催眠
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この項目では、意識状態について説明しています。その他の用法については「催眠 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
Photographic Studies in Hypnosis, Abnormal Psychology (1938)

催眠(さいみん、: hypnosis)とは、他人(自分自身であることもある)によって与えられた暗示により、精神的変化、肉体的変化が引き起こされた状態のことである[1]。催眠術(さいみんじゅつ、: hypnotism)とも呼ばれる。日本においては1887年明治20年)前後に「催眠術」という用語が初めて一般社会に広まった[2]
催眠に関するよくある誤解

催眠に関して、次のように言われることがある[3]
催眠をかけられると、催眠術師に操られてしまう。

一度催眠にかかると、その状態から出ようと思っても出ることが出来ない。

とても「催眠術にかかりやすい」「暗示の影響を受けやすい」「騙されやすい」人でなければ催眠は効かない。

催眠にかかっている間、人は意識を失う。

だがこれらはいずれも誤解である。以下、上に対する回答を記述する。
正しくない。自分がやりたくないことをやらされる心配はない[3]

正しくない。自分が出たいときに催眠状態から脱することができる[3]

正しくない。研究によれば大多数が催眠の恩恵を受けることができる。また、催眠にかかりやすいことは「催眠を効果的に使用できる能力がある」以上の意味を持たない。騙されやすい、意思が弱いこととは全く関係ない[3]

正しくない。催眠にかかっている間、寝ているわけでも、意識を失っているわけでもない[3]

ハモンドは、催眠暗示の反応率の調査を行った。これによると腕降下は89?92%、手の開閉では86?88%という反応率が得られたが、自然健忘(催眠中の体験を特に暗示をいれなくとも、忘れてしまうこと)の反応率は7%しかなかった[4]
催眠にかかるとどう感じるのか

学術的な議論は、催眠の原理で詳しく述べる。ここでは催眠にかかった時、具体的にどのように感じるのか、どのような現象が起きるのかを記述する。
催眠は睡眠と同じように感じるのか

ある程度の深さの催眠状態に誘導されると、思考が一時的に休まる状態、いわゆるぼーっとした状態になる。この状態で何の暗示も与えず放置しておいて「あなたは今何を考えていましたか」と聞いても「何も考えていなかった」と被施術者は答えるだろう[5]

だからといって、意識が完全に消失しているわけではない。被施術者に「あなたは眠っていましたか」と聞いても「眠っていなかった」と答える。催眠状態は睡眠とは異なる状態であるといえる[6]

催眠状態を日常の体験に例えるなら睡眠よりも、ある事に熱中しているときなどに起こる、頭の中が空っぽになったような感覚が適当である。[6]催眠は一言の暗示ですぐに覚醒するが、睡眠は暗示を与えてもなかなか覚醒しないことからも、睡眠と催眠の違いが分かる[5]

実際、睡眠や弛緩といった暗示を与えず覚醒状態のまま催眠状態に導く、覚醒状態催眠が存在する[7]
後催眠現象について

後催眠現象(Post-hypnotic phenomena)とは、催眠中に与えた暗示が覚醒後に現れる現象をいう。催眠中に起こった現象が覚醒後、引き続き続いている現象も後催眠現象に含む。施術者は、与えられた暗示を覚えたままにしておくことも、忘れさせることもできる。(「この暗示は覚醒後忘れる」という暗示を別に与える)[8]

神経衰弱に悩んでいる催眠感受性の高い男子中学生[注釈 1]に対し、後催眠暗示を与えた例がある。暗示の内容は、中学生の前に立っている見知らぬ青年が、昔からの友人に見えるというものである。暗示の内容は忘れさせた。男子中学生は覚醒後「やあ青木君[注釈 2]! 君はどうしてここへ……」と言った後、きまりが悪そうに「失敬しました。つい見間違えまして」と言った[9]

翌日その中学生は、本現象について次のように語っている。『昨日はどうしてあんな間違ひをしたか不思議でならない。青木君が此家へ訪ねて来る筈のないことは、一寸(ちょっと)考へても分ることだのに』(引用注:顔でも似ていたのかと尋ねると)『顔でも似てゐたのならまだしもであるが、さつぱり似てゐないのに間違へたのだから、尚不思議で堪らない』[9] ? 中村古峡、近代犯罪科学全集 4 変態心理と犯罪 第4篇』武侠社 p.214
催眠の定義

催眠を正確に定義することは極めて難しい。[10]以下に示すように人によって、主張する催眠の定義は異なっているのが現状である。催眠者によって与えられた暗示に集中することにより、被験者が記憶や感覚の変異を経験できるコンディションもしくは状態。この間、被験者の理知的判断力が低下し、疑惑も中断される。[11] ? Orne、Hypnosis : Useful in medicine, dangerous in court. U. S. News and World Report.被験者が、自己の心理的経験に照らし合わせて、心のうちにひそむ複雑な心理的要因の再連合と再構成を可能にする、特殊な精神状態。 [11] ? Erickson、Psychological shocks and creative moments in psychotherapy. American Journal of Clinical Hypnosis, 16 ; 9-22.示による信念によりて、主として主観的の病苦を去って疾病に対し良影響をおよぼし、もしくは威信念を喚起して意思に抑制もしくは発動を促し、以って良果を結ぶべきもの。 [12] ? 森田、1920「催眠術治療の価値」高良武久(編)『森田正馬 全集 第一巻―― 森田療法理論(総論)』白揚社 pp.128-151
催眠現象と催眠感受性
定義

催眠感受性とは、与えられた暗示にどの程度反応するかを示す指標である。


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