医療保険(いりょうほけん、Health Insurance)とは、医療機関の受診により発生した入院費や手術費といった医療費について、その一部又は全部を保険者が給付する仕組みの保険である。
高額の医療費による貧困の予防や生活の安定などを目的としている。長期の入院や先進医療による治療などに伴う高額の医療費が、被保険者の直接負担となることを避けるために、被保険者の負担額の上限が定められたり、逆に保険金の支給額が膨らむことで保険者の財源が圧迫されることを防ぐため、被保険者の自己負担割合や自己負担金が定められていたり、予め保障範囲が制限されていたりすることが多い。
目次
1 種別
2 各国の制度
3 日本の制度
3.1 日本の公的医療保険
3.1.1 被用者保険
3.1.2 地域保険
3.1.3 後期高齢者医療制度
3.2 第三者行為による傷病
3.2.1 医療機関の事情
3.2.2 患者の事情
3.2.3 保険会社の事情
3.2.4 保険者の事情
3.3 外国で病気やけがで医療機関を受診する場合
3.4 日本における民間医療保険の状況
3.5 課題
4 注釈
5 脚注
6 参考文献
7 関連項目
種別 OECD各国の私的医療保険種別[2]。
橙は基礎的、水色は基礎分野の補完、緑はオプション的、紫はそれらの重複。 保険証の例(ドイツ)
強制加入の公的医療保険と、任意加入の私的(プライベート)医療保険の2種類に分けられる。
公的医療保険は予め被保険者の範囲が行政によって定められている医療保障制度である。多くの先進国では公的な医療保険制度を用意しているが、対象者の範囲や財源方式については国により異なる[1]。公的医療保険でも引受人が政府機関とは限らず、民間企業が引き受ける国もある(オランダ、スイスなど)。
これに対して、私的医療保険は、任意加入であり、契約者の財産や所得に応じて、複数の保険会社が用意するメニューからプランを選ぶことが可能である。私的医療保険に期待される役割は、国ごとに大きく異なる。なお任意加入の医療保険では、自己の健康状態に不安がある人ほど保険加入のインセンティブを持つため、いわゆる逆選択により健康状態の不良な被保険者集団が形成されるおそれがある。特に手術給付金など、加入者が受診を選択できる保障でこの傾向が強い。また、保険金詐欺を目的に保険加入するといったモラルリスクの問題もある。 日本の医療保険加入者数(2013年)[3]保険者加入者数(万人)
単体医療保険
生命保険の各種特約
がん保険
傷害保険(損害保険)など
各国の制度詳細は「ユニバーサルヘルスケア#各国の制度」を参照
アメリカ合衆国の医療ではマネージド・ケアという民間医療保険が一般的である。マネージド・ケアは大きく分けてHMO、POS、PPOの三種類がある。多くの州では任意加入であるが、マサチューセッツ州では、何らかの医療保険への加入が義務付けられている。
オランダの医療では、短期医療保険は強制保険であるが、公的なリスク調整を行って民間保険会社が引き受けている。
ドイツの医療保険は強制保険であるが、公的保険もしくは私的保険の中から選択することができる。
シンガポールの医療保険は賦課方式を取っておらず、個人単位の積立方式である。
日本の制度
国民健康保険3,831
協会けんぽ3,502
健保組合・共済など3,869
後期高齢者医療制度1,473
(参考) 民間医療保険[4]1,586万契約
「日本の医療」も参照