共謀罪
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共謀罪(きょうぼうざい)
何かしらの
犯罪の共謀それ自体を構成要件(ある行為を犯罪と評価するための条件)とする犯罪の総称。米法のコンスピラシー (Conspiracy) がその例である。

日本の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(通称:組織犯罪処罰法、組織的犯罪処罰法)の「第二章 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の没収等」に新設することが検討されていた「組織的な犯罪の共謀」の罪の略称。これを新設する法案は、一度2005年8月の衆議院解散により廃案。同年の特別国会に再提出され、審議入りしたが、2009年7月21日衆院解散によりふたたび廃案となった。2017年第193回国会では、「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する[1]組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」が内閣より提出され成立・施行されている[2][3](経緯の詳細は#審議の経過を参照)。

本稿では、総論として諸国の共謀罪に関する議論を紹介し、次に日本の組織的な犯罪の共謀罪について説明する。
総論
コンスピラシー

コンスピラシー(Conspiracy陰謀)とは、何らかの目的(反社会的なものという含意を伴うというのが通常の見解である。)を達成するために秘密裏に行動することを決意することをいう。アメリカ合衆国対シャバニ事件(1994年)において、アメリカ合衆国最高裁判所は、「議会はコモン・ローのコンスピラシーの定義を採用することを意図した。すなわち、共謀により刑事責任を負うべき状況を作出することであり、それ以外の決意をすることを犯罪としたものではない…。」と判示している。

この判示は、陰謀が、それが実行に移されるのを待つまでもなく、犯罪となり得ることを示唆している。アメリカ合衆国では、法律用語としてのコンスピラシーは、日本語の「共」にあたる複数の人間が関与することを必ずしも要求しない。

カリフォルニア州では、処罰可能なコンスピラシーとは、最低2人の人間の間で犯罪の実行を合意することであり、加えて、その内最低1人がその犯罪を実行するために何らかの行為をすることである。この行為は徴表的行為(overt act)と呼ばれ、日本の共謀共同正犯とは異なり、実行の着手は要件とされず、予備行為や、さらにその前段階の金品の授受、電話をかけるなどの行為も含まれる。犯人全員に、同一の刑罰を、合意した犯罪を自ら実行したときと同程度の重さで科して処罰することができる[4]。このことの例として、双子の姉が妹を殺害させようとして2人の若者を雇った事案であるハン姉妹殺人謀議事件(英語版)(Han Twins Murder Conspiracy case)がある。

共同謀議とも[5]
日本の事例.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

意義

組織的な犯罪の共謀罪(そしきてきなはんざいのきょうぼうざい)は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法、以下「本法」)案6条の2所定の、一定の重大な犯罪の共謀を構成要件とする犯罪をいう。

日本の刑法は、未遂罪は「犯罪の実行に着手」することを構成要件としており(同法43条本文)、共同正犯共謀共同正犯)も「犯罪を実行」することを構成要件としているために、組織的かつ重大な犯罪が計画段階で発覚しても、内乱陰謀(同法78条)などの個別の構成要件に該当しない限り処罰することができず、したがって強制捜査をすることはできない[6]

日本国政府小泉政権当時、同罪導入のための法案を国会に3度提出したが[注釈 1]、いずれも廃案となった。

2007年2月、安倍晋三総理の指示により、自由民主党法務部会の「条約刑法検討に関する小委員会」(笹川尭委員長)は、共謀罪を「テロ等謀議罪(てろとうぼうぎざい)」に名称を改め、対象犯罪を600以上から128?162(テロ犯罪が72、薬物犯罪が23、銃器等犯罪が10、密入国・人身取引等犯罪が8、その他、資金源犯罪など、暴力団等の犯罪組織によって職業的または反復的に実行されるおそれの高い犯罪が14?48)まで減らす「修正案要綱骨子」を決定したが、同年7月の参議院選挙で自民党が大敗し、自公連立政権参議院議席が過半数を割り、ねじれ国会になったため、国会に提出されなかった[8][9][10]

平成29年の第193回国会(2017年)へのテロ等準備罪(てろとうじゅんびざい)法案提出に際し日本国政府は、テロリズムを含む組織犯罪を未然に防止する国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国際組織犯罪防止条約、パレルモ条約、TOC条約)の締結のために必要であると主張し、犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定し、計画行為に加えて実行準備行為が行われたときに初めて処罰される等の点が、かつての「組織的な犯罪の共謀罪」との違いであると主張している[11]

2017年8月28日にシーシェパードは、団体の活動資金が限られていることと、日本でテロ等準備罪が施行されたことにより、活動の継続が難しくなったとして、南極海での日本の調査捕鯨に対する妨害活動を中止することを発表した[12]

立憲民主党逢坂誠二により、「構成要件が厳しく、実務面で意味がないのではないか」との質問が政府に対してなされたが、政府は「テロ等準備罪」の新設を柱とする改正組織犯罪処罰法施行を受け日本が締結した国際組織犯罪防止条約を踏まえ、「国際社会と協調してテロを防止する上で大きな意義がある」と反論している[13]
関連条文及び法案

関連する条文及び法案は以下の通り。
条文
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号)(定義)第二条 この法律において「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう。
国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約
第二条 用語この条約の適用上、(a)「組織的な犯罪集団」とは、三人以上の者から成る組織された集団であって、一定の期間存在し、かつ、金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するものをいう。(b)「重大な犯罪」とは、長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪を構成する行為をいう。(c)「組織された集団」とは、犯罪の即時の実行のために偶然に形成されたものではない集団をいい、その構成員について正式に定められた役割、その構成員の継続性又は発達した構造を有しなくてもよい。第三条 適用範囲1 この条約は、別段の定めがある場合を除くほか、次の犯罪であって、性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものの防止、捜査及び訴追について適用する。(a) 第五条、第六条、第八条及び第二十三条の規定に従って定められる犯罪(b) 前条に定義する重大な犯罪2 1の規定の適用上、次の場合には、犯罪は、性質上国際的である。(a) 二以上の国において行われる場合(b) 一の国において行われるものであるが、その準備、計画、指示又は統制の実質的な部分が他の国において行われる場合(c) 一の国において行われるものであるが、二以上の国において犯罪活動を行う組織的な犯罪集団が関与する場合(d) 一の国において行われるものであるが、他の国に実質的な影響を及ぼす場合第五条 組織的な犯罪集団への参加の犯罪化1 締約国は、故意に行われた次の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。(a) 次の一方又は双方の行為(犯罪行為の未遂又は既遂に係る犯罪とは別個の犯罪とする。)(i) 金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの(ii) 組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為a 組織的な犯罪集団の犯罪活動b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。


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