録に掲載される(衆議院規則第200条第16号参照)。

本会議前の議院運営委員会では各会派の賛成・反対・棄権の立場が明らかにされるが、野党第一党が決議案に対して同調せず棄権を表明している場合など、あまりにも大差であることが判明している場合は起立採決となることもある。また、記名投票は出席議員の1/5以上の要求が必要になるため、賛成者が1/5を切っている状況で提出しても、起立採決になることがある。過去に起立採決で行われた事例では1975年7月3日三木内閣不信任決議案、1982年8月18日鈴木善幸内閣不信任決議案及び2013年12月6日第2次安倍内閣不信任決議案の3例(いずれも起立少数で否決)がある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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