修正ユリウス日
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ユリウス通日(ユリウスつうじつ、Julian Day、JD)は、ユリウス暦[注釈 1]紀元前4713年1月1日、すなわち西暦 -4712年1月1日の正午世界時)からの日数である[1]。単にユリウス日(ユリウスび)ともいう。時刻値を示すために一般には小数が付けられる。

例えば、協定世界時(UTC)での2024年5月10日12:31のユリウス通日の値は、おおむね2460441.02である。
ユリウス通日

ユリウス通日はユリウス暦紀元前4713年1月1日先発グレゴリオ暦では紀元前4714年11月24日、西暦 -4713年11月24日)の正午世界時)を元期(=0日目)とし、の単位で数える。ユリウス通日は天文時の伝統に従い、日の起点は正午である。したがって、世界時正午に日数(の整数部分)が増加する。

ユリウス通日は二時点の間の日数や秒数を計算するのに便利で、天文学や年代学(英語版)などで使われている。小数を付けることにより時・分・秒数(と更に、その小数)を表現することができる。
起点が正午である理由詳細は「天文時」を参照

ユリウス通日は、天体観測に便利なように正午を起点にしている。つまり、天体観測は通常は夜間に行われるので、夜の0時(正子)の時点で日付が変わる(ユリウス通日の整数部分が増加する。)のは、不便で間違いも起こりやすい。このためユリウス通日は、正午の時点で日付が変わるように決められたのである。この慣習は「天文時」の時刻系の伝統であり、クラウディオス・プトレマイオス (2世紀頃)に始まるものである。

正午を一日の起点にする理由はもう一つある。均時差を捨象すれば、太陽の南中を観測することにより、その地点の地方時での正午は容易に知れる。これに対して正子を認識することは、正確な時計が存在しない時代には困難である。

なお、天文時の日の起点を正午とする時刻系は通常一般の時刻系と紛らわしいので、1925年1月1日からは天文学ではユリウス通日を除き、「天文時」を廃止し、正子真夜中)を日界(1日の始まり、かつ、1日の終わりの時点)とする「常用時」に統一された[2][3]。しかし、ユリウス通日については、1925年以降も継続して正午を起点としている[2][4]。詳細は「天文時の廃止の経緯」を参照
換算計算サービス

日本の国立天文台の暦計算室のページで、グレゴリオ暦からもユリウス暦(1582年10月4日以前)からも、秒単位でユリウス通日と修正ユリウス日が簡便に換算できる[5]。結果は小数5桁で表示される。

また、アメリカ海軍天文台(USNO)のページでは、0.1秒単位の換算が可能であり[6]、結果は小数6桁で表示される。
ユリウス通日の変種
Julian Day Number (JDN)

日を整数で数える値を Julian Day Number (JDN) と呼ぶ。その日(この場合の「日」は「常用時」における日、すなわち正子から正子までの日である。)の正午世界時)のユリウス通日(JD)に等しい。整数値であるから、JDNには時刻の概念はない。

例えば、協定世界時(UTC)での2024年5月10日の JDN は、2460441である。
修正ユリウス日(MJD)

修正ユリウス日(Modified Julian Date:MJD)は、ユリウス通日から2 400 000.5を差し引いたものである。ユリウス通日の2 400 000.5 は、1858年11月17日正子UT に当たるので、この時点を元期としていることになる。常用時と同様に世界時正子に日数が増加する(ユリウス通日とは異なる)。

例えば、協定世界時(UTC)での2024年5月10日12:31の MJD は、おおむね60440.52 である。
修正ユリウス日が導入された理由

ユリウス通日では桁が多すぎて不便な場合に、MJDが使われる。元々は、整数部の桁数を5桁に収めるように、スミソニアン天体物理観測所(SAO)の宇宙科学者が1957年に考案したものである[7]。これはソ連のスプートニクの軌道を追跡するために用いられたIBM 704コンピュータの記憶容量が小さく、桁数を少なくする必要があったためである。

ユリウス通日の値は19世紀後半(1858年11月17日)から22世紀前半(2132年8月31日)までは、2 400 000台の数値であり、現代における利用には整数部が5桁のMJDで十分に実用的と考えられたのである。
リリウス日(LD)

Lilian Day number(LD、リリウス日)はグレゴリオ暦使用開始日の1582年10月15日を第1日とした通算の日数で整数値のみを取る(小数を付することはない)。また、0(ゼロ)日から始まるのではないことに注意が必要である。

復活祭の日付を決定するために使われる(コンプトゥスを参照)。ユリウス通日から2 299 159.5を差し引いて、小数部を切り捨てたものである。2000年01月01日のリリウス日 = 152 385 である。

例えば、協定世界時(UTC)での2024年5月10日のリリウス日の値は、161282である。
Chronological Julian Day(CJD)

Chronological Julian Day(CJD)は、ユリウス通日に0.5を加え、かつタイムゾーン(time zone)を考慮したものを指す。したがって標準時(地方時)の正子に日数(の整数部分)が増加する。日本ではCJDはほとんど使われない。

CJDを使用する環境では、CJDとJDとの区別を明確にするために、JDをAstronomical Julian Dateと呼んで、AJDと略称することがある。
ユリウス通日の考案

ユリウス通日は1583年にスカリゲル(ジョゼフ=ジュスト・スカリジェ(英語版))(1540年-1609年)によって考案された。スカリゲルは1582年のグレゴリオ暦改暦によって年代学(英語版)における日付けの計算が煩雑かつ混乱してしまうことを予想して、ユリウス暦グレゴリオ暦双方での日付の換算や日数計算の便のためにこれを考案した。

スカリゲルが基準にした紀元前4713年は、以下の3つの周期の第1年目が重なる年であった。

太陽章(英語版)(28年) - 日付と七曜が揃う周期

太陰章(メトン周期)(19年) - 月相(月の満ち欠け)と日付が揃う周期

インディクティオ(15年) - ローマ帝国での徴税額の査定更正周期

以上の3つの周期が揃うには7980年 (28,19,15の最小公倍数)を要する。これをユリウス周期という[8]。ただし、ユリウス通日そのものは永遠に続く値であって周期性があるわけではないので、「周期」の意味はもはやなくなっている[9]

その後、天文学者ジョン・ハーシェル1849年の著書Outlines of Astronomyで日数や時間の計算にユリウス通日を利用する方法を考案した[10]。これが広まり、世界中の天文学者が日数計算にユリウス通日を用いるようになった。


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