全固体電池
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全固体電池2つの電極間に固体電解質を備えた全固体電池
重量エネルギー密度

薄膜型300?900 Wh/kg[1]バルク型250?500 Wh/kg[1]
自己放電率6%ー85℃ (30日) [2]
サイクル耐久性>10000 回[3]
公称電圧

4.6 V(薄膜型)[2]

2.3 V(バルク型)[2]

使用温度範囲(放電時)-50℃ ? 125℃[2]
使用温度範囲(充電時)-20℃ ? 105℃[2]
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全固体電池(ぜんこたいでんち)とは、陽極陰極間を固体電解質が担う電池である。

この中で有機固体電解質や一部に液体電解質を使うものを半固体電池または固体電池と呼び、無機固体電解質のみ使うものを全固体電池と呼ぶ[注釈 1]。この無機固体電解質は不燃性で、リチウムイオンだけを高速で通す理想的なセパレーターの役割を果たす。そのため、簡易な構造と高い信頼性から、現在研究されている高性能二次電池の中で最も期待されている。また二次電池のみならず大容量コンデンサスーパーキャパシタ)の上位互換にもなり得る。

全固体電池の構造にはバルク型と薄膜型の2種類が有る。
概要

従来の液体電解質を用いた電池では溶媒に水溶液有機溶媒を用いる必要が有り、一次電池二次電池を問わず、電解質の蒸発、分解、液漏れ、発火、劣化といった問題が付きまとってきた[注釈 2]。しかし電解質不燃性固体電解質で構成すればこれらの問題を解決する事が可能である。また固体電解質の耐熱性の高さや電気化学的安定性から液体電解質では使えなかった高エネルギー密度電極材料を使う事が可能となる。その結果、高容量・高出力・高耐熱・高速充電・長寿命・低コスト化が全て実現出来るメリットがあった。

そのため電解質固体にする研究は以前から幾多の研究者により長年続けられてきたが、実用化に至ったものは一部に限られていた。その課題となっていたものは無機固体電解質のイオン伝導性の低さであった。しかし2011年に東京工業大学の菅野教授らの研究グループによって室温でもリチウムイオンが固体中を液体中より速く移動する「超イオン伝導体」(Li10GeP2S12)の発見に世界で初めて成功し、研究を実用段階へと推し進めた。さらに同研究グループらは2016年に固体電解質の高出力化にも成功し、その他研究機関や企業の研究成果も合わさり2018年から小型の全固体電池が生産されるに至った。近年は電気自動車の普及とともに各国でさらに研究開発が活発化している[4][5][6]

現在は実用化のため自動車メーカーや電子部品メーカーが生産体制構築に巨額の投資をしており[7]、近年(バルク型・薄膜型)全固体電池がそれぞれ製品化されている[8]。ただし大きな需要が見込める電気自動車用途では、 中国大手自動車メーカー広州汽車集団は2026年から、CATLサムスンSDIでは2027年から、日産自動車トヨタ自動車では2028年からの実用化を予定している[9][10][11]

現在実用化されている全固体電池の固体電解質には酸化物系硫化物系が有り、不燃性で電気化学的に安定という特徴を有している。その中でも硫化物イオンは酸化物イオンと比べて大きな分極率を示すため室温でも高いリチウムイオン伝導率を発揮しており、柔軟性や密着性も待ち合わせ、室温加圧のみで成形が可能など多くのメリットを有している。その為、硫化物系が先行して実用化されていた。現在では酸化物系でも高いリチウムイオン伝導率を発揮する固体電解質が開発されており[12]、これらの固体電解質がリチウムイオンだけを通す理想的なシングルイオン導電体として機能し、高い信頼性と長寿命を発揮している。

半固体電池・固体電池・全固体電池の区分けは業界観点から、電解質の液体比率が15%?5%を半固体、5%以下を固体、0%を全固体と表記する事が多い[13]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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