児童労働
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アメリカの写真家ルイス・ハインによる、作者不詳の風刺画の写真(1912年児童労働に従事する5-14歳の子供の比率。 黒色40%以上、赤色30-40%、橙色20-30%、黄緑色10-20%、淡黄色0.01-10%、灰色データなし。世界銀行、2005年[1]

児童労働(じどうろうどう)とは、15歳未満(就業最低年齢および義務教育年齢)の労働と18歳未満の危険有害な労働を指す。[1]によると、子どもの可能性や尊厳を奪う労働、および子どもの身体的、精神的な発達に有害である労働、そして教育の機会の喪失、中途退学就学長時間労働・重労働の両立など、就学に影響を及ぼす労働も含まれる。

児童労働に関しては、2つの国際労働条約がある。国際労働機関(ILO)の第138号条約では、就業が認められる最低年齢について義務教育終了後および15歳以上としており、第182号条約では最悪の形態の児童労働について定義している。この2つの条約は、労働に関する最低限の基準を定めた中核的労働基準に含まれている。

児童労働撤廃は、持続可能な開発目標(SDGs)目標8「働きがいも経済成長も」、ターゲット8.7に含まれており、他の目標より5年早い2025年までの目標達成が掲げられている。
歴史.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節の加筆が望まれています。 (2023年7月)

産業化前

児童労働は、産業化前の経済の中核をなした[2][3]。産業化前の社会では、現代の児童期の概念はほとんど存在しなかった。児童は、ある程度成長するとすぐに、子育て・狩猟・農業などの活動に従事した。多くの社会で、児童は13歳前後で成人とみなされ、大人と同様の活動に従事した[2]

児童は自分自身や自分が属する集団の生存のために労働力を提供する必要があったため、児童労働は、産業化以前の社会では重要な役割を担った[4]。産業化以前の社会は生産性に乏しく、平均寿命も短く、児童を生産活動に従事させないことは、長期的には児童やその児童が属する集団の福利を害することになると考えられていた。また、多くの産業化以前の社会、特に無文字社会では、児童を学校に通わせる必要がほとんどなかった。産業化以前の技術や知識の多くは、大人からの直接的な指導や徒弟制度を通じて伝承された[2]
産業革命アメリカで12時間夜勤に入る児童(1908年)20世紀初頭には、児童労働を伴う家庭内企業が数多く見られた。写真は1912年のニューヨークの例。

18世紀後半にイギリスで産業革命が勃発すると、児童労働を含む労働力の産業的搾取が急増した。バーミンガムマンチェスターリヴァプールなどの工業都市は、小規模な村落から大都市へと急速に発展し、乳幼児死亡率は改善した。これらの都市は、農業生産高の増加により急増した人口を取り込んだ。他の工業化国でも同様の動きが見られた[5]

ヴィクトリア朝では特に児童の労働環境が劣悪であった[6]。生産工場や炭鉱では、4歳前後の児童が危険で生命に関わる環境で長時間使役された[7]炭鉱では、児童は大人には通れない狭いトンネルを這って通った[8]。また、便利屋、横断歩道の清掃係、靴磨き、マッチ・花などの安価な商品の販売などの業務にも従事した[9]。建設労働者や家庭内労働者として働く児童もいた。労働時間は長く、建設労働者は夏は週64時間、冬は52時間、家庭内労働者は週80時間勤務した[10]

児童労働は、産業革命の勃発初期から、経済的困難の中で重要な役割を担った。貧困層の児童は、労働によって家計を支えることを期待されていた[9]。19世紀のイギリスでは、死亡や育児放棄などの理由で貧困家庭の3分の1に生計維持者がおらず、児童は幼い頃から労働に従事することを余儀なくされた。1788年のイングランドとスコットランドでは、143の紡績工場で働く労働者の3分の2が児童とされていた[11]。また、娼婦として働く児童も多かった[12]。作家チャールズ・ディケンズは、12歳のとき家族とともに債務者監獄に収監され、靴墨工場で働いた[13]
21世紀

2015年9月の国連サミットで、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が、加盟国の全会一致で採択された。持続可能でよりよい世界を目指すために、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に17の目標と169のターゲットが記載されている。

児童労働撤廃は、持続可能な開発目標(SDGs)目標8「働きがいも経済成長も」、ターゲット8.7に含まれており、他の目標より5年早い2025年までの目標達成が掲げられている。

SDG 8.7

「強制労働の廃絶、現代の奴隷制度および人身取引の廃止、子ども兵士の採用と使用を含む最悪な形態の児童労働を禁止および撤廃のために、即時かつ効果的な措置をとり、2025年までにあらゆる形態の児童労働を終わらせる」

グローバル指標 8.7.1

児童労働者(5?17歳)の割合と数(性別、年齢別)
国際条約
就業が認められるための最低年齢に関する条約 (ILO第138号条約)(1973年)「en:Minimum Age Convention, 1973」も参照

就業が認められている最低年齢が示されている。ILOは1919年の設立以来、工業、農業、漁業、鉱山など、産業部門別に就業最低年齢を定めてきたが、1973年にこの条約ができたことによって、すべての産業が対象に含まれた。

第2条 就労最低年齢の明示

3 ……最低年齢は、義務教育が終了する年齢を下回ってはならず、また、いかなる場合にも15歳を下回ってはならない。

ただし、開発途上国の場合は、批准当初は14歳とすることも認められている。また、軽易な労働については、一定の条件の下に13歳以上15歳未満の者の就業が認められている(開発途上国の場合は12歳以上14歳未満)。
最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約 (ILO第182号条約)(1999年)

<2020年にILOの全加盟国が批准>

児童労働の中で最も搾取的な労働を「最悪の形態」と定めている。義務教育を終えていても、子どもをその労働から無条件で直ちに保護しなければならないとしている。

「最悪の形態」の児童労働は、次の4つのカテゴリーに分けて定義されている。

(a)児童の売買及び取引、負債による奴隷及び農奴、強制労働(武力紛争において使用するための児童の強制的な徴集を含む)等のあらゆる形態の奴隷制度又はこれに類する慣行

(b)売春、ポルノの製造又はわいせつな演技のために児童を使用し、あっせんし、又は提供すること

(c)不正な活動、特に関連する国際条約に定義された薬物の生産及び取引のために児童を使用し、あっせんし、又は提供すること

(d)児童の健康、安全若しくは道徳を害するおそれのある性質を有する業務又はそのようなおそれのある状況下で行われる業務

(d)については、各国で決定することになっている。日本の場合は、労働基準法第62条、63条において子どもに対する就業制限、および年少者労働基準規則第7条、第8条、第9条で詳細な規定が設けられている。例えば、建築現場での高所での作業、重たいものを取り扱う仕事、ガソリンや火薬など危険物を取り扱う仕事、お酒を提供する場所でお客さんと会話などをする仕事などである。
子どもの権利条約(1989年)

子どもの権利条約は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約である。18歳未満を子どもと定義し、おとなと同様にひとりの人間として人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子どもに関する権利も定められている。

子どもの権利は、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利の4つに大きく分けられ、経済的搾取から守られる権利や教育を受ける権利が含まれている。


第32条 経済的搾取からの保護

1 締約国は、児童が経済的な搾取から保護され及び危険となり若しくは児童の教育の妨げとなり又は児童の健康若しくは身体的、精神的、道徳的若しくは社会的な発達に有害となるおそれのある労働への従事から保護される権利を認める。
武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書(2000年)


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