公務員試験
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公務員試験(こうむいんしけん)は、公務員としての任用に適格と認められる候補者を選抜する目的で地方公共団体が実施する試験である。国家機関職員である国家公務員を採用する国家公務員試験と、各地方公共団体職員である地方公務員を採用する地方公務員試験に大別される。手法は職種別に様々だが一般に筆記試験と面接などの人物試験が採られている。

行政執行法人以外の独立行政法人国立大学法人外郭団体などの職員採用試験は、公務員でないため公務員試験に含まれない。代わりに「準公務員試験」とも称されるが、本項では扱わないこととする。
試験制度の仕組み

現在の日本の公務員制度は官職法令例規に基づいて設置され、公平な基準により適格と認定された者が職に充当されることを原則とする。退職などで欠員発生時は転任や昇任など人事異動を行い、最終的に欠員する職に補充すべき人材を公務員以外の者から新たに採用する。資格任用制の項も参照。新規採用時は、適格な能力を有する者を選抜して合格者を一定期間「採用候補者名簿」に採録し、法令条例で定めた職員定数に欠員する人数を採用するため、試験合格者数と採用者数は等しくない。個別に試験を実施する国の機関や地方公共団体は、定数に欠員する人数を見込んで合格者を選抜しており、大半の合格者は採用に至る。国の機関は人事院が一括に採用試験を実施して各機関ごとに採用するため、合格者は官庁訪問などにより内定を得る。非常勤職員嘱託職員は試験以外で採用を判断する事例が多くみられる。
試験の特徴

公務員の任用は「国家公務員法および地方公務員法に基づいて、公平な基準により能力を試験し、適任と認められたものを選抜すること」とされている。世襲縁故採用などを排除するため、成績と能力主義を原則に学力試験、作文、面接などで選抜しているが、操縦士航空管制官の採用では本人の身体・心理適性も評価対象となる。地方公務員では筆記より人物評価を重点する傾向もみられる。

学力試験は教養試験と専門試験で、専門的に深化した問いはみられないが専門試験への傾斜配点が多くみられ、科目が広範囲で低くない競争倍率から難関な事例が多い。国家公務員は複数併願者が多数で、受験者数確保のために機関ごとに試験日時の重複を回避している場合が多い。地方公共団体は、試験問題を共通化して同日に共通試験を実施して併願者数を抑制するなど、経費削減する事例がみられる。大卒程度は例年、東京都東京特別区が独自日程で同日、大阪府の警察事務職以外と大阪市が独自日程で同日、北海道の警察事務以外の事務職が独自日程、大阪府の警察事務と北海道の警察事務及び技術系と府県と大阪市を除く政令市が同日に試験が実施される。最終合格者の辞退が多く、10月以降に独自日程で2次募集を行う地方公共団体もある。後述の地方公務員試験の節も参照。

人員の採用試験であるため受験料は原則無料だが、一部の地方公共団体や公立大学法人は有料としているところもある[注 1]。総務省は「自治体が自治体職員採用試験に際して受験者から受験料を徴収することは、地方自治法の規定に違反する。」との見解を示している。地方自治法第二百二十七条は「住民票交付など住民に利益を与える事務では、手数料を徴収できる」と規定しているが、総務省は「自治体職員の採用試験は、自治体のための事務であり徴収はできない。」としている。
国家公務員試験
国家公務員試験の種類

人事院が実施する
一般職国家公務員の採用試験の一覧[1]
種類高卒程度大卒程度院卒程度社会人
総合職試験●●
一般職試験●●●
専門職試験皇宮護衛官●●
法務省専門職員(人間科学)●
財務専門官
国税専門官
食品衛生監視員
労働基準監督官
航空管制官
刑務官
入国警備官
税務職員
航空保安大学校学生●
気象大学校学生●
海上保安官
海上保安大学校学生●
海上保安学校学生●
海上保安学校学生(特別)●
経験者採用試験経験者(係長級(事務))●
外務省(書記官級)●
国税庁(国税調査官級)●
農林水産省(係長級(技術))●
国土交通省(係長級(技術))●
観光庁(係長級(事務))●
気象庁(係長級(技術))●

国家公務員の採用試験は、一般職国家公務員を採用する試験と、防衛省職員自衛官を含む)、国会職員裁判所職員などの特別職国家公務員を採用する試験があり、前者は国家公務員法第48条及び人事院規則8-18第9条により人事院が試験機関である。外務省専門職員採用試験は外務省が試験機関である。

人事院が行う試験は国家公務員採用試験と呼称され、一般的な事務や技術的業務に従事する職員を採用する国家公務員採用総合職試験(院卒者試験)・総合職試験(大卒程度試験)、一般職試験(大卒程度)、一般職試験(高卒者)、専門職試験及び経験者採用試験、など@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}14種類で毎年15回実施されている[要出典]。

専門職試験は、大学卒業程度の国税専門官試験・労働基準監督官試験・財務専門官試験、航空管制官採用試験などが含まれ、高校卒業程度は刑務官試験、省庁大学校海上保安学校の採用試験が実施されている。

I種・II種・III種は1984年度まで上級甲・上級乙・中級・初級で実施されており、上級・中級・初級、I種・II種・III種のいずれも学歴制限が無いことから、本来高校卒業程度である初級・III種は高校3年生や高校卒業者の合格者が少なく、「失われた20年」の1990年度以降は大学4年生や大学卒業者が多数合格して1995年度に半数を超えた。1997年度までに郵政内務職以外は大学4年生や大学卒業者の受験を年齢で制限し[注 2]、2012年度から院卒者、大学卒業程度の総合職試験、大学卒業程度、高校卒業者対象の一般職試験などに再編された。
沿革

戦前の国家公務員は高等文官試験などを経て登用された。

以下、戦後の採用試験の変遷である。

旧I種旧II種旧III種
6級職5級職4級職
上級採用中級試験初級
上級甲種上級乙種
I種II種(本省採用等)II種III種
総合職(院卒)総合職(大卒程度)一般職(大卒程度)(本省採用等)一般職(大卒程度)一般職(高卒者)

2008年に成立した国家公務員制度改革基本法に基づき、国家I種・II種・III種試験は2011年度を最後に廃止された。

I種とII種の違いを羅列する。

I種は「大学卒業段階の知識・技術及びその応用能力を必要とする程度」で大学院程度も出題され、受験年齢は受験時に22歳から29歳まで、受験時21歳の大学生は卒業見込者に限り受験可能である。II種試験は卒業見込者に限り短期大学高等専門学校専修学校専門課程の学生で20歳以上の学生も受験可能である。採用候補者名簿収載期間は、I種が3年、II種は1年である。

院卒者、大学卒業程度の総合職試験は「主として政策の企画立案等の高度の知識、技術又は経験を必要とする業務に従事する係員の採用試験」、大学卒業程度の一般職試験は「主として事務処理等の定型的な業務に従事する係員の採用試験」である。

I種は採用時に主任級に就いて規定上の最短期間で昇進し、II種は本省の課長クラスへ昇進する者は少数である。勤務地は、II種は採用された地方支分部局のブロック内と本省のみの場合が多く、I種は国内と海外を問わず多くの経験が優先される。「II種・III種等採用職員の幹部職員への登用の推進に関する指針」が平成11年に人事院事務総長発として通知されるなど、人材登用も推進されている。

防衛省の防衛省専門職員び自衛官、国会の衆議院事務局衆議院法制局参議院事務局参議院法制局国立国会図書館、裁判所の最高裁判所、など特別職国家公務員は、人事院と別に採用試験を実施するがI、II、III種に準じた種別試験が多い。

航空保安大学校海上保安大学校気象大学校防衛大学校防衛医科大学校、など省庁大学校で学業に専念する職員は学生と呼ばれるが、身分は正式な国家公務員のため採用試験であるが、便宜上「入試」と表記していることもある[2]


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