借家人
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賃貸借(ちんたいしゃく)とは、当事者の一方(賃貸人[注 1]、貸主)がある物の使用及び収益を相手方(賃借人[注 2]、借主)にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することを内容とする契約。日本の民法では典型契約の一種とされる(民法第601条)。

日本の民法は、以下で条数のみ記載する。

概説
賃貸借の意義

賃貸借は当事者間で有償で物を貸し借りする契約類型である。典型例としては、賃貸住宅レンタカーなどがある。

賃借人が賃貸借契約に基づいて目的物を使用収益する権利を賃借権といい、賃貸人がある物を賃貸借契約の目的物とすることを「賃借権を設定する」という。

賃貸借は消費貸借使用貸借と同じく貸借型契約(使用許与契約)に分類される[1][2]。また、不動産賃借権は地上権永小作権と同様の経済的機能を果たすものとしても扱われるが、本来的に債権である点で地上権永小作権とは異なる(ただし、賃借権の物権化により地上権に近い効力が認められるようになっている)[3]
賃貸借の性質

諾成契約
賃貸借は
諾成契約である[4]。日本の民法が不動産賃貸借まで諾成契約としている点については比較法としては異例であるが、現在では日本でも不動産賃貸借の設定には多くの場合において書面が作成される[5]。ただし、借地借家法上の定期借地権(借地借家法22条)や定期建物賃貸借(借地借家法38条1項)の設定については公正証書など一定の方式を要する[6]。なお、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で貸借型契約のうち、使用貸借が諾成契約となり(第593条)、消費貸借も書面(または電磁的記録)ですることを条件にした諾成契約の消費貸借が新設された(民法第587条の2)[7][8]

有償契約
貸借型契約のうち、消費貸借や使用貸借は原則として無償契約とされるのに対し、賃貸借は賃料の支払を要素とする有償契約である[4]

双務契約
貸主側の使用収益させる義務と借主側の賃料支払義務は対価関係に立つ[9]
賃借権の物権化

かつては賃貸人が賃貸借の目的物を譲渡した場合、賃借人は(後述の対抗要件を有しない限り)新所有者に対して賃借権を対抗できないとされ、新所有者が賃借権を承認しないときは、賃貸借契約は終了するとされていた。これがローマ法以来「売買は賃貸借を破る」の法格言によって表されてきた原則である。

しかし、所有と利用の分離が進む現代社会において、賃貸借の中でも特に土地(宅地農地)や建物の賃借権については国民の生活基盤となるものであるが、民法の借主の権利保護は十分とはいえず、借主は土地や建物に投下した資本や労力を回収できないままに追い出される立場に置かれるという問題を生じた[10][3][11]。そのため、日本ではヨーロッパと同じく借主保護立法が重ねられ、宅地・建物については建物保護に関する法律、借地法借家法及びそれらを一本化した借地借家法が制定され、また、農地については農地法など特別法による強化が図られ、その結果、賃貸借には物権に類似した効力が与えられるようになった[10][3][11]。これを賃借権の物権化あるいは債権の物権化という[10][3]。具体的には、借地権の存続期間、借地契約の更新、借地権や借家権の対抗力などを中心とする。

従来、賃借人が借地上の不法占拠者などを排除しようとする場合、債権者代位権(423条)を流用して、賃貸人の所有権に基づく物権的妨害排除請求権を、賃借人が代位行使するという法律構成がとられてきた。しかし、判例は、対抗力のある不動産賃借権については、賃借権の物権化を理由として、賃借権に基づく妨害排除請求権も認める方向にあった(最判昭和30年4月5日民集9巻4号431頁)[12]。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)は対抗要件を備えた不動産賃借権に基づく賃借人の妨害排除請求権や返還請求権を明文化した[7]

一方、アメリカ合衆国オーストラリアではむしろ貸主保護に傾いているといわれている。
各国法制の比較
賃貸借の成立

日本の民法は、賃貸借を意思表示の合致により成立する諾成契約として規定している。外国では一定の賃貸借契約については書面を要求する要式契約として規定している立法例も多い[13]
賃貸借の存続期間
最短期間

日本の民法では賃貸借の存続期間の最短期間について規定を置いていない[14]。.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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最長期間

日本の民法では賃貸借の存続期間の最長期間を50年としている(604条1項前段)。

民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)による改正前は、20年であった。この規定は民法の起草者において20年を超えるときは地上権や永小作権が設定されるものとみており[15]、また、所有権が長期間にわたって賃貸借により拘束されることになれば改良が進まず社会経済上の不利益となる点が理由とされていた[16]

中華民国民法中国契約法では20年である[17]。韓国では堅固建築物などの例外をのぞき20年である[18]

一方、フランス民法典には規定がない。ケベック州民法典では100年である [19]イングランドでは存続期間の定めがない場合契約が無効であるとされるが、存続期間に規制がない。
賃貸借の成立
諾成契約

先述のように日本の民法は、賃貸借を意思表示の合致により成立する諾成契約として規定しているが、現実には日本でも特に不動産賃貸借については書面が作成されることが多い[20][3]。また、借地借家法上の定期借地権(借地借家法22条)や定期建物賃貸借(借地借家法38条1項)の設定については公正証書など一定の方式を要する[6]

農地及び採草放牧地への賃借権設定については原則として農業委員会あるいは都道府県知事の許可を要し(農地法3条1項)、また、農地及び採草放牧地の賃貸借契約について当事者は書面によりその存続期間、借賃等の額及び支払条件その他その契約並びにこれに付随する契約の内容を明らかにしなければならない(農地法21条)。

なお、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で「引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還すること」も契約内容にすることが明確化された[8]
短期賃貸借

処分の権限を有しない者(不在者財産管理人、権限の定めのない代理人など)が賃貸借契約を締結する場合には、以下の期間を超えない範囲でのみ契約をすることができる(602条)。


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