児童文学
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ドクター・スースの本を読む4人の子どもたち小さなかわいいポケットブック』(1744)。男の子にはボール、女の子には針刺し付きで販売された

児童文学(じどうぶんがく)は、0歳から10代、概ね12歳頃までのプレティーンの読み手や聞き手を対象にした文学作品およびジャンルであるが、ティーンエイジャーまでを範疇に含む場合もある。イラストレーションが添えられている場合が多い。

この語は娯楽性に重きを置いているエンターテイメント作品群であるヤングアダルト小説(ライトノベル少女小説[1]漫画などの他のジャンルと区別する形で使われる場合もある。明確に子ども向けに作られた書物は17世紀までには既に存在していた。児童文学の研究のための職業団体、専門の出版物、大学の専攻課程なども存在する。国や世代を超えて読み継がれる名作や、幅広い世代に受け入れられるベストセラーやロングセラー作品が数多くある。

日本においては、子どもを対象としたフィクションの文学ジャンルについては、童話という用語が使われていることが多い。しかし、空想的なお話というジャンルとしての用語として使われることもあり、昭和時代以降は、広義には児童文学が使われるようになっており、童話に関しては、年少者向けという狭義の意味合いで一般には流布している。出版社や出版業界では、こうしたものや絵本を児童書あるいは児童図書と呼んで扱っている。
児童文学の定義

児童文学という言葉が何を指すかについては議論がある。
子どものために書かれた本

おそらく、もっとも一般的な児童文学の定義は、意図的に児童子供)たちに向けて書かれた本というものであろう。南フロリダ大学教育学部准教授のナンシー・アンダーソン[2]は、児童文学を「漫画ジョーク集、辞書百科事典のような通読を意図していないノンフィクション参考書など」を除く子どものために書かれた全ての本であると定義している[3]。こうした作品の中には大人にも非常に人気のあるものも含まれる。J・K・ローリングの『ハリー・ポッター』シリーズは当初は子どものために書かれマーケティングされていたが、子どものみならず大人にも非常に人気となり『ニューヨーク・タイムズ』が専用のベストセラー表を作成するまでになった。ある本が一般の文学と児童文学のどちらに含まれるかは決定し難いことも多く、多くの本で大人と子どもの両方をターゲットにしたマーケティングが行われている。

子どもを主人公、または子ども社会とその文化をテーマとしつつ、子どもを必ずしも読者対象としていない作品もあるが、そうしたものはこの観点からは児童文学ではなく一般の文学と見なされる。
子どもによって書かれた本子どもの頃のデイジー・アシュフォード

一般には子ども自身によって書かれた作品すなわち児童文学とはならないが、隣接分野のものとして無視できないものである。欧米ではデイジー・アシュフォードが9歳の時に書いた『小さなお客さんたち』や、ジェーン・オースティンが兄弟姉妹を楽しませるために書いた子ども時代の作品(en:juvenilia)などがある。日本では、豊田正子の『綴方教室』(1937年)や安本末子『にあんちゃん』(1958年)などはベストセラーになり、映画化もされて大きな話題を巻き起こした。これらは作文や日記であったが、創作では第8回 福島正実記念SF童話賞を受賞した竹下龍之介『天才えりちゃん 金魚を食べた』(1991年)が6歳の子が書いた作品として話題になり、シリーズ化作品も出版された。
子ども向けに選ばれた本

最も制限的な児童文学の定義は、各種の権威が子どもに「相応しい」と認定した本というものである。ここでの権威には教師、書評家、学者、親、出版社、司書、小売商、出版賞の選考委員などがある。一例として日本では全国学校図書館協議会が推薦図書を選定している。

子どもを人生のあまり幸福でない側面から守りたいと願う両親はしばしば伝統的な童話童謡やその他の冒険譚などを問題視する。こうした物語で得てして最初に起こるのは大人の影響の除去であり、主人公は自分自身で物事に対処せざるを得なくなる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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