全身性エリテマトーデス
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全身性エリテマトーデス

狼瘡における両側頬部にわたる蝶形紅斑
概要
診療科免疫学, リウマチ学, 皮膚科学
分類および外部参照情報
ICD-10L93, M32
ICD-9-CM710.0
OMIM152700
DiseasesDB12782
MedlinePlus000435
eMedicinemed/2228 emerg/564
Patient UK全身性エリテマトーデス
MeSHD008180
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全身性エリテマトーデス(ぜんしんせいエリテマトーデス、英語: systemic lupus erythematosus; SLE, ドイツ語: lupus erythematodes)とは、なんらかの原因によって種々の自己抗体を産生し、それによる全身性の炎症性臓器障害を起こす自己免疫疾患[1]膠原病の一つ。全身性紅斑性狼瘡(ぜんしんせいこうはんせいろうそう)、単に狼瘡(ろうそう)とも呼ばれる。産生される自己抗体の中でも、抗DNA抗体は特異的とされる[1]特定疾患難病)に指定されている。動脈硬化性心血管病による死亡率および罹病率も高い[2]
語源

全身性は文字通り体中どこにでも症状が起こること、エリテマトーデスは紅斑(エリテマ)症をそれぞれ意味し、本疾患に特徴的に生じる皮疹に由来する。英語の病名中にある lupus はラテン語で狼の意であり、「狼に噛まれたような」と称されるSLEの皮膚症状より名づけられたものであるが、日本語と中国語で狼瘡と呼ばれる事がある。lupus の語は「CNSループス」「ループス腎炎」などで見られる。
疫学

男女比は女性9に対して男性が1である[3]。また発症年齢は出産適齢期と重なる20?40歳が好発であるため[4]エストロゲンなどの女性ホルモンの関与を示唆する報告がある[5][6]。男性は女性より治療抵抗性で、必要とされるステロイド投与量が多かったり、中枢神経症状や腎症が多いなど、重症化しやすいという報告もある[7]膠原病の中では、関節リウマチに次いで2番目の頻度で見られる疾患である(ただし、シェーグレン症候群の軽症も含めた患者数は十分把握されておらず、実際にはそれより少ないと考えられる)。日本のSLE患者数は、約6?10万人と推定される[3]
病因

全身性エリテマトーデス(SLE)症例の10%以上が薬剤誘発性であると推定されている[8]。直接的な要因は未解明であるが、ウイルス感染、内分泌異常、遺伝因子、人種などが複雑に関与するとされている[7][9]
遺伝因子

双生児研究によると、一卵性双生児では25%の疾患一致率を認めるが[5]二卵性双生児では10%に満たない。これはSLEの発症における遺伝因子の強い影響力を意味していると捉えられる。古典的遺伝マーカーとして、HLA-DRB1*1501が全人種で関連を認められている(HLA-DRB1*0301は白人で強い関連を認めるが、他人種では認められない)。ゲノムワイド連鎖解析がこれまで11件行われているが、互いに指し示された領域が異なっていて明確な結論は得られない。それらのメタアナリシスによれば1、6、11番染色体上に疾患感受性遺伝子が存在する可能性がある。

ヒトゲノム上のほぼ全ての一塩基多型 (SNP)を網羅する研究において、HLA領域のほか、IRF5、ITGAM、KIAA1542、PXK、FCGR2A、PTPN22、STAT4各遺伝子[10]やBLK[11]TNFAIP3[12]上に信頼性の高い関連が報告された。これらのうち少なくともIRF5、STAT4、BLK、TNFAIP3などについてはアジア人においてもSLEの発症と関連するほか、アジア人において特有に認められた危険因子も報告されている[13]。また、これらのうちSTAT4などはSLEのみならず関節リウマチなど複数の自己免疫性疾患と関連していることが報告されてきている。今後は具体的にSLEを引き起こす過程の分子生物学的な研究、後述する多様な病態それぞれとの関連の解明、さらには治療法の開発が待たれている。
環境因子

強い日光への暴露後にSLEを発症したりSLE病勢の増悪が見られる事から紫外線喫煙、過去のウイルス感染が関与していると考えられている[9][14]。SLEとの関わりが最も良く知られているウイルスは、人間の9割が感染しているヘルペスウイルスの一種、エプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)である[15][16][17][18][19][20][21][22][23][24][25][26][27]。特に、EBウイルスの潜伏感染遺伝子抗原のEBNA1(Epstein-Barr virus-encoded nuclear antigen 1)とSLEの自己抗原とされているSmとの分子相同性(molecular mimicry)も明らかになっており、EBNA1に対して作られた抗体が自己抗原のSmに交叉反応(クロスリアクション)し、SLEの自己抗体の抗Sm抗体となっていることも示唆されている[28][29][30]。このEBウイルスは以下の「最新の知見」に述べる様に、あらゆる自己抗体の産生に寄与し、SLEを含む様々な自己免疫疾患の成立に大きな役目を果たしているウイルスである。
最新の知見

最新の知見によると、ゲノムのうちの遺伝子以外の部分は遺伝子のスイッチのON・OFFに関与していると判明した。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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