債務不履行
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金融における債務不履行については「デフォルト (金融)」をご覧ください。
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

債務不履行(さいむふりこう、: default)とは、債務者が、正当な事由がないのに債務の本旨に従った給付をしないこと[1]。債権者側からみた給付障害という概念が用いられることもある[2]

以下、民法の条文は条数のみ記載する。
債務不履行の類型化

従来の通説は、債務不履行を下記の3種類に分類する(三分説)[2][3]

履行遅滞 - 履行が可能にもかかわらず、履行期を経過しても履行しない場合。

履行不能 - 債務の履行が不可能な場合。

不完全履行 - 履行行為がなされたが、それが不完全なものであった場合

債務不履行の類型化に関しては、このほか本旨不履行と履行不能に分ける学説などがあった。

従来の三分説の問題として、雇用契約上の秘密保持義務違反や委任契約上の守秘義務違反のように、これらの三類型から零れ落ちるが債務不履行として法的救済手段を与えるべき事例の処理が問題となっていた[4]

そのため2017年の民法改正では統一的債務不履行概念の導入が図られたと説明されている[4]。また、旧民法415条では「債務者の責めに帰すべき事由」という文言で主観的要件とされていた点(過失責任主義)についても、2017年の民法改正後の民法415条1項は「債務者の責めに帰することができない事由」と否定形にして債務者の免責事由を定めた[4]。そして「その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」という修飾語を挿入して債務者の故意・過失を意味していないことを明らかにし、債務不履行責任については過失責任主義と決別した[4]。これにより債務不履行による損害賠償は、過失責任主義に基づき債務者が履行過程で行った違法で有責な行為(故意・過失)に対する制裁として課されるものではなく、契約の拘束力に基づいて債務者が約束したのにそれを遵守しなかったことを根拠とし、債務者に免責が成立しない場合に損害賠償責任が生じることとなった[4]。2017年の民法改正では、履行不能について後発的不能だけでなく原始的不能まで覆うこととし、債務者の履行拒絶が新たに類型に加えられたが、それだけで理解すべきでなく債務不履行責任上の過失責任主義を放棄して包括的不履行概念を導入したものと理解すべきと指摘されている[4]
履行遅滞

履行が可能にもかかわらず、履行期を経過しても履行しない場合を履行遅滞という[5]

債務者は債務の履行について、民法412条などで定められた時期から履行遅滞の責任を負う[6]

確定期限つき債務 - その期限の到来した時(412条1項)

不確定期限つき債務 - その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時(412条2項)

期限を定めなかった債務 - 履行の請求を受けた時(412条3項)

履行遅滞の責任の内容には、履行の強制、損害の賠償、契約の解除がある[6]
履行不能

債務の履行が不可能なことを履行不能という。

履行不能には債権債務の成立時に既に債務の履行が社会通念上不可能な原始的不能と債権債務の成立後に債務の履行が社会通念上不可能になった後発的不能がある[6]

ローマ法及びそれを継受するシビル・ロー(大陸法)の伝統的な理論では、原始的不能の場合は契約が無効とされ、売主に履行義務はなく(債務不履行として捉えられず)、売主に契約締結上の過失が認められる場合に損害賠償請求ができるにとどまるとされていた[6]

一方、コモン・ロー(英米法)では契約絶対の法理により原始的不能の場合でも契約は有効とされており、このような見解が有力化した[6]

ドイツなどでも原始的不能の契約を無効とする定めは廃止されており、原始的不能を法律的に無効とする法制度は世界的にも少数といわれている[7]
2017年の改正民法

2017年の改正民法は履行不能の規定(民法412条の2)を新設した(2020年4月1日施行)。

債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない(412条の2第1項)。

契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、415条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない(412条の2第2項)。

2017年の改正民法により原始的不能と後発的不能の区別はなくなった[7]。ただし、契約上の債務不履行が契約成立時に履行不能だった場合にその契約が有効であると明言しているわけではない[7]

履行不能に関しては、債務の履行不能によって債務は消滅するが債務者に帰責事由がある場合には債務消滅の例外として債務者に損害賠償義務を認めていると解する説と、債務の履行が不能でも債務が消滅することはなく履行不能によって生じた損害賠償または履行に代わる損害賠償が請求できると解する説に分かれている[8]

なお、2017年の改正民法は履行遅滞中の履行不能について判例法理を明文化する規定(民法413条の2)を新設した(2020年4月1日施行)[9]

債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる(413条の2)。
不完全履行

履行遅滞や履行不能のように、債務者による履行行為が無いという消極的容態によってではなく、債務者により積極的に履行行為がなされたが、それが不完全なものであったために債権者に損害が生じた場合を、不完全履行(独:Schlechterfullung)、不完全給付ないしは積極的債権(契約)侵害(独:Positive Vertragsverletzung, Positive Forderungsverletzung)と称し、履行遅滞・履行不能とは別の、第三の債務不履行形態として位置づけられている[10]

比較法史的には、かつて立法及び学説において債務の不履行は債務者の遅滞及び履行不能をもって尽きるものとしていたために、ドイツの学説の問題提起を受けて立てられた概念である[11][注釈 1]

日本民法は「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき」は、債権者は損害賠償を請求することができるものとしており(415条)、このような場合も債務不履行に含まれることは疑いがない[12]。このために、あえて条文に無い概念を導入する必要はないとの批判もある[13]。しかし、履行遅滞や履行不能と異なり、外見上は債務の履行があるため、債権が時効によって消滅しない限りは強制履行や解除を認めるべきかは問題であり、例えば落丁のある本を数年使用収益した後、新品の本の給付を請求するような場合など、一定の場合にはこれを制限すべき場合が生じる。その根拠として信義則の規定などが挙げられている[14]

従来、債務不履行には、この三つの態様のものがあるとされていたが、判例・学説は415条前段の債務の本旨に従った履行をしないというのには、契約の本来の給付義務に付随する説明義務・情報提供義務などの付随義務違反、更に雇用契約における使用者の労働者に対する安全配慮義務のように相手方の利益を保護すべきだという保護義務違反のような態様のものを含むと解するようになった[15]

従来の三分説では損害賠償を与えるべき事例が3つ類型のいずれに属するかが問題になったが、2017年の民法改正で統一的債務不履行概念の導入が図られ、損害賠償の要件としては包括的不履行概念に含められる事例であれば、債務者に免責が成立しない限り、損害賠償が債権者に与えられることとなったと説明されている[4]
債務不履行の効果

債務者が債務不履行に陥った場合、対する債権者がとりうる手段には以下のようなものがある。


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