光による通信
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信号灯。光をシャッターで遮り、モールス符号によって情報を伝える。

光による通信または光通信は、を使用して情報を伝達し、遠隔地と行う通信のことである。光による通信には、視覚(目視)によるものと、電気装置を用いて行われるものとがある。光による通信の最も初期の基本的な形態は、数千年前に遡る。光による通信を行う最も初期の電気装置は、1880年に発明されたフォトフォンであった。

光による通信システム(英語版)は、メッセージを光信号に符号化する送信機、その信号を宛先に搬送する伝送路、受信した光からメッセージを再現する受信機からなる。電気機器を使用しない場合の視覚的な通信の場合は、ここでいう「受信機」は信号を目視に観測して解釈する人のこととなり、信号は単純なもの(狼煙の煙など)から複雑なもの(光の色に意味を持たせたものや、光の間欠でモールス信号を伝えるものなど)まで様々である。

自由空間光通信は宇宙で利用されているが、一方、地上における光通信は地理、天候、光の利用可能性によって制限を受ける。この項目では、様々な形態の光による通信の概要を紹介する。
視覚による形態

狼煙、ビーコン(英語版)、ハイドロリックテレグラフ(英語版)、信号旗腕木通信などの視覚的手法が、光による通信の最も初期の形だった[1][2][3][4]。ハイドロリックテレグラフは、紀元前4世紀のギリシャで使われていた。信号弾は今でも海上や地上からの救難信号として使用されており、灯台航行灯は船や航空機の航行の安全のために使用されている。交通信号機鉄道信号機も、視覚による光通信と言える。

回光通信機(ヘリオグラフ)は、を使って太陽光を遠くの観測者に向けて反射する[5]。通信手は側方から隔光板を用いて日光を断続させ、符号を送ることで通信を行う。海軍の艦艇も同様の方法で信号灯とモールス符号を使用する。

航空機のパイロットは、特に夜間に安全に着陸するために、VASI(Visual Approach Slope Indicator)と呼ばれる投光器を使用する。空母に着陸する軍用機は、空母の甲板に正しく着陸するために、同様のシステムである光学着艦装置を使用している。また、空港の管制塔では、無線機が故障した航空機に指示を伝えるために、今でも信号灯が使われている。
腕木通信詳細は「腕木通信」を参照18世紀に作られたシャップの腕木通信塔を再現したもの

腕木通信は、回転式の腕木とシャッターを備えた塔を用いて、視覚的な信号によって情報を伝達するシステムである。情報は、3本の棒を組み合わせた腕木の形によって符号化され、シャッターが一定の位置にあるときに読み取られる[2][6]

腕木通信は電信の前身である。テレグラフ(telegraph)という言葉は、元々腕木通信のことを指すものだった。腕木通信は、長距離のメッセージを伝えるには郵便よりもはるかに速いが、後にそれに取って代わることになる電信よりもはるかに高価で、プライベート性も低いものであった。一組の腕木通信局間の最大距離は、地理的条件・天候・昼か夜かによって制限されるため、実用的には、中継局をいくつも並べ、各腕木通信局間で腕木通信を行うことで、情報を中継していた。各中継局に、熟練した通信手や観測手が必要である。

腕木通信の仕組みを最初に予見したのは、イギリスの博物学者ロバート・フックである。フックは、1684年王立協会に提出した論文の中で、初めて視覚的なテレグラフの概要を鮮明かつ包括的に示した。この提案は、その前年の第二次ウィーン包囲の後の軍事的な問題に端を発するものである。このシステムは、フックが生きている間に実用化されることはなかった[7][8]

1792年フランスの技術者クロード・シャップとその兄弟が作った腕木通信が初めて実用化され、556局、総距離4800キロメートルのネットワークでフランス全土をカバーした。1850年代までは軍や国の通信に使われていた。

多くの国では、シャップ式とは異なる信号方式を採用していた。例えば、イギリスやスウェーデンでは、シャッター付きのパネルを使ったシステムを採用していた。スペインでは、技術者のアグスティン・デ・ベタンクルが独自に開発したシステムが採用されていた。このシステムは、フランスを含むヨーロッパの多くの専門家が、シャップのシステムより優れていると考えていた。

腕木通信は、18世紀末から19世紀初頭にかけて流行したが、電気式の電信には勝てず、1880年には完全に廃れた[1]
手旗信号詳細は「手旗信号」を参照手旗信号で情報を伝える海軍の信号員(2002年)但し使っているのは上節の腕木信号

手旗信号とは、手に持った旗や棒、円盤、パドル、時には素手や手袋をはめた手などを使って、視覚的な信号によって遠方に情報を伝達するシステムである。情報は腕の位置によって符号化され、それらが一定の位置にあるときに読み取られる。

手旗信号は、19世紀に海事で採用され、広く使用されるようになった。機械式の腕木通信に変わって、手持ちの旗が使用されるようになった。現在でも洋上補給(英語版)作業中に使用されている。昼間の緊急連絡や、旗の代わりにライト付きの杖を使用した夜間の連絡にも使用可能である。


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