傘がない
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「傘がない」
井上陽水シングル
初出アルバム『断絶
B面感謝知らずの女
リリース1972年7月1日
規格7インチ 45 rpm
ジャンルフォーク
レーベルポリドール
作詞・作曲井上陽水
プロデュース多賀英典
チャート最高順位


69位(オリコン[1]

井上陽水 シングル 年表

人生が二度あれば
(1972年)傘がない
(1972年)夢の中へ
(1973年)

ミュージックビデオ
「傘がない」 (『弾き語りパッション』PV) - YouTube


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「傘がない」(かさがない)は、フォークシンガー井上陽水のシングルレコード。井上陽水の再デビューアルバム『断絶』(1972年5月1日)からリカットされた。当初はヒットしなかったが[2]、いつしか初期の陽水の代表曲といわれるようになった[3]ジャケット写真の石段は猿楽町からマロニエ通りに上がる「男坂」[4]目次

1 概要

2 制作背景

3 収録曲

4 クレジット

5 ミュージック・ビデオ

6 収録アルバム

7 カバー

8 脚注

9 関連項目

10 外部リンク

概要

歌のテーマは、当時の日本社会に多少の皮肉を込め、世の中で起きている学生運動よりも、今は自分が「君」(恋人[5])に会いに行かねばならないのに「傘がない」という問題のほうを考える必要があるというものである[4]

制作当時はまだ学生運動の季節だったのである[2]。しかし過激化した学生運動は、アルバム『断絶』やシングル「傘がない」リリースの頃すでに下火になっていた。寺島実郎は1972年に吉田拓郎結婚しようよ」、井上陽水「傘がない」を聴き、寺島は「大学のキャンパスにいた最後の年だったが、『政治の季節』が終わったことを確認した」[6]と言う。

「傘がない」のリリースは、学生運動の勢いが下り坂になったあとに訪れた「シラケの季節」に丁度突入していたため、社会的問題に向き合わないミーイズム(meism: 自己中心主義)の登場とも言われた[2]。陽水本人は、「別にそんなふうに考えて作った歌ではないんですよ。ただ単に、周りが政治の季節であったというだけのことで…」と語っている[2]。すなわち制作当時は学生運動が盛んであったが、リリースまでの時間差が誤解を生じさせたのである。

筑紫哲也は「傘がない」を聴いたとき、「すごいのが出てきた」と面白がった[7]。筑紫はキャスターを務めたテレビ朝日日曜夕刊!こちらデスク』で「傘がない」を流し、2番を歌った[7]。筑紫は深刻な顔で自国の将来を語るような憂国の番組にしてなるものかと思ったのである[7]。陽水はその放送を観て「この人、分かってるな」と思った[7]。筑紫の死後、陽水はこう語った[8]。ちょっと生意気な言い方になりますが、ああ、この人は相当、わかってるなと思いました。ジャーナリズムに身を置きながら、ジャーナリズムを突き放して見ることができる。ある意味で、ユーモアがわかる人なんだ、と。そのあと、どうやってお会いしたのかは覚えていないのですが、「こちらデスク」が打ち切りになるという最後の放送に出演しないかと声がかかり、番組の締めくくりに「傘がない」を含む3曲を歌いました。歌謡番組でさえ珍しいのに、報道番組で3曲続けてなんて不思議なんですが。筑紫さんだからできたのだと思います。

2011年東日本大震災の発生によりツアーを中断、「しばらく歌う気になれなかった」陽水は2012年4月からの全国ツアーにおいて、「傘がない」は「今歌うことに疑問がある」、原子力に言及する「最後のニュース」は「今は適切でない気がする」と話した[9]
制作背景

ホリプロの制作担当で陽水のディレクター兼マネージャー・川瀬泰雄は、1971年7月17日に開催された、悪天候に見舞われ伝説となっているグランド・ファンク・レイルロードの日本公演「ロック・カーニバル#6」に陽水を招待した[4]。「傘がない」は、その公演で演奏された楽曲「ハート・ブレイカー」に影響を受けて誕生した[1]

ある時、陽水は川瀬泰雄のところへ行き、「こんな曲はどう?」と「傘がない」の原型を披露した[4]。グランド・ファンク・レイルロード「ハート・ブレイカー」は「Am-G-F-E7」を中心とするコード進行(いわゆるアンダルシア進行)で、「傘がない」にマッチした[4]。「ハート・ブレイカー」の盗作なのかというと、このコード進行はデル・シャノン悲しき街角(ランナウェイ)」、ザ・ベンチャーズ急がば廻れ(ウォーク・ドント・ラン)」などポップミュージックで多用されるものであり、メロディも異なると川瀬は説明している[4]。この時はサビがなく、川瀬はギターで「F」を押さえ、そのあたりの音でサビを作る提案をした[4]。陽水は「Dm」を押さえ「つめたい雨が」以降のメロディを作った[4]

後年、川瀬泰雄は自分の娘と井上陽水のコンサートに行き、「傘がない」の演奏で当時が思い出され、川瀬は娘に「この曲のサビはウチで作ったんだよ」と言った[4]。川瀬は娘と楽屋へ行くと、陽水は川瀬の娘に「お父さん、『傘がない』を歌ってる時に、この曲、ウチで作った、と言ってたでしょう」と言った[4]

歌詞に関しては『都会では自殺する若者が増えている』の出だしが、この曲の代名詞にもなっているが、これはビートルズの『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』の"I read the news today, oh boy."からインスパイアされたものである。
収録曲
傘がない - 5:30

作詞・作曲:井上陽水/編曲:
星勝


感謝知らずの女 - 3:05

作詞・作曲:井上陽水/編曲:星勝
※「傘がない」同様、『断絶』のリカット。


クレジット

ディレクター:
多賀英典

ミクサー: 大野進

カバー・デザイン: 松尾博

フォト: 武藤義 ※陽水が小さくたたずみ、手に紙を1枚、ギターを脇に置いたジャケット写真はアルバム『断絶』同様で、『断絶』のアングルはこのシングルより広い。

ミュージック・ビデオ


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