信用照会端末
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INFOXで使用されている東芝テックの信用照会端末 CT4100

信用照会端末(しんようしょうかいたんまつ、英語: Credit Authorization Terminal)とは、クレジットカード加盟店で、カードの有効性を確認するため、カードの情報をオーソリゼーション(信用照会)を行うセンター等に問い合わせし、続けて決済する装置である。
概要

日本において、CATおよびその土台となるネットワーク網CAFISが登場する1980年代前半まで、クレジットカードを用いて加盟店で買い物する際は、インプリンタにクレジットカードと複写式売上伝票を挟み、カードの凸凹状に刻印された番号や会員名義など(エンボス)を店員が転写し[1]、金額・署名の記入後に、売上を取り纏めるカード会社(アクワイアラ)へ郵送しなければならなかった。

しかしながら、この手法では偽造クレジットカードなど不正なカードか否かは、高額取引による電話承認を行わなければ見抜けない事(重過失が無く不正使用された場合はカード会社側の負担となる)と、アナログ的なやりとりに時間を要するため、百貨店などでの高額商品の購入程度にしか、クレジットカードは普及せずにいた。

しかしながら情報通信技術の進捗により、クレジットカード発行会社(イシュア)各社のホストコンピュータを横断的に接続したCAFISと、そこへオンライン通信を行う事で、カードの有効性が即時確認できるCATが登場したことにより、カード決済時のセキュリティと利便性は大幅に向上することになり、バブル景気の消費拡大のタイミングも合わさり、クレジットカード加盟店のインフラストラクチャーは一挙に拡大する事になる。その後、1990年代から現在にかけて、書店飲食店美容院などの専門店や、コンビニエンスストアスーパーマーケットなど加盟店が飛躍的に増加し、日常生活に浸透したクレジットカードの利用には、必要不可欠なインフラストラクチャーとなっている。

当初は、内蔵モデム一般加入電話回線交換方式で、ダイヤルアップ接続する形態しかなかったため、CAT端末を使用しても信用照会には2分近く時間を要したが、1990年後半からは専用線ISDN回線、DoPaパケット通信)、2000年代からはブロードバンドルーター経由でADSL光ファイバーブロードバンドインターネット接続し、独自のIP-VPNでデータ暗号化を保ちながら高速通信する方式が登場し、加盟店のランニングコストの低減に貢献している。

ちなみに、端末の入手・設置にはアクワイアラあるいはクレジットカード決済代行会社と加盟店契約を締結することで、購入・貸与を受けることができるが、譲渡は禁止されている。

2000年前後にはキャバクラなど風俗色の強い店を中心に、旧型の端末を分解し基板上にスキマー機能を取り付ける細工を施し、実際に使用した真正なカード番号を基に、偽造クレジットカードを作成して不正使用する事件が発生したことがあった[2][3]。このため、全てのCAT/CCT端末には、機器分解の痕跡が確認できる様に「封印シール」が貼られている。

なお、百貨店・ショッピングセンター・コンビニエンスストア・スーパーマーケット家電量販店など各種量販店では、本項で述べるCAT/CCT端末ではなく、POSレジに機能が組み込まれている。

商品小計の画面でクレジットカード決済のキーを選択し、カードリーダーにカードを読み取らせ、支払金額や支払回数を入力して実行キーなどを押すと、CAFISやハウスカードのオーソリゼーションシステムへ接続し、売上承認となった場合は商品の売上と共にクレジットカードの情報がPOSに記録され、発行される商品レシートにカード売上票もあわせて印刷されるようにしている店舗が多い。これは各店舗のPOSシステム内部にCAT/CCT装置に相当するシステムが構築されており、ストアコンピュータと共用の専用線で接続されているためであるが、回線が専用線であることもあり売上承認のレスポンスが早く、操作も簡便である等の利点が多い。同様の仕組みはJRみどりの窓口マルスや航空会社の発券端末にも組み込まれている。

上記量販店における決済は2020年初頭まではPOSレジに付いている磁気リーダー(磁気スワイプ用の溝)にカードをスワイプする磁気決済のみで対応していたが、セキュリティ上の観点などから2020年3月までに店側の決済端末のIC義務化が打ち出され、従来のPOSレジに汎用のICリーダー(東芝TEC製のテンキー等)を接続したり、後述のCCT端末の内POS接続の機能がある端末自体を有線で接続して対応する店舗が多く見られた。POSレジが古く現行の連動型CCT端末に対応していない場合は、CCT端末を単独で設置したり、CCT端末導入と同時にPOSレジ自体入れ替えた店舗等もある。

近年日本でも利用されるようになったクレジットカードの「タッチ決済」は、VerifoneやCastles Technologyといった海外メーカー製端末では古くよりIC、磁気、タッチ決済の3面同時待ちが主流となっていたが、パナソニック、東芝テック、オムロンといった日本製端末では「NFCペイメント」や「コンタクトレス」等「クレジットカード」とは別のコマンドとなっている2面待ち(クレジットコマンドではICと磁気のみ)が主流であった。

2022年頃より、国内各社も3面待ちが可能な新型端末をリリースする動きが活発になった。タッチ決済が別コマンドの従来の国内端末の場合、従業員側が操作方法や店自体が対応している事実を把握していなかったりといったトラブルも見受けられたが、3面待ち端末の普及でこれらの改善が期待される。[4][5][6]
種類
CAT (Credit Authorization Terminal)

NTTデータが運営するCAFISと接続しているクレジットカード処理端末で、日本独自の規格[7]である。クレジットカードの磁気ストライプを読み込み、CAFISを経由してクレジットカード発行会社へオンラインで問い合わせを行う。クレジットカード会社からの応答を元に、伝票を印字する。なお、CATには以下の種類がある。
CAT
標準CAT、旧型CATとも呼ばれる。認証のみオンラインで行うが、売上決済機能がないため別途加盟店からカード発行会社へ伝票送付等の対応が必要。旧型の端末であるため、ICカードを読み取る機能がない。
S-CAT (Simple CAT)
簡易CATとも呼ばれる。CATをさらに簡易型としたもので、伝票印字機能がない。カード発行会社からの承認番号をディスプレイに表示する。
G-CAT (Gathering CAT)
CATの問題点を解決するために、1993年に開発されたもので[7]、認証と同時に売上決済処理が可能な端末[8]。1998年よりJ-Debitにも対応している。ただし、ICカードを読み取る機能がない。なお、CAT・G-CATあわせて2003年11月末時点では、約40万台利用されていた[8]
CCT (Credit Center Terminal)JET-S端末 (Panasonic ZEC-15)

各社独自のクレジットカード情報処理センターと接続し、それを介してCAFISと接続している信用照会端末。日本独自規格であるCATとは異なり、世界標準化された規格である。後発の規格であるため、G-CATと同様に認証と同時にギャザリング(売上決済処理)が可能である。

2002年以降に導入された機種では、ICクレジットカードをPINパッドに差し込み、署名の代わりにテンキーで入力した暗証番号で認証する機能が搭載されているものが多く、FOMA無線パケット通信により、可搬ができるハンディ端末も存在する[9][10]。以下に、主なCCTの種類を記述する。

製造メーカーとして、NECインフロンティア[10]パナソニック(旧:松下通信工業)、東芝テック[9]の3社が複数の決済センターに対応した機種(基本的な外観・操作手順は共通)をアクワイアラやクレジットカード決済代行会社を通じて加盟店へ発売・リースしている。


INFOX(インフォックス)
NTTデータが運営するINFOX-Netと接続している端末で、1999年にサービス開始された[11]。日本国内では現在三井住友カードVJA各社、クレディセゾンイオンクレジットサービスをメインの売上取り纏め会社(アクワイアラ)とする加盟店に多く設置されている。加盟店契約のうえ、端末にFeliCaリーダ/ライターを接続する事でiDSuicaショッピングサービス決済などほとんどの非接触式電子マネーに対応する。製造メーカーは上記3社のほかに、決済ネットワーク運営元であるNTTデータ製の端末も存在する。2019年11月現在では、約81万台設置されている。
JET-S(ジェッツ)
ジェーシービー子会社の日本カードネットワークが運営するCARDNETと接続している端末で、1996年にサービス開始された。日本国内では現在ジェーシービー三菱UFJニコスUCカードトヨタファイナンスをメインの売上取り纏め会社(アクワイアラ)とする加盟店に多く設置されている。ロイヤルホールディングス各店、佐川フィナンシャルのeコレクトなどで使用されている。製造メーカーは上記3社の他に日立オムロンターミナルソリューションズ(旧:オムロン)、富士通と、インジェニコが製造する小型モデル「JET-MOBILE」もある。(JET-MOBILE旧型は富士通)[12]加盟店契約のうえ、端末にFeliCaリーダ/ライターを接続する事でQUICPaynanacoの決済に対応する。2019年11月現在では、約82万台設置されている。
C→REX(シーレックス)
JTBが運営する端末で、独自網を経由してCARDNETと接続している[13]。JTBグループ販売店(旅行代理店窓口)、JTB協定あるいは全国旅館生活衛生同業組合連合会加盟のホテル、旅館、観光地の売店(土産物店)、ダイヤスタンプ加盟店を対象に営業活動を行っており、とりわけJTBのカウンターでは全てこの端末が使われ、ジェイデビットにも対応している。レシートのレイアウト(印字内容)は上部のロゴ以外JET-S端末とほぼ相違が見られないが、基本的に加盟店名が半角カタカナでしか表記できないJET-S端末に対し、C→REX端末では全角の漢字、かな表記が可能となっている。2019年11月現在では、約1万台設置されている。2023年夏以降、端末を全てをsteraに置き換えることを発表しており、2024年3月までに既存のC→REX端末の取り扱いを終了する予定。
ビューカードSuicaショッピングサービス決済端末
JR東日本グループ駅ナカルミネエキュートアトレ、ブックガーデンなど)やJR東日本ホテルズ、駅レンタカー東日本、ジェクサースポーツクラブなどに設置されている。INFOXと使用機種は同一であるが、クレジットカードのアクワイアラについてはJR東日本みどりの窓口と同じSMC/UC/VIEWであり、ビューカード以外はINFOX網を経由する。2003年のSuicaショッピングサービス試験運用当初から2006年頃までニューデイズではクレジット決済機能を省いた専用端末を使用していた(POSレジ直結のR/Wに移行)。現在もPASMO電子マネーに加盟する鉄道駅構内(フランチャイズ)のコンビニエンスストアや、かつてのam/pm(現在はファミリーマートに転換したことによりPOSレジ直結化、運営にPASMO各社が関わっていない店舗ではR/WのPASMOロゴの上にSuicaのロゴを貼った店舗もある)などではクレジット決済を省いた同じ端末(POSレジ連動)が使用されている。
SG-T
VISAインターナショナルとクレディセゾン、ユーシーカードダイエーOMCDCカードミリオンカード住友クレジットサービスらの合弁で1995年に設立された株式会社ジー・ピー・ネットが運営するGPnetと接続している端末。日本国内では現在の三菱UFJニコスを売上取り纏め会社とする加盟店に多く設置されていた。製造メーカーは日立オムロンターミナルソリューションズ(旧:日立製作所)、フランスのインジェニコ[14]。日立製端末については、端末にFeliCaリーダ/ライターを接続する事でSmartplusVisa TouchEdyの決済に対応する。2016年3月にサービスを終了し、J-Mupsなどへの移行が行われている。
J-Mups(ジェイマップス)
Joint Multi Payment Processing System。三菱UFJニコス(MUN)とJR東日本メカトロニクス(JREM)が共同開発し、MUN→JCN(MUNも出資)およびJREMで運営する決済サービスで、2012年8月より開始。インターネット接続を介したクラウドコンピューティング上にCCTの機能を置き、高速なクレジット売上承認を可能とするとともに柔軟な拡張性を有している。加盟店契約によりクレジットカードのほか、交通系電子マネーiD楽天EdyQUICPaynanacoWAONに対応。2015年7月より導入されている端末はパナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)とJREMの共同開発であり、5インチのフルカラータッチパネルディスプレイで操作を行う。2024年2月末でサービス終了、3月末を以ってJ-MupsセンターはCARDNET-Cloudセンターに統合される。[15]
CREPiCO(クレピコ)


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