偽装請負
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

偽装請負(ぎそううけおい)とは、日本において、契約が業務請負業務委託委任契約もしくは個人事業主であるのに実態が労働者供給あるいは供給された労働者の使役、または労働者派遣として適正に管理すべきである状況のことである。
定義

これらすべてが民法上の取り扱いでは請負であり、契約形態を偽装・隠蔽することからこの名がついた。業務委託によるものは偽装委託(ぎそういたく)と表現する場合がある。

違法行為である(詳細は後述)。しかしながら、1986年の労働者派遣法の制定やそれ以前にも請負に対する問題は内在しており、2004年の法改正による製造業派遣規制の解禁がきっかけとなり、労働者派遣に対する認識が高まった事や、2006年の公益通報者保護法の制定による通報者の増加により社会問題に発展したという意見が出されている[1]。事実、2006年7月末以降断続的に朝日新聞などが実態を報じた( ⇒ニュース特集「偽装請負」)ことなどによって問題が顕在化した結果、労使双方が対策に乗り出すこととなり、派遣業界などでは、俗に、日付を取って、7・31ショックと呼ばれている。

類似語として偽装派遣(ぎそうはけん)という用語があるが、これはほとんどの場合「請負偽装派遣」の省略であり、同一の行為を指す。「偽装された派遣」という表現をあらわすために使われる傾向があるが、本来の契約実態である「請負の偽装」と言う意味合いを含まないため、適切とは言えない。しかしながら同様に、「偽装請負」もその行為の実態が派遣であることを含んでおらず、また文法上も「請負の偽装」であれば「請負偽装」と表記すべきところであるが、語順が逆転し不自然な接続となっており、適切とは言えない。このような用語の混乱は、物書きのプロでさえ混同することがあるほど [1] で、偽装請負と偽装派遣が混在して理解されているのが現状と言える。「請負などの非雇用契約を偽装した違法派遣」または「請負偽装派遣」などとするのが、実態をより反映した表現になる。

なお、この問題については、2003年ごろから経済誌などによる特集報道がいくつかなされていた。しかし、世間一般が広く認知するに至ったのは、先述の朝日新聞による報道が大きく寄与している。この報道までは社会的認知度が低かった主たる要因として、ラディアホールディングス・プレミア(旧クリスタル→グッドウィル・プレミア)が些細なことでも非難記事を書かれる度に法外な損害賠償訴訟提起を連発したこと(いわゆるSLAPP)、さらにはマスコミのスポンサーとなっているなどの事情ゆえに報道しにくくする状況があるため、報道した機関または他機関に関連報道を躊躇させる状況を作ってきた事などがあげられる。

大手製造業の行為を指すことが多いが、情報処理業界やコンサルティング業界でも、請負契約でありながら、発注者の事務所などにプログラマー・システム技術者・コンサルタントが常勤(客先常駐)し、事実上発注者の指揮・命令下に置かれるケースがある。これも「偽装請負の一類型」だと指摘されている[2]

こうした偽装請負が後を絶たない根本的な理由のひとつとして、日本経済を支える企業にとっては「総人件費を削減することが最も効果的な経営改善策である」という意識が根底にあるとされている。
概要

業務請負および業務委託や個人事業主の場合、本来はメーカーなどの顧客から仕事の発注のみが行われ、請負側は作業責任者を置き配下に人員がいる場合は、作業指示を行うのは請負側である。偽装請負となるのは請負側が人の派遣のみを行って責任者がいないか実質的に機能しておらず、顧客側の社員が作業指示を行っている状態を指す。

請負労働者の場合、労働基準法が適用されないため、派遣労働者と比べて顧客が作業員の身分に注意する必要はなく、生産効率の低い作業者は容易に交代させられるため、顧客は派遣契約をしたがらない傾向が強い。

偽装請負が生まれた主な理由は、旧法において、26種のポジティブリストに含まれていない製造業への派遣が行えず止む無く請負または業務委託という形をとっていたこと。そして、専門分野26種については3年、その他一般業務については1年という期間に対する法的制限の回避が行われていたこと。そして派遣先という立場よりも請負注文者という地位を求めていた[1]という事情にある。

社会保険・有給休暇・福利厚生といった負担を強いられる正規の人材派遣会社が、これらを負担しない請負企業とは営業面において公正な競争が出来ているとは言えず、派遣社員が被る手数料率の増大への近因となっている。請負企業が所得税や社会保険料の源泉徴収を行わない(違法行為)ことで表面的な手取り額が大きく、一部の求職者を魅了するといった側面もあり、こうした一部の求職者の特性に目をつけた偽装請負専門の違法業者の参入が後を絶たない。また、そうした違法業者を利用することで源泉徴収を免れた労働者が脱税行為に及ぶといった、二次的な問題も存在する。桐野夏生作『メタボラ』(朝日新聞連載小説)では、偽装請負の派遣会社に登録、派遣先工場で作業を始めた登場人物の様子が描かれる。

日本経団連会長の御手洗冨士夫は本件に関連し、「請負労働者に技術指導できないのが制約になっている」・および「偽装請負のおかげで産業の空洞化が抑止できている」旨の主張を経済財政諮問会議の席上などで行なっている。これらの発言に対しては、「偽装請負の合法化を企図している」として、また毎日新聞における特集記事においても、「経営者の立場と諮問機関メンバーの立場を混同する著しいモラル低下」である、と非難されている[3]。一方、濱口桂一郎は、「戦前の工場法は、『雇傭関係カ直接工業主ト職工トノ間ニ存スルト或ハ職工供給請負者、事業請負者等ノ介在スル場合トヲ問ハス、一切其ノ工業主ノ使用スル職工トシテ取扱フモノトス(大正5年商局第1274号)』と、(労働者派遣事業の前身たる労務供給請負であってもそれ以外の事業請負であっても)明確に工業主に使用者責任を負わせていた ⇒[2]」「派遣でない請負であれば使用者責任がないなどというのは、戦後労働者供給事業を全面禁止したために生じた事態である」としたうえで、「(請負は)本来労働法規制によって規制されるべき」「御手洗会長は『請負法制』に無理があるというが、むしろ請負法制が存在しないことが『無理』なのである」「むしろ戦前のように請負であっても受入れ事業者に使用者責任を負わせることによってのみ解決することができるはず」と述べている[4]

主に就業者への営業機能を提供する派遣事業モデルは、資本主義の根底概念に反する部分を有しており、違法性が高いと考える声もある。
建設業における偽装請負

建設業における偽装請負は、製造業における偽装請負とは異なり、「一人親方が発注者と請負契約を締結するが、実態として発注者が一人親方に対して指揮命令を行う」という類型である場合が多い[5]

柴田徹平によれば、常用契約[6]と呼ばれる契約形態においては、調査対象の一人親方517名のうち70%以上が「仕事の内容・方法について具体的指示を受ける」と回答した[5]。手間請け契約[7]と呼ばれる契約形態においては、調査対象の一人親方540名のうち約30%が、独立自営型[8]一人親方においては、調査対象の一人親方298名のうち約20%が「仕事の内容・方法について具体的指示を受ける」と回答した[5]

建設業においては、請負企業を介さずに労務提供者が直接発注者と請負契約を締結するケースが多い。偽装請負を行う労務提供者は多数の零細事業者であるため、当局の監視が及びにくい[5]
日本の法律上の取扱い
契約類型の解釈

一般に使用者が雇用契約を締結する場合には、雇用契約に基づいて労務を提供する者は労働者として、労働法による保護を受けることになる。ところが、民法におけるいわゆる典型契約としては、類似するものとして請負という契約類型が用意されており、請負人にはいわゆる労働法の適用がないのが原則である。

請負契約の特質は、請負人は仕事の完成を請け負うものであって、発注者は仕事の完成に関して対価を支払うものとされている点にある。この点が、労務に服することを約して労務に対して対価を支払う雇用関係との顕著な違いであり、裏返せば、雇用と請負を区別する判断基準となる。労働関係を規律する労働法に比して、請負関係における請負人を「保護」する法制は緩やかなものであることから、実質的に雇用関係にある場合であっても「請負」との形式を「偽装」することで、労働法令の規制の潜脱を企図する、というのが偽装請負の出発点である。

なお、法令の適用上、特定の契約が雇用契約なのか請負契約なのか、などの契約類型に関する判断は、当事者が用いた用語や名称に拘束されることなく、実質的な内容の判断によりなされる、というのが一般的な解釈である。
職業安定法と労働者派遣法との関係

上記の理は、間接的な雇用関係というべき労働者派遣の場面においても当てはまる。したがって、どういう内容の契約を締結した場合に、形式的には請負契約を謳っていたとしても、雇用契約ないしは労働者派遣契約としての規律に服せしめるかの基準が問われることとなる。

職業安定法施行規則第4条によれば、労働者を提供しこれを他人の指揮命令を受けて労働に従事させる者(労働者派遣法に基づく者は除く)は、たとえその契約の形式が請負契約であっても
作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負う

作業に従事する労働者を、指揮監督する

作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負う

自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要なる簡易な工具を除く。)若しくはその作業に必要な材料、資材を使用し又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでない

を全て充足しないものは労働者供給事業を行う者、すなわち派遣を行っている者とみなされる。

また、同条2項によれば、前項の各号のすべてに該当する場合であっても、それが法第44条(労働者供給事業の禁止)の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が労働力の供給にあるときは、法第4条第6項の規定による労働者供給の事業を行う者であることを免れることができない。

とあるので、請負契約なのに人手を集めて送り込むだけの行為であれば職業安定法違反(許可されていない労働者供給行為)及び労働者派遣法違反(特定派遣事業者については無届け営業、登録型または紹介予定派遣事業者は無許可営業)―つまり違法な人貸しとなる。
労働災害の責任負担

偽装請負の状態でひとたび労働災害が発生すれば、労働者を送り込んだものだけではなく、労働者を受け入れた者も責任を負わされる。責任の負担に当たっては、形式的な契約形式にとらわれず、労働者を受け入れた者は、実態に応じて、当該労働者の雇用者または派遣労働者を受け入れた者などとしての責任を負う。

「派遣と判断された場合は派遣元の責任ではないか」と誤解される可能性もあるが、そもそも派遣であれば派遣元派遣先双方が労働安全衛生法上の責任義務がある。よって法的責任の回避の意図ありととられて、コンプライアンス上の責任も問われる。
税法上のリスク

2004年から導入された外形標準課税制度(資本金1億円以上の法人が対象)において、正当な請負であれば請負契約金額は課税標準に組み入れなくとも良い(=課税対象外にできる)が、偽装請負と判定された場合は請負契約金額全額が報酬給与額と認定されることで課税標準に組み込まれ、結果として税金が重くなる。

なお正規の派遣において、派遣料金における課税標準は75%である。
契約上のリスク「一人親方」も参照

請負契約・業務委託契約は労働契約・雇用契約ではないため、労働基準法労働安全衛生法が適用されない。労働基準法労働安全衛生法は、契約の名称などの名目ではなく、実態をみて「派遣」か否かが決まり法適用の有無が判断されるが、偽装が巧妙化されていたり、労働者が知らぬ間に請負・委託契約という名目で労働させられていた場合、偽装請負であるという立証し、労働基準法等の違反を問うのが難しくなるといえる。
偽装請負の事例
パナソニックグループ

松下電器産業の子会社「松下プラズマディスプレイ」(大阪府茨木市、以降本節上ではMPDP社ないし松下と表記)が、茨木工場で勤務する社員を請負業者側に出向させ、請負労働者に直接業務の指揮をしているのは、労働者派遣法に抵触する恐れがあるとして、大阪労働局が実態調査に乗り出している。

偽装請負に反対したある偽装請負被雇用者はMPDP社に対し正規の雇用形態への変更を求めるとともに内部告発した。それに対し松下側は、当該者の雇用を契約社員に切り替えたがその業務内容は今までに例のないもので、窓のない狭い場所に単独で閉じ込め廃棄する部材をわざわざ修理させ、さらに契約期間満了として雇用を打ち切った。それに対し松下は、当該従業員の希望を尊重したと主張している。この被雇用者はMPDP社に対して裁判を提起した。2008年4月の二審大阪高裁判決では、直接雇用契約の存在を認め、原告側の訴えを認める判決が出された。2009年12月18日最高裁判決では、二審判決を破棄し、原告側逆転敗訴の判決が言い渡された[9]。最高裁判決は偽装請負であったとしてもMPDP社は給与や採用に係わっておらず、原告との間で雇用契約の成立があったとは認められないとした。一方、雇い止めは原告の告発に対する報復であったとし、賠償命令で慰謝料90万円をMPDP社が支払うこととされた[10]
キヤノン

朝日新聞が2006年7月31日付、2006年10月18日付などで複数回にわたって報道。

キヤノンの宇都宮工場や、子会社の大分キヤノンなどで偽装請負が発覚し、2005年に労働局から文書指導を受けた。キヤノングループでは、請負労働者が約15,000人居るとされ、2006年8月1日に偽装請負の完全解消を目指して「外部要員管理適正化委員会」を社内に設置し、派遣・請負労働者のうち数百人を正社員に採用すると報じられた。

しかし、2007年2月18日、キヤノンは新卒採用を優先し、派遣・請負の正社員化は後回しにする方針である事が朝日新聞により報道された。この報道に対し、キヤノン側は2006年中に430名の派遣請負労働者を直接雇用する契約を採用し、決して直接雇用に消極的なわけではない、と反論している。但し、「正社員化」についてはこの反論においても触れられていない[11]。結果的には、派遣・請負社員の正社員化は最長2年11ヶ月の期間社員の契約であることが判明した。契約時には契約期間撤廃を示唆していたが、2010年12月の契約期間終了をもって、契約を更新することなく雇い止めを完了した。2011年1月からは、雇い止めした欠員分を、子会社の大卒正社員を工場労働者に職種転換させて無期限で出向させ、段階的に高卒給にまで降格させることで対応している。
キヤノン宇都宮工場とフジスタッフグループ

キヤノン宇都宮工場にてフジスタッフホールディングス傘下の労働者派遣・業務請負会社アイラインは偽装請負を行なっている。雇用主はアイラインであるにもかかわらず労働者はキヤノンの正社員より教育を受けていた。

当初は請負契約であったものが、2005年5月に労働者派遣契約に変更し、2006年5月に請負契約に変更するといった、雇用形態の変更が複数回行なわれた。

2006年秋には本偽装請負に対して労働局が指導を行なった。


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