信用情報
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金融商品、企業、政府については「信用格付け」をご覧ください。

信用情報(しんようじょうほう)とは、個人の年収や住宅情報、勤務先等の属性情報、ローンや公共料金等の支払い情報のこと。
概要

信用情報機関」と言う基盤が整備され、各々積極的(有効的)に活用されている国は、欧米や日本などの先進国が主となっている。ドイツに戦前から存在したSchutzgemeinschaft fur allgemeine Kreditsicherung は社会問題になった。

中華人民共和国では上海市北京市香港など沿海都市部の富裕層(十数万人程度)の情報を中心とした信用情報機関(民間企業)が数社ある程度であり、富裕層以外は中国銀聯デビットカードが普及している程度である。「社会信用システム」も参照

ビッグデータを解析することでより高精度の信用情報を得る手法も登場している[1]
アメリカ合衆国
概要

アメリカ合衆国では、支払い情報(履歴)である信用履歴(クレジットヒストリー、英語: credit history)及び、信用履歴によって計算されるクレジットスコア(英語: credit score)は、生活を大きく左右する指標となっている[2]クレジットカードの取得の可否やローン審査における金利への影響、部屋の賃貸、さらには就職活動にも影響を与える[3]。クレジットヒストリーが無ければ、いくら現金を持っていても信用してもらえず、アパートの部屋は借りられないかもしれない[3]。クレジットスコアが低ければ、より高率のローン金利に甘んじなければならないかもしれず[2]、就職には困難が伴うかもしれない[3]

アメリカが個人情報を重視するのは、国外からやってくる移民に関してローンや賃貸などで信用していいものかの判断のため、人種人権上の配慮から客観的な数値であるクレジットヒストリーによって個人の信用力を格付けし、判断していると考えられる[3]。信用情報はFair and Accurate Credit Transactions Act(FACT法)「公正かつ正確な信用取引のための法律」で保護される[4]

信用力の高い人たちはプライム(優遇)層、信用力の低い層はサブプライム(サブ=下の)層と呼ばれる。サブプライム層は住宅ローンなどが組めないことから、サブプライムローンと呼ばれる商品が登場した。
クレジットヒストリーとクレジットスコア

クレジットスコアは、クレジットヒストリーを元に、数式によって計算し、偏差値にしたものであり、個人の信用力を数値で格付けする。典型的には、300?850(スコア会社によっては300?900)の範囲で、例えば300?620は「平均以下」、621?700は「平均的」、701?760は「良好」、761?850は「優良」とされ、スコアを使用する金融機関などからの報告を基に毎日更新される。クレジットスコアは下記の要素が数値化され、一定の計算式に代入されるが、その計算方法は信用情報処理各社の秘密で、また用途別にいくつかの異なるバージョンも提供されている。なお、ローン残高もクレジットカードの使用残高もすべて「借金」と見做されるが、当然のことながら住宅や自動車ローンのように担保付の借金とそうでない借金の残高は同じ重みではないと考えられる。以下のパーセンテージはクレジットヒストリーの各要素のクレジットスコア計算に対する公表されている重みの代表例。

延滞返済履歴の有無(金額、頻度、期間、時期、通常過去7年分) - 35%

現在の信用枠の実際の使用割合(借金残高÷与信額、小さいほど有利)と 未使用信用枠(与信額?借金残高、高額ほど有利) - 30%

最も古い現存口座開設以来の期間(長いほど有利) - 15%

最近実際に供与された信用の種類(クレジットカードのような無担保、或いは住宅・自動車ローンなどの担保付信用) - 10%

最近のクレジットスコアの照会頻度と実際に開設したクレジットカードや住宅・自動車ローンなどの口座数(通常過去2年間の回数、信用照会だけの「ソフト」と実際に信用供与を行う「ハード」で影響度が異なる。短期間に頻繁に照会があると借金先を探しまわっていると見做される) - 10%

クレジットスコアの提供元はEquifaxエクスペリアン (Experian)、トランスユニオン(英語版)の大手3社の寡占状態にある。スコアリングシステムは、フェア・アイザック(英語版)のものが使用される[2]。上記の要素で分かるように、年齢や収入・資産状況や就職状態は考慮されず、「どれだけ約束通り確実に返済しそうか」に重点が置かれる[3]

クレジットスコアの照会は、金融機関に限らず、あらかじめスコア会社が承認した人・会社なら本人の承諾を基に(料金を払って)誰でもできるので、例えば就職時に雇用者が応募者のスコアを調べたり、アパート入居者希望者に対する審査などにも使われることがある。自動車や住宅ローンでは低いスコアだとより高金利に甘んじなければならないことが多いだけでなく、貸付そのものを断られることさえあり、また与信限度が高く特典も多い種類のクレジットカードは明示的に「スコア××以上の人のみ」としていることもある。このように、クレジットスコアは生活を大きく左右するため、経済意識の高い消費者はクレジットヒストリーを傷付けず、クレジットスコアを高めることに注力する[3]

2016年に発覚した、ウェルズ・ファーゴ銀行が顧客に無断かつ無通知でクレジットカード口座などを開設した事件では、顧客は直接的な金銭的損害は被らなかったが、不正・不要な照会と口座開設によりクレジットスコアが低下して、将来に渡って不利益を被る可能性があることが問題となった。クレジットスコアの照会は、本人の姓名社会保障番号生年月日・現住所(稀に過去の住所)の個人情報を基に検索される。

上記のように、クレジットスコア自体にはクレジットヒストリー以外の、収入・資産状況は反映されないが、実際の金の貸し手にとってはクレジットスコアはあくまでも貸金の可否・額・利率・条件などを決める判断材料の一つであり、貸し手独自の基準で状況・用途に応じて収入・資産・就職状況を応募者に申告させるのが通常である。例えば、新規クレジットカード(与信枠数百?数万ドル)や自動車ローン(数千?数万ドル、現車が担保登記される)では大まかな年収と持家かどうかを申告する程度だが、住宅ローン(数万?数百万ドル)では、最近の給与明細書や銀行口座の月次報告書などの写しや、場合によっては前年度の所得税納税申告書や現在所有する登記物件(自動車、不動産)の証書や徴税通知の写しの提出を要求することもある。申込者のクレジットスコアが低ければ、審査はより厳格になり、要求される証明書の類も増え、より高金利になることもある。当然のことながら性別・人種・肌の色・出身国・宗教・性的志向などを問うたり、判断材料に使うことは違法である。家族構成(例えば既婚・未婚)も判断材料には使えないが、例えば本人の信用だけでは基準に満たず家族を保証人連帯債務者にする場合は、その家族保証人・連帯債務者のクレジットスコアも審査の対象になる。

アメリカ合衆国の自動車ディーラーでの自動車購入は、新車でも在庫現品をその日のうちに持ち帰り(乗り帰り)が原則で、平日は仕事を終えてから来店する客が夜遅くに購入手続きをすることが少なくなく、またアメリカには東部時間からハワイ時間まで5?6時間の時差があるので、クレジットスコアの照会(と実際のローン会社)は、ほぼ24/7(一日24時間、週7日)で対応している。全額即時現金払いは別として、例えば自前ローンを申し出ても、当日は審査を基にとりあえず千ドル程度の手持ち小切手の手付金だけで持ち帰りが可能で、1週間以内に残金を持参するかそのまま残額をディーラーの提携ローン会社のローンに自動的に移行する契約が一般的なために、信用審査が必須。また最近では、インターネットで1日24時間いつでもクレジットカードの申込みができ、その場で与信限度額が与えられるのも、このおかげである(以前はとりあえず小額の与信限度額が与えられ、後日正式な額が通知されることもあった)。

クレジット報告書には、クレジットスコアの他に、本人の姓名・生年月日と社会保障番号や現住所と過去の住所などの個人情報、現在有効なクレジットカードやローンの口座すべてについてそれぞれの開設した時期・与信限度・現在の残高・返済状況などが記され、また現在の担保登記(自動車ローンの現車や住宅ローンの対象不動産)や裁判所の破産判決(再建型破産(第13章)は過去7年分、清算型破産(第7章)は過去10年分)などの公的公開経済情報がある場合は、それらも記載される。

本人は、1年に1度は自分のクレジット報告書をスコア会社に無料で請求できるほか、最近ではクレジットカード会社が自社が使用しているスコア会社からの数字や報告書全文を、カード会員にウェブサイトで週1回?月1回程度の更新頻度で自由に閲覧させるサービスを行っている(この閲覧はクレジットスコアを低下させる「照会」とはならない)。
セキュアド・クレジットカード

新しく移民して来た人や社会に出たばかりの若年者は、当然のことながらクレジットヒストリーがなく、或いは一度破産などでクレジットヒストリーを棄損した人は、クレジットヒストリーを(再)構築するためには、何らかの信用(例えばクレジットカードやローン)実績が必要と言う「鶏と卵」のスパイラルに陥る。こうした人たちは、通常「セキュアド・クレジットカード(secured credit card)」と呼ばれる、予め払い込んだ数百ドル?千数百ドル保証金(担保)の範囲でしか使用できないクレジットカードを使って良好な返済実績を積んで優良なクレジットヒストリーを構築することが多い。

セキュアド・クレジットカードは、払込保証金額までしか使えないのでデビットカードに似ているが、使用額が銀行口座から即座に引き落とされるのではなく、通常のクレジットカードと同様に、使用日から25?55日後の決済期限までに使用額の決済をすればよく、またその使用実績はクレジットヒストリーに反映される(デビットカードは即座の現存資金移動だけなのでクレジットヒストリーには無関係)。

セキュアド・クレジットカードの保証金は、あくまで債務者が返済をしなかった「万が一の場合」の担保として使われ、毎月の請求書の決済は保証金外の資金から支払わなければならない(決済期限日に銀行口座から自動支払いを設定することも可能)。保証金は、セキュアド・クレジットカードで「良好な実績」(通常8か月間)を積んで、通常の(保証金不要の)クレジットカードに移行するときに、あるいはセキュアド・クレジットカードを解約するときに(返済不履行などの事故がなければ)全額返還される。


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