公衆便所
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女性に対する侮蔑語の「公衆便所」については「公衆便所 (隠語)」をご覧ください。

公衆便所(こうしゅうべんじょ)または公衆トイレとは、私設以外の便所(トイレ)である。公園などの公共施設や駅前等に男女別で設置されているのが一般的だが、 オールジェンダートイレが設置されていることもある[1]アメリカニューヨーク市では、公共の個室トイレをオールジェンダートイレにすることが2020年に義務化された[2]。欧州では有料化がなされている[3][4]
歴史

公衆トイレの起源はローマ帝国とされており、紀元前315年には144か所に無料の公衆トイレが設置されていたとする資料もある[5]。古代ローマでは下水道も整備されていたため、市街中心部では水洗式の公衆トイレが整備されていたが、郊外の公衆トイレは未整備なままであった[5]。古代ローマの公衆トイレは当初無料であったが、財政立て直しのためにウェスパシアヌスの時代に有料化された(世界初の公衆トイレへの課税とされている)[5][6]。ウェスパシアヌスの設置した公衆便所は用を足す利用者から料金を徴収するものではなく、当時は羊毛の油分を洗い流す目的で人間の尿が使われていたため、公衆便所で集めた尿を羊毛加工業者に対して有料販売することで課税した[5]。ウェスパシアヌスは敵対者の嘲笑を買ったが、それに対する反論、Pecunia non olet(「金は臭わない」)は有名な文句である。イタリアでは公衆便所のことを「ウェスパシアーノ」と呼ぶのも、この故事に由来する[5]
欧米の公衆トイレ「オールジェンダートイレ」も参照「en:Sex segregation」も参照

欧米の公衆トイレは基本的に有料制であり、入り口に設置された受皿、トイレ番、ドアのコイン投入口などでチップを支払う必要がある[7]
アメリカ
大学キャンパス

2014年の時点で、アメリカの150以上の大学キャンパスでユニセックストイレが導入されている[8]
ホワイトハウス

2015年、ホワイトハウスに隣接するアイゼンハワー行政府ビルに男女別トイレと共に「ジェンダーニュートラルバスルーム(トイレ)」が設置された[9]
ニューヨーク市

2016年にはニューヨーク市で「公共の個室トイレを(全て)オールジェンダートイレにする法案」に当時のビル・デブラシオ市長が署名し、2020年にはアンドリュー・クオモ知事が署名したことで、ニューヨーク州全体で法案が可決され、施行されている[9]
イギリス

ロンドンには鉄道駅や公園などには基本的に無料の公衆トイレがあるほか、管理された有料の公衆トイレもある[10]。主要地下鉄駅や鉄道ターミナル駅にある有料トイレには、コイン投入口により回転式のバーが開閉する入口ゲートが設けられている[11]。駅にある有料トイレの利用料は20?50ペンスである[11]

地方自治体が管理する公衆トイレは、パブリック・トイレット(Public Toilet)またはパブリック・コンヴィニエンス(Public Convenience)と呼ばれている[11]

ロンドンにある地下公衆トイレは19世紀のヴィクトリア時代からのもので、設備は近代化されているが、地上部分の柵などは当時から残されている場所もある[11]。地下公衆トイレの多くは有料である[11]

2000年頃から使用後に個室内を丸ごと自動洗浄するオートルー(autoloo)と呼ばれる全自動タイプの公衆トイレ(有料)が普及している[11]。また、夜間に公道で用を足してしまう酔っ払い対策として導入されている男性専用公衆トイレ(無料)も設置されている[11]
ドイツ

ドイツの公衆トイレは有料トイレが多く、有料トイレには駅や高速道路の休憩所に多い機械化された無人タイプと、デパートやレストランに多い係員のいる有人タイプがある[12]

レストランやカフェなどのトイレは無料だが、ファストフード店などの一部は暗証番号や鍵によって利用者以外が使用できないようにしている場合もある[12]

なお、公衆トイレは「Toilette (トアレッテ)」または「WC (ヴェーツェー)」と表示されており、女性用の場合は「Damen(ダーメン)」、男性用の場合は「Herren (ヘーレン)」と表示されていることもある[12]
フランス

鉄道駅等のトイレは基本的に無料であるが、硬貨を投入するとドアが開く有料トイレや入口にチップの受皿が設置されている有料トイレもある[13]。また、パリにはユニット式の無料トイレが各所に設置されている[13]
日本の公衆トイレ札幌市の公衆トイレ朝来市役所前のレンガ造風の公衆トイレ
設備

多くの公衆便所に備わっているのは便器を備えた個室、手洗い・化粧直しのための洗面台で、男子トイレの場合は、これに加え、利用効率向上のために並列された小便器が設置してあることが多い。

個室に備えられた便器は、洋式・和式の両方があり得る。かつては和式のみを備えた便所が一般的であったものの、一般家庭での洋式の普及により、近年では洋式便所が増えているが、和式が残っていたり、中心となっている所もある。(ただし、身体障害者や高齢者の来訪が想定される病院役所などの公共施設では洋式のみか洋式中心となっている所が多い)。

かつては非水洗が主流であったものの、現在は多くが水洗式である。しかし、山地・海岸などでは、今でも汲み取り式便所が用いられている。水洗においても簡易水洗などがあり、山や観光地などにおいて排水を直接処理することが困難な地域でよく用いられている。

また、駅や観光地では、個室内に幼児を座らせておく椅子や、ベッドを備え付けたりおむつを替えるためのベビースペースを設けている所も多い。

手洗いの水の出しっぱなしを防ぐため、自動水栓を備えることも増えてきている。

一部施設では、公衆便所の利用は無料なものの、個室トイレにトイレットペーパーが設置されておらず、入口で有料販売を行っているケースもある。
構造

公衆便所は、多くの場合、男女の別のために二つで区切られているか、車椅子での利用を含めて三つに区切られている。それぞれの区画は、個室や、男子用小便器が備えられている。流しについては、それぞれの区画にある場合と、共用スペースにある場合とがある。また、清掃を迅速に行うため、特定の時間になると床一面に自動的に水が流れる仕組みのものも登場している。
安全

現代では公衆トイレが整備され商業施設、駅、サービスエリアなど、町中の様々なところにあり誰でも使える。しかし依然として、公衆トイレは犯罪リスクの高い場所であり、防犯の観点からも注意が必要である[14]
外観

観光地では、観光物にちなんだトイレが設置されていることがある。

紫雲出山スカイライン麓に設置された公衆トイレ

横浜中華街に設置された公衆トイレ

有料公衆便所有料トイレ(JR新宿駅東口)

基本的に公衆の利益のために無料で開放されているのが公衆便所ではあるが、衛生面を考えると十全な管理が必要であり、そのためには経費がかかる。税金だけで管理することが困難であるため、有料化が試行されるようになった。主にチップトイレと言われるもので、使用者が一定額の料金を支払う(またはトイレットペーパーが別売)というシステムになっている。

採算が合うためには、多くの使用者が見込まれる場所であることが望ましく、従って、JR新橋駅秋葉原駅前など、比較的大型のに設置されていることが多い。
日本における歴史江戸後期の長家の共同便所(深川江戸資料館)オープンスタイル(岡山)
江戸時代


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