この項目では、日本の制度について説明しています。総論については「保健センター」をご覧ください。
保健所保健所
Health center
日本の保健所の地図記号
設立1937年4月5日
設立者法制定:日本国政府 設置:各地方公共団体
設立地 日本
種類公的機関
法的地位地方機関
目的疾病の予防、衛生の向上、地域住民の健康の保持増進
公用語日本語
保健所長各地方公共団体の保健所長
職員数30353人(平成12年)時点
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保健所(ほけんしょ、ほけんじょとも言う)とは、地域住民の健康や衛生を支える公的機関の一つであり、地域保健法に基づき都道府県、政令指定都市、中核市、その他指定された市(保健所政令市)、特別区(東京23区)が設置する。
1938年(昭和13年)に保健所の設置が始まった当初は、国民、殊に農村の保健生活を向上させることを目的として無料の健康相談、保健相談に応じるほか衛生思想の普及、栄養食
の改善、料理講習会、食品の腐敗防止、住宅改善の相談、学校給食、子供服の相談など幅広い業務を担うこととされていた。配置される職員は医師2人、薬剤師2人、看護婦3人、衛生指導員3人、書記1人を最小限の人員数とした。こうした目的や体制は戦中、戦後の社会情勢の変化を通じて大きく変化した[1]。近年では市町村保健センター、福祉事務所などと統合され「保健福祉事務所」「福祉保健所」「保健福祉センター」「健康福祉センター」といった名称となっている場合もあるが、地域保健法に基づき保健所を設置する必要があることから、その地方公共団体の組織規定上は○○保健所という名称も併せて付けている場合が多い。また、政令指定都市・中核市・保健所政令市において、とくに保健所を一つのみ設置している場合には、本庁の保健、衛生を所掌する部局と保健所が一体化している場合も多い。一方、全国の保健所の数は1989年(平成元年)の848から2020年の469まで統廃合が進んでいる[2]。
沿革
1937年(昭和12年)4月5日 : 保健所法公布、7月15日施行。
1938年(昭和13年)
1月11日 - 内務省から分離して厚生省設立
3月24日 - 東日本18ヶ所、西日本35ヶ所に保健所を開設。この時の計画では1942年までに全国550ヶ所に設置される予定であった。
1947年(昭和22年)9月5日 : 保健所法改正
1994年(平成6年)6月30日 : 地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律(保健所法の地域保健法への改正および関連法の改正を目的)制定
1997年(平成9年)4月1日 : 地域保健法施行
業務さいたま市保健所
保健所の業務は大別すると対人保健と対物保健に分けられる。 保健所の業務を例示すると次のような多様な業務の全部又は一部を行っている。
対人保健(住民に対するもの)
一般に保健指導または保健サービスと呼ばれる分野で、母子保健や老人保健など一般的なものは市町村保健センターに任せ、保健所は災害医療や感染症、精神保健など、専門的・広域的な業務に特化している場合が多い。ただし、中核市や政令指定都市、特別区などは保健所設置主体と一致するため、保健所がかなり詳細な部分まで行っている例もある。
「医師の届出義務」も参照
対物保健(地域に関するもの)
一般に生活衛生と呼ばれ、食品衛生、獣医衛生[注 1]、環境衛生及び医事・薬事衛生[注 2]の4分野からなる。これらは営業許可や立ち入り検査、違反施設に対する営業停止など、いわゆる「権力行政」としての権限を多く持っている。対応する法律により資格が規定されており、食品衛生監視員、狂犬病予防員、動物愛護担当職員、環境衛生監視員、医療監視員、薬事監視員がそれぞれの業務を受け持つ。
具体的な業務の例
地域保健に関する思想の普及及び向上に関する事項等
健康日本21に関すること。
人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項
栄養の改善及び食品衛生に関する事項
調理師及び製菓衛生師免許交付手続き。
食品の製造、流通、調理及び販売施設・卸売市場・集団給食施設(飲食店など)に対する営業許可及び監視指導、諸届出の受理。
イベントなどで食品を取り扱う場合の相談。
食品に関する苦情相談の受付。
食品や容器包装等の収去
食中毒について、医師からの報告の受理(食品衛生法第58条)。
食中毒の原因調査、及び食中毒予防のための普及啓発活動。
化製場等[注 3]に関する法律に基づく事務。
社会福祉施設(老人ホームなど)や特定給食施設(学校給食センターなど)に対する栄養指導。
住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事項
上水道等水道の諸届出の受理、立入検査、指導。
河川や井戸、プールなどの水質検査。
公害対策(大気汚染、水質汚濁、土壌汚染など)[注 4]。
美容所、理容所、クリーニング所、旅館(ホテルなど宿泊施設全般)、興行場(映画館、劇場)、公衆浴場の営業許可及び監視指導。
動物の管理についての相談。
動物取扱業(ペットショップなど)の登録(動物愛護法)。
狂犬病について獣医師からの届出の受理(狂犬病予防法第8条)。
野犬・野良猫等の管理及び殺処分、引き取り先の募集(里親募集)。
地域猫に関すること。
医療及び薬事に関する事項
医療関係免許(医師、歯科医師、看護師、薬剤師、栄養士など)申請の受付窓口。
医薬品販売業、毒劇物販売業の許可・登録等。
病院、診療所、施術所、薬局などの開設許可及び苦情処理等。
医療法に基づく医療監視(医療機関への立ち入り検査)。
保健師に関する事項
市町村保健師等への教育や研修、指導、相談など。
公共医療事業の向上及び増進に関する事項
災害時に災害医療コーディネーターを介して[注 5]、所管地域内のDMAT等の救護班へ指示・調整を行う[4] 。
母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項
母子健康手帳の交付、妊婦健康診査、乳幼児健康診査及び相談の受付[注 6]。