免疫寛容
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出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。(2021年8月)

免疫寛容(めんえきかんよう、英語: immune tolerance / immunological tolerance)とは、特定抗原に対する特異的免疫反応の欠如あるいは抑制状態のことを指す。免疫系は自己のMHC分子に抗原提示された自己の抗原ペプチドを認識しないようになっており、これを自己寛容という。ところが免疫寛容が破綻して自己抗原に対して免疫反応を示すことが原因となる疾病があり、これが自己免疫疾患である。

全ての抗原に対する免疫反応の欠如あるいは抑制状態は免疫不全と呼ばれ、免疫寛容とは異なる病的状態である。
概説

免疫を担当する細胞であるT細胞は、あらゆる病原体に対応できるよう、抗原に結合する部位(T細胞受容体;TCR)に無数のバリエーションを持った物がランダムに作り出される。ただし、このようにランダムに作られた物の中には自分自身の細胞を異物と見なして攻撃してしまう物が含まれるので、胸腺においてT細胞が成熟する過程で、そのように自己抗原に強く反応するT細胞は死滅させられる。しかし、この選別過程では胸腺で発現している自己抗原を攻撃するT細胞が除外されるのだが、同一個体の細胞であってもある特定の臓器でのみ発現する抗原を持った細胞が存在しており、その抗原は胸腺では発現していないため、胸腺の選別メカニズムではこの特殊な抗原を持った細胞を異物と認識して攻撃するT細胞を排除できない。このような本来は自己なのだがT細胞から見て非自己に見える細胞を攻撃しないようにする仕組みが免疫寛容である。ある特定の条件の元にT細胞がその特殊な自己抗原に結合した場合に免疫寛容が成立する。

この「特定の状況」は中枢性免疫寛容における負の選択末梢性免疫寛容における制御性T細胞(Treg)と自己抗原反応性T細胞の会合で生じる。負の選択はT細胞成熟の過程で行われ、上記の通り胸腺細胞全般に発現している自己抗原と反応するT細胞をアポトーシスさせる現象であるが、これには自己免疫制御因子AIREとFEZF2が関与している。AIREやFEZF2は組織特異的な自己抗原を胸腺髄質上皮細胞に発現させる転写制御因子である。言葉を換えれば、本来特定の組織以外には発現しないはずの分子がAIREやFEZF2によって胸腺にも発現するということである。AIREないしFEZF2によって転写・産生されたタンパク質はMHCクラスIMHCクラスII分子によって提示される。末梢性免疫寛容については制御性T細胞の項が詳しい。このページでも簡単に述べておくと、先述した中枢性免疫寛容をもってしてもそれをかい潜るT細胞は存在してしまうので、胸腺以降でも自己抗原反応性のあるT細胞をアネルギーないしアポトーシスに誘導する必要が出てくる。制御性T細胞は自己抗原特異的なT細胞受容体を持ち、同じく自己抗原特異的なT細胞受容体を持つヘルパーTへと活性化・エフェクターT細胞の増殖を阻害するサイトカインを放出する。このように中枢性免疫寛容、末梢性免疫寛容によって自己抗原特異的なT細胞はおおむねヒトの循環系から除去されるはずである。
ウイルスとの関連性

牛ウイルス性下痢ウイルスボーダー病ウイルス豚熱ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスなどでは胎子期における垂直感染により、病原体に対する免疫寛容が成立することがある。牛ウイルス性下痢ウイルスに対して免疫寛容が成立した動物は重要な感染源となる。
アレルギーとの関連性

抗原を経口摂取することによりその抗原への免疫寛容を成立させ、アレルギー疾患や自己免疫疾患を抑制させる治療法を経口トレランス、または経口寛容という。飲食物を異物とみなさないのも免疫寛容によるが、免疫システムに異常をきたし、本来は異物とは認識されない飲食物を異物として攻撃するために起こるのが食物アレルギーである。
参考文献

大里外誉郎 『医科ウイルス学 改訂第2版』 南江堂 2000年 
ISBN 4524214488

山本一彦『アレルギー病学』朝倉書店、2002年、ISBN 978-4254321975

明石博臣ほか3名編 『動物微生物学』 朝倉書店 2008年 140-141頁 ISBN 9784254460285

Peter Parham原著、笹月健彦監訳『エッセンシャル免疫学 第2版』メディカルサイエンスインターナショナル、2010年、ISBN 9784895926515

関連項目

持続感染


B型肝炎ウイルス

アレルギー

寛容

免疫療法

外部リンク

『免疫寛容
』 - コトバンク










リンパ球系, 適応免疫系, 補体系
リンパ系

抗原

抗原

スーパー抗原

アレルゲン

抗原変異(英語版)


ハプテン


エピトープ

線状(英語版)

配座(英語版)


ミモトープ


抗原提示/抗原提示細胞: 樹状細胞

マクロファージ

B細胞

免疫原

抗体

抗体

モノクローナル抗体

ポリクローナル抗体

自己抗体

マイクロ抗体(英語版)


多クローン性B細胞応答(英語版)

アロタイプ(英語版)

アイソタイプ

イディオタイプ(英語版)


免疫複合体(英語版)

パラトープ

免疫 vs. 寛容

活動: 免疫

自己免疫

同種免疫(英語版)

アレルギー

過敏症

炎症

交差反応性


無活動: 寛容

中枢性

末梢性

クローンアネルギー

クローン除去(英語版)

妊娠免疫寛容(英語版)


免疫不全

免疫特権(英語版)

免疫遺伝学
 (英語版) 

親和性成熟

体細胞超変異

クローン選択説


V(D)J遺伝子再構成

接合多様性(英語版)

免疫グロブリンクラススイッチ

MHC/HLA


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