健康食品
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健康食品(けんこうしょくひん)とは、広く健康の保持増進に資するものとして販売され利用されている食品[1]日本アメリカなどでは「健康食品」に関する法律上の定義は存在しない[1]ため法外な価格、デタラメな表記などが問題になりやすい。厚生労働省は、「法律上の定義は無く、医薬品以外で経口的に摂取される、健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品全般を指す。そのうち、国の制度としては、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たした『保健機能食品制度』がある」と定義している[2]
概要

一般的に、通常の飲食物の形態をとるほか、粉末や錠剤やカプセルなど医薬品と似た形態のものも多い。ビタミンなどの栄養素動植物の抽出物を補給するものはサプリメントとも呼ばれる。

こうした健康食品やサプリメントには効果や安全性に疑問があるものもあり、2013年12月アメリカの研究者らによってビタミンミネラルなどのサプリメントは健康効果がないばかりか、むしろ健康がある可能性が高いと結論付けられた[3]。また、日本医師会は「健康食品」には、成分を濃縮したり、医薬品の成分を含んでいるものも多く、効果を期待しての過剰摂取などによる危険性、服用している医薬品との相互作用での、予期しない健康被害が発生するリスクを警告している[4]ほか、日本スポーツ振興センターは複数のサプリメントの摂取で過剰摂取のリスクの増大や栄養成分表示や原材料表示には書かれていないドーピング禁止物質が含まれている可能性、さらに食品は、医薬品と比較して製品の品質管理レベルが低いため、同じ工場で複数の製品を製造している場合などで、他の成分が混入してしまう危険性などについて警告している[5]

1989年秋から1990年初頭にアメリカ合衆国で、昭和電工が製造した必須アミノ酸であるL-トリプトファンを含む健康食品で被害総数1,500件以上、死者38名を出したトリプトファン事件や、日本で2024年3月に発生した小林製薬の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓病などを発症し5人が製品が原因で死亡の可能性、240人が入院(4月24日現在)する事例が発生している[6][7][8]

2023年8月17日、食品安全委員会は、「健康食品」は安全とは限らない、として以下の通り異例の呼びかけを行った[9]

食品」であっても安全とは限らない。

大量に摂ると健康を害するリスクが高まる。

ビタミンミネラルをサプリメントで摂ると過剰摂取のリスクがある。

「健康食品」は医薬品ではない。品質の管理は製造者任せである。

誰かにとって良い「健康食品」があなたにとっても良いとは限らない。

また、摂った後に体の不調を訴える声や安全性を疑問視する論文も多数ある。2015年度から「機能性表示食品制度」が始まったが、そうした食品による健康被害の訴えが2000年ごろから繰り返しあり、「無承認無許可医薬品」として薬事法(現在の薬機法)違反に問われた製品もある。企画等専門調査会の審議では、各委員から「健康食品」の安全性を問題視する意見が強く出された。一方、特定の製品や成分のデータについて、リスク評価を行えるだけの内容を収集するのは困難な現実も明らかにされている。報告書では、国民の4-6割程度が「健康食品」を摂っていること、女性男性よりも多く摂っていること、摂取した後に体の不調を訴える人が数%おり、発疹等のアレルギー症状や胃部不快感、下痢頭痛めまいなどの症状が報告されていることなどが公開された[10]
日本における健康食品
定義と区分

日本では「健康食品」についての法律上の定義はない[1]。品目分類のHS分類や日本農林規格等に関する法律(JAS法)にも「健康食品」の項目はない[1]

日本の制度では食品医薬品などと区別され、食品はさらに一般食品と保健機能食品特定保健用食品栄養機能食品機能性表示食品)に分けられる[1][11]。いわゆる「健康食品」は一般食品に属する[1]

2003年から2004年にかけて13回行なわれた行政による「健康食品に係る制度のあり方に関する検討会」においての定義は「広く、健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般」とされている[12]。この検討会でも、健康食品から保健機能食品を除いたものを、「いわゆる健康食品」と表現している[12]

日本では健康への働きを表示できる食品として保健機能食品があり、先のように保健機能食品には特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品の3種類がある[11]。1991年に保健機能食品の制度は定められ、まず科学的研究を実施し承認された特定保健用食品(トクホ)の制度と共に出発し、2001年より特定の栄養素を含んでいるという栄養機能食品、2015年より他で実施された科学的根拠をもとに表示ができる機能性表示食品と拡充してきた。またその中でトクホの根拠となった研究の参加者が6人と少数であったり[13]、含有される成分が足りなかったなど[14]、その信頼性についても議論されてきた。

なお、日本で栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品といった表示の製品もあるが機能性の表示が認められない一般食品である[11]
区分詳細は「医薬品#食薬区分」を参照

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律及び食品衛生法によれば、全ての口に入るものは、医薬部外品を含む広義の医薬品と食品に2区分される[15][16]

 広義の医薬品食品
医薬品医薬部外品保健機能食品一般食品(いわゆる健康食品含む)
特定保健用食品栄養機能食品
定義している法律医薬品医療機器等法健康増進法食品衛生法食品衛生法
機能性の表示国の認可により表示可能定められた栄養機能のみ可能不可(記述すると医薬品医療機器等法違反)
販売の規制薬局・薬店のみ(例外事項あり)一般小売店でも販売可能

この表には、2015年からの機能性表示食品は反映されていない。

医薬品、食品ともに厚生労働省の医薬食品局(ただし、食品は、局内部組織の食品安全部)が監督している[17]

なお、錠剤やカプセルなど医薬品類似形態のものは1971年より販売が禁止されていた[18]が、2001年、「医薬品の範囲に関する基準の改正について(医薬発第243号平成13年3月27日)」で基準が緩和され、食品であることを明記すれば販売が容認されることになった[19]
食品の区分の変遷

順に特定の区分、特定の品目において食品として販売できるよう基準が緩和されてきた。

1991年9月
栄養改善法に基づいた特定保健用食品の制度がはじまる。

1996年 市場開放問題苦情処理体制(OTO)により、国内でサプリメント販売が可能となる[20]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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