倍数
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数学において、数 a の倍数(ばいすう、:multiple)とは、a を整数倍した数、あるいはそれらの総称である。つまり、… −3a, −2a , −a, 0, a, 2a, 3a, …

を指す。a ≠ 0 ならば、a の倍数は無数に存在する。

a を整数に限ると、a の倍数とは「a で割り切れる整数」のことであり、a の約数(「a を割り切る整数」)と対比されることも多いが、倍数は a が整数でなくても定義できる。

倍数の中で 0 以外は符号の違いだけの組が現れるので、0, ±a, ±2a, ±3a, …

と表すこともある。とくに a が正の整数で負の数を考えない、あるいは本質的でない場合は(正の)倍数としてa, 2a, 3a, …

だけを考えることも多い。

整数全体からなる集合 Z {\displaystyle \mathbb {Z} } を用いると、a の倍数は a Z {\displaystyle a\mathbb {Z} } である。

整数の倍数
番号001020304050607080910
01の倍数001020304050607080910
02の倍数002040608101214161820
03の倍数003060912151821242730
04の倍数004081216202428323640
05の倍数005101520253035404550
06の倍数006121824303642485460
07の倍数007142128354249566370
08の倍数008162432404856647280
09の倍数009182736455463728190
10の倍数0102030405060708090100


2 の倍数は 0, ±2, ±4, ±6, ±8, ±10, ±12, ±14, ±16, ±18, ±20, …

偶数に等しい。


3 の倍数は 0, ±3, ±6, ±9, ±12, …

12 は 1, 2, 3, 4, 6, 12 のいずれの倍数でもある。

12 の正の約数は 1, 2, 3, 4, 6, 12 であることによる。

九九」も参照
数学的性質
整数に関する性質

0 だけ倍数の個数が有限(0 のみ)である。(したがって 0 の倍数を考えることはあまり意味がない)

0 は全ての数の倍数である。

全ての数は自分自身の倍数である。

全ての整数は 1−1 の倍数である。

偶数とは 2 の倍数のことである。偶数は「2つの等しい整数ので表せる数」とも定義できるが、この定義は 2 の倍数であることと同値である。

a が整数のとき、N が a の倍数であることは、a が N の約数であることと同じ意味である。

整数 a, b に対して、b が a で割り切れることと、b の倍数が a の倍数に含まれることは同値である。すなわち、
a ∣ b ⇔ b Z ⊂ a Z {\displaystyle a\mid b\Leftrightarrow b\mathbb {Z} \subset a\mathbb {Z} }

2 以上の整数はある素数の倍数である。

素数の倍数全体は、±1 以外の整数全体に等しい。
(→素数が無数に存在することの証明#フュルステンベルグ

a の倍数かつ b の倍数であるものを a と b の公倍数という(3個以上の場合でも同様)。ab は a と b の公倍数である。公倍数のうち最小の正の数を最小公倍数という。

a と b の公倍数は a と b の最小公倍数の倍数である。


a の倍数の倍数は a の倍数である。

P, Q が 共に a の倍数ならば、kP + lQ(k, l は整数)は共に a の倍数である。

特に、P ± Q は a の倍数である


有理整数環 Z {\displaystyle \mathbb {Z} } で二項関係を x − y ∈ a Z {\displaystyle x-y\in a\mathbb {Z} } で定義すると、これは同値関係になる。

その商集合 Z / a Z {\displaystyle \mathbb {Z} /a\mathbb {Z} } は加法に関するアーベル群である。(→同値関係#商集合の例


整除性の判定法

整除性の判定法[1](せいじょせいのはんていほう, : divisibility rule, : critere de divisibilite, : признаки делимости, : 整除??)は、ある整数を別の整数で割った商が整数となるか(余りがゼロであるか)を、割り算を直接実行することなく判別する裏技である。倍数の判定法ともいう[2]

様々なN進法における倍数判定の方法として、以下の方法が挙げられる。
一の位の数で判定
一の位がMであればMの倍数、という方法。
各桁の和(数字和)で判定
一桁の最後の数(10-1)の倍数は、各桁の和が10-1に収まれば10-1の倍数、という方法。六進数での5の倍数、九進数での(2、4、)8の倍数、十進数での(3、)9の倍数、十六進数での(3、5、)15の倍数、二十五進数の(2、3、4、6、8、12)24の倍数など。
下P桁で判定
下二桁がabであればMの倍数、下三桁がabcであればMの倍数…、という方法。
11が合成数の場合
11となる数が合成数の場合、二桁数abがあれば a-b または b-a の差が11の約数Mになっている場合に、Mの倍数となる、という方法。例:八進数での9(= 118)の倍数(32 = 11)、二十進数での3の倍数と7の倍数(3×7 = 11)、三十二進数での3の倍数と11の倍数(33 = 11)など。
一の位をa倍
乗算表の二桁数abから逆算して、一の位bをa倍する方法。十進数における7の倍数(7×3 = 21)、十二進数における5の倍数(5×5 = 21)、十六進数における11の倍数(3×B = 21)、四十進数における33 の倍数(3×3×3×3 = 21)など。乗算表の最後の数{(10-1)2 = a1}の場合は、一の位をa倍して、「整数第二位以上」と「一の位をa倍」の差をa1で割って余りが0になればa1の倍数、という方法。十進数での34 = 81の倍数など。
「整数第三位以上」に「下二桁をa倍」を加算
「整数第三位以上」に「下二桁をa倍」を加算し、その和をMで割って余りが0ならばMの倍数、という方法。六進数での15(1110)の倍数、十進数での35 = 243 の倍数など。

素因数が複数になる場合には、上記の倍数判定方法を組み合わせることになる。

とりわけ、六進数十進数では、素因数2, 3, 5が含まれる倍数の判定が容易である。これは、六進数では10 = 2×3 = 5+1 となり、十進数では 10 = 2×5 = 32+1 となり、"10"の素因数と"10-1"の素因数に2, 3, 5のどれかが含まれているからである(その上に10の素因数も複数ある)。例えば、23×32×5 = 1400(6) = 360(10)の倍数も、六進数だと「下三桁が200, 400, 000のどれかで、各桁の和が5の倍数」で計3種類(1400, 3200, 5000, 10400…)、十進数だと「一の位が0、整数第二位?第三位で4の倍数が現れ、各桁の和が9の倍数」で計2510種類(360, 720, 1080, 1440,1800,2160,2520…)となる。
十進数での例

十進数での倍数判定法がいくつか存在する。

1 - 9割る数
M整除性の判定法(倍数の判定法)具体例・備考Mの倍数 一覧
000(OEIS)000
1任意の整数は1で割り切れる
2最後の桁が偶数(0、2、4、6、8)ならば2で割り切れる1294:最後の桁4は偶数である。割り算を実行してみれば分かるが、1294は2で割り切れる[3]The nonnegative
even numbers:
a(n) = 2n.
(A005843)
3各桁の数を合計したものが3で割り切れれば、3で割り切れる405の場合、4+0+5=9、これは3で割り切れるから405は3で割り切れる[3]a(n) = 3*n.
(A008585)
各桁に現れる1, 4, 7の数を数える。次に各桁に現れる2, 5, 8の数を数える。両者の差が0ならば3で割り切れる16,499,205,854,376:1, 4, 7は合計4回現れる。2, 5, 8は合計4回現れる。4-4= 0、∴3で割り切れる
4最後の2桁が4で割り切れれば4の倍数である40,832:最後の2桁である32が4で割り切れる[3]Multiples of 4.
(A008586)
10の位が偶数の場合、1の位が0, 4, 8
10の位が奇数の場合、1の位が2, 6ならば4の倍数である40,832:10の位の3は奇数で、1の位が2である
10の位に2を掛け、それに1の位を加える。それが4で割り切れればもとの数は4の倍数である40832:2×3 + 2 = 8、これは4で割り切れるから40832は4の倍数
51の位が0または5[3]Multiples of 5:
a(n) = 5 * n.
(A008587)
62と3で同時に割り切れる1458:1 + 4 + 5 + 8 = 18、∴3で割り切れる。最後の桁2は偶数であるから2で割り切れ、よって6で割り切れる[4]Nonnegative
multiples of 6.
(A008588)
10の位より上の数に4を掛け、1の位の数を加える。この操作を1桁になるまで続け、それが6で割り切れればもとの数は6の倍数である354: 35 × 4 + 4 = 144,14 × 4 + 4 = 60,6 × 4 + 0 = 24,2 × 4 + 4 = 12,1 × 4 + 2 = 6,よって354は6の倍数
7下から3桁ごとに区分する。下から奇数番目の区分は+1倍、下から偶数番目の区分は-1倍して合計する。これが7で割り切れれば7の倍数1,369,851:851 ? 369 + 1 = 483、これは7で割り切れる。よって1,369,851は7の倍数[4]Multiples of 7.
(A008589)
下から6桁ごとに区分する。各区分を合計する。これが7で割り切れれば7の倍数16,498,888:16 + 498888 = 498904、これは7で割り切れる。以下略
1の位に2を掛ける。10以上の位からそれを引く。結果が7で割り切れれば7の倍数483:48 ?(3×2)= 42、7で割り切れる。
1の位に5を掛け、10以上の位に加える。結果が7で割り切れれば7の倍数483:48 + (3 × 5) = 63,7で割り切れる。
最上位の桁の数に3を掛ける。それに上から2桁目の数を加える。こうして得られた数を上位2桁と置き換える。2桁になるまで続け、7の倍数に達したならもとの数は7の倍数483:4×3 + 8 = '20'、20を48に置き換える。203:2×3 + 0 = '6'、6を20に置き換えます。63:6×3 + 3 = 21、7で割り切れる
下から数えて3桁以上の数に2を掛ける。これに下2桁を加える。2桁になるまで続け、7の倍数に達したならもとの数は7の倍数483,595:95 +(2×4835)= 9765、65 +(2×97)= 259、59 +(2×2)= 63、7で割り切れる。
(6, 12, 18…桁の数に有効)下の桁から順に1, 3, 2, -1, -3, -2を掛け(周期性あり)、合計する。得られた結果が7で割り切れれば、7の倍数483,595:(4 × (-2)) + (8 × (-3)) + (3 × (-1)) + (5 × 2) + (9 × 3) + (5 × 1) = 7,7で割り切れる
8100の位が偶数の場合、下2桁が8で割り切れれば8の倍数Multiples of 8.
(A008590)
100の位が奇数の場合、下2桁に4を加えて8の倍数になればもとの数は8の倍数352:100の位3は奇数で、下2桁の52に4を加えれば56、これは8で割り切れる
下から数えて2桁以上の数に2を掛ける。これに下1桁を加えて8で割り切れれば8の倍数56:(5×2)+ 6 = 16、8で割り切れる。
下3桁が8で割り切れれば8の倍数34,152:152は8で割り切れる[5]


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