偽膜性大腸炎
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この項目では、Clostridium difficile が引き起こす腸炎について説明しています。細菌については「クロストリディオイデス・ディフィシル」をご覧ください。

クロストリジウム・ディフィシル腸炎、偽膜性大腸炎

血液寒天培地中のC. difficile コロニー
概要
診療科Infectious disease(英語版)
分類および外部参照情報
ICD-10A04.7
ICD-9-CM008.45
MedlinePlus000259
eMedicinemed/1942
MeSHD004761
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クロストリジウム・ディフィシル腸炎(クロストリジウム・ディフィシルちょうえん、英語: Clostridium difficile colitis)(CD腸炎)または偽膜性大腸炎(ぎまくせいだいちょうえん、英語: Pseudomembranous colitis)は、芽胞産生性偏性嫌気性細菌であるクロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)の異常増殖の結果として生じる大腸炎である[1][2]。クロストリジウム・ディフィシル関連下痢症 (C. difficile associated diarrhea, CDAD) と呼ばれる炎症性下痢症の原因となる[3]。潜在性のC. difficile 感染症 (CDI) は、しばしばインフルエンザ様症状(英語版)と共通点があり、炎症性腸疾患患者の場合には腸炎の再燃を思わせる[4]。C. difficile が産生する毒素は腹痛を伴う巨大結腸症中毒性巨大結腸症)や下痢を引き起こし、重篤となる場合もある[3]

なお、本感染症の原因となる「クロストリジウム・ディフィシル」は、2016年にクロストリジウム属から、クロストリディオイデス属(クロストリディオイデス・ディフィシル)へと変更となった[5]。このため、クロストリディオイデス・ディフィシル感染症へと呼び変えることがある。
解説

この大腸炎は、抗生物質の投与等で正常な腸内細菌叢が撹乱されて菌交代症が生ずる事で発生すると考えられている[6]。正常腸内細菌叢を掻き乱す事は、C. difficile に増殖の機会を与えていることになる[7]。つまり、この疾患は抗生物質関連下痢(英語版)の一つである[3]

治療法は、非重篤なCDIの場合は、抗生物質を中止するのみである。重篤な場合には、C. difficile に対する抗生物質が投与される。最大で2割の患者で、CDIの再燃が発生する[8]。2011年に米国では29,000名の患者がC. difficile 感染症で亡くなった[9]

旧属名の「クロストリジウム」はギリシア語で「紡錘」を意味するkloster (κλωστ?ρ)[10] から、「ディフィシル」はラテン語で「困難」を意味するdifficile [11]から[注 1]命名された。現在は、Clostridiumに-oides(ギリシャ語で「?の様なもの」の意)を付けた、Clostridioides(クロストリディオイデス属)へと変更されている。 ^ 成長が遅く培養が困難であるため[12]

感染経路は腸内に常在した細菌によるもののほか、環境中に存在している芽胞の経口摂取、不顕感染者や発症者の糞便を介した接触感染とされる[13]。また、入院患者では入院期間とC. difficile の検出率が相関する[13]
徴候と症状

CDIの徴候と症状は軽度な下痢から時に致死的な大腸炎までが含まれる[14]

成人の場合は、臨床予測ルール(英語版)に採用される最良の症状と徴候は抗生物質暴露後の著明な下痢(24時間以内に3回以上の軟便または水様便)、腹痛、発熱(40.5℃まで)、ならびに馬糞に似た特有の糞臭である[15]。重篤な症例では、腸管潰瘍による血性下痢。臨床的には、白血球増多やCRP高値を伴う[3]。入院患者の場合は、「抗生物質投与後の下痢および腹痛」は感度86%、特異度45%であった[16]。この研究では、細胞毒素検出率は14%であり、陽性適中率は18%、陰性適中率は94%であった。

小児の場合は、最適なCDI検出症状は、「1日3回以上の便通が2日以上継続した後の水性下痢」であり「発熱あり、食欲無し、嘔気および/または腹痛あり」であった[1]。しかし、これらの感染症では重篤な大腸炎を起こしていても下痢がほとんどまたは全くない場合もある。
原因詳細は「クロストリディオイデス・ディフィシル」を参照

毒素産生能を有するC. difficileへの顕性感染は、C. difficile 下痢の原因である。

以前はクロストリジウム属とされていたが、2016年にクロストリディオイデス属に変更されている[5]
C. difficile

クロストリディオイデス・ディフィシル
Clostridium difficile
分類

ドメイン:細菌 Bacteria
:フィルミクテス門
Firmicutes
:クロストリジウム綱
Clostridia
:クロストリジウム目
Clostridiales
:クロストリジウム科
Clostridiaceae
:クロストリディオイデス属
Clostridioides
:C. ディフィシル
C. difficile

学名
Clostridioides difficile
(Hall & O'Toole, 1935) Lawson & Rainey, 2016
特徴的な太鼓バチ状の形状が見られるC. difficile 桿菌の走査型電子顕微鏡

顕微鏡下では、細胞の端が膨らんだ特徴的な太鼓バチ状の桿菌として観察される[要出典]。C. difficile はグラム染色陽性で、酸素不在下でヒト体温の寒天培地上で最適成長する。ストレスを与えると芽胞を形成して休眠し、栄養型では生存できない極端な環境でも生き延びることが可能である[8]

C. difficile はヒト大腸内に存在しており、成人の2?5%で検出される[8]C. difficile の拡散経路

病原性C. difficile 株は複数の毒素を産生する[17]。その性質が最も良く判っている毒素はエンテロトキシン(腸毒素、Clostridium difficile toxin A(英語版))とサイトトキシン(細胞毒素、Clostridium difficile toxin B(英語版))である。


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