備崎経塚
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、和歌山県田辺市本宮町にある経塚遺跡について説明しています。備崎経塚を一部として含む修験道の宿遺跡については「備宿」をご覧ください。
備崎および熊野本宮周辺の空中写真(1976年撮影)
画像中央を縦断する河川が熊野川。東側から半島状に張り出した尾根が備崎。北西対岸(画像中央)の楕円形状の緑地が大斎原。画像上部中央の円形の緑地が熊野本宮大社現社地。
国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成.mw-parser-output .locmap .od{position:absolute}.mw-parser-output .locmap .id{position:absolute;line-height:0}.mw-parser-output .locmap .l0{font-size:0;position:absolute}.mw-parser-output .locmap .pv{line-height:110%;position:absolute;text-align:center}.mw-parser-output .locmap .pl{line-height:110%;position:absolute;top:-0.75em;text-align:right}.mw-parser-output .locmap .pr{line-height:110%;position:absolute;top:-0.75em;text-align:left}.mw-parser-output .locmap .pv>div{display:inline;padding:1px}.mw-parser-output .locmap .pl>div{display:inline;padding:1px;float:right}.mw-parser-output .locmap .pr>div{display:inline;padding:1px;float:left}備崎経塚 位置

座標: .mw-parser-output .geo-default,.mw-parser-output .geo-dms,.mw-parser-output .geo-dec{display:inline}.mw-parser-output .geo-nondefault,.mw-parser-output .geo-multi-punct,.mw-parser-output .geo-inline-hidden{display:none}.mw-parser-output .longitude,.mw-parser-output .latitude{white-space:nowrap}北緯33度49分48.0秒 東経135度46分38.0秒 / 北緯33.830000度 東経135.777222度 / 33.830000; 135.777222備崎経塚(そなえざききょうづか)は、和歌山県田辺市本宮町内にある経塚遺跡。遺跡のある備崎は大峯奥駈道上の霊地である七越峰から派生した熊野川左岸の丘陵で、熊野川にUの字状に囲まれるようにして大きく張り出しており、大斎原(おおゆのはら、熊野本宮大社旧社地)と川筋を挟んで向かい合う位置にある[1]

国の史跡大峯奥駈道」(2002年平成14年〉12月19日指定)の一部[2][3]である。また、大峯奥駈道は世界遺産紀伊山地の霊場と参詣道」(2004年登録)の一部である[4]
発掘の経緯

熊野詣が盛んになり始めた時期と経塚造営の流行期が重なることから、熊野三山を中心とする熊野には多くの経塚が営まれ[5]新宮那智山においては大規模な経塚の存在が知られていた[6]。三山の緊密な関係や新宮・那智山における経塚遺跡の規模からすると、本宮にも同様の経塚造営が推定される[7]ものの、本宮ではその旧社地が熊野川・音無川・岩田川の3つの川の合流する中洲という水害にさらされやすい不安定な場所にあって、旧社地周辺での埋蔵物の出土は全くなかった[8]。明治時代に大水害に被災して関連史料が利用できなくなったため、本宮の経塚についてはほとんど明らかになっていなかった[9]。わずかに、本宮における堤防工事の折に「土中出現黄金仏」と伝える曲亭馬琴の随筆『兎園小説』の記事、およびそれに関連すると見られる銅製経筒および陶製外容器が伝わって[10]いたものの、馬琴の記事では出土の状況は明確ではない[11]

備崎経塚が初めて報告されたのは、1990年(平成2年)、和歌山県教育委員会の調査[12]によってであった。和歌山県教育委員会は、東牟婁郡地域を対象として実施した「東牟婁地方広域遺跡群詳細分布調査」の一環として備崎の調査を実施した。この調査では、丘陵頂部にあたるA地点、丘陵西端のB地点、Bに隣接し、本宮旧社地と熊野川を挟んで向かい合う尾根筋北東斜面上のC地点、Aから北東の斜面上のD地点の4つの調査地点が設定され、A地点からは河原石や須恵質の甕片といった経塚の可能性のある遺構が検出され、B地点には河原石集石の遺構が確認されたほか、C地点では、修験道の道場とされてきた巌の側から瓦質の土器底辺が得られ[13]、さらなる調査の必要性が指摘された[14]

2001年平成13年)、和歌山県教育委員会の調査結果を踏まえて、和歌山県東牟婁郡本宮町(当時)は、世界遺産登録およびその前提となる史跡指定を目指す登録推進活動の一つとして備崎経塚の調査を企画した[15]。本宮町は備崎経塚群発掘調査委員会を組織し、国庫補助金を得て大谷女子大学文学部文化財学科の中村浩に調査実務を依頼した[16]。中村は現地視察を経て、2001年(平成13年)12月11日から14日にかけて遺跡の分布・測量・遺構確認を目的とした予備調査を、翌2002年(平成14年)2月5日から15日にかけて本格調査をそれぞれ実施し[17]、成果を報告書として刊行した[18]
備崎経塚熊野川右岸から備崎を望む
遺跡の分布

大谷女子大学の調査により、丘陵頂部付近に遺構所在の可能性が高い部分が存在することのほか、丘陵一帯に経塚以外にも祭祀遺構・建物遺構の可能性が示唆され、地形測量の結果、人為的な改変が加えられている可能性が認められた[19]。調査地内の町有林には、本宮旧社地を見下ろす丘陵中腹部一帯にかけて河原石散布地があり、撹乱を受けている可能性があるものの[19]、遺構検出作業により陶片数点が確認された[20]。出土遺物として、青銅鏡破片、経筒破片、影青合子蓋破片、緑釉陶器破片、青銅製経筒破片などのほか、大谷大学の調査で第3地点B区1号経塚と呼ばれた地点からは、盗掘者の目を逃れたと見られる仏像らしき遺物も検出された[20]

調査にあたっては、丘陵稜線上に第1から第7の地点を設定し、さらに各地点で積み石の状況の観察をもとにして区として区分した[21]。7つの地点のうち、発掘調査が実施されたのは第1と第3の2つの地点で、39基の経塚が検出された[22]。調査に当たっては撹乱の復元に努めつつも、保存を考慮したため、遺構の重複状況などいくつかの調査は断念された[23]。これらの調査地点では、経塚の遺物・遺構だけでなく、磐座信仰に関連すると見られる巨石[24]や、丘陵頂部の第7地点では修験道における宿とされる「備宿」の遺跡の可能性がある平坦部が検出され、精査の必要が指摘された[23]
形態と遺物
経塚の形態と配置

検出された経塚遺構は、a形態からf形態の6つに分類された[25]。a形態からc形態、およびe形態の各形態は積み石が一部失われているとの推定により、d形態は内部から検出された遺物との形状から、復元状態が推定されたが、f形態は蓋状の部分の状況が明らかではなく、経塚であることを識別しうる標示石を伴うという特徴があった[26]

これらの分類は遺構の形態の観察によって得られた経験的判断をもとにした分類であることから、杭と石室の有無を基準として目的を推定した分類[27]が提唱されている。それによれば、杭のみのa形態、杭・石室とも無しのb形態、石室のみのe形態、杭・石室ともありのf形態を独立した形態とし、c形態とd形態をb形態のバリエーションであるという[28]。備崎経塚で最も多く検出されたのは、より簡略な構造を持つa形態とb形態であり、労力を要するf形態は希少であるが、第3地点平坦面の中央部に位置していることが注目される[29]。これらの形態は、時枝[2011]・山本[2006a]らにより目的を異にすると推定され、石室を伴うとはいえ簡便なものに過ぎないb形態・e形態は経典の奉納のための納経を、a形態・f形態は経典の保存のための埋経を、それぞれ目的とするものとされた[30]

経塚群は積み石の堆積状況をもとに各地点は区に区分され、例えば第1地点ではAからDの4つの区に分けられた[31]。第1地点のAからCの各区では、複数の経塚を囲うような石列の配置が見られた[32]。こうした経塚の配置が何らかの秩序を伴うことは確かであるが、当初から何らかの意図、例えば勧進僧ごとの割当てや近親関係、知識層によるものといった条件に基づく区画設定である[32]のか、継続的に経塚が営まれた結果として発生したものであるのかは未だ明らかではなく[33]、今後の検討課題となっている。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:60 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef