便所
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「トイレット」はこの項目へ転送されています。映画については「トイレット (映画)」をご覧ください。

便所(べんじょ、: toilet トイレット、lavatory)は、排泄する場所[1]。トイレットを短縮して「トイレ」、英語のlavatory[2] 同様の「お手洗い」、「water closet ウォーター・クローゼット」を略して「WC」など様々な呼び方がある

以下、諸文献でも「○○式トイレ」と表記していることのほうが多いので、元が「トイレ」と表記している場合は、この記事でも「トイレ」という表現も使う。手を洗うための場所(手洗い場、洗面台)が併設されていることも一般的である。ホテルの客室などの場合は、同一の室内に、便器、洗面台、シャワーや浴槽(バスタブ)が設置されていることが多い。これを三点ユニット(式)という。公共施設ではバリアフリーの観点から、障害者や乳児のおむつ交換などへの対応を兼ねた、広い面積の個室(多目的トイレ)が設けられる場合も多い。台湾のトイレ入り口
概説札幌駅に隣接するJRタワーの展望式男子便所の小便器。

トイレは基礎的な衛生施設である[3]。世界的には各文化ごとにさまざまな形態・構造の便所がある。諸民族間の差ももちろんあるが、同民族内の時代差もあり、かなり多様である[4]。他方、世界的にみると近代的な衛生設備が導入されていない地域では、トイレがなかったり、地上に便器のみが設置されたハンギングラトリン(Hanging latrine)などの形式も残っている[5]国際連合児童基金(UNICEF)や世界保健機関(WHO)の2008年の資料「Progress on drinking-water and sanitation : special focus on sanitation 2008」から作成されたデータによると、トイレなど基礎的な衛生施設を継続的に利用できていない人々は開発途上国で47%、全世界で38%にものぼる[3]

通常、近現代の便所では便器が設置され、トイレが水洗の場合は給排水設備も必要となる[6]。便器は浴槽などと同じく衛生的環境を構成するための設備であり「衛生器具設備」に分類される[6]。また、水洗トイレへ洗浄水を供給する設備は「給水設備」に分類され、使用後の汚水を排水する設備は「排水設備」に分類される[6]

便器には大便器小便器がある。大便器の形式には便座に腰かけて用いる洋風大便器(こしかけ式大便器)としゃがんで用いる和風大便器(しゃがみ式大便器)がある[7]。また、小便器の形式には、壁面に取り付ける壁掛け小便器、床面に据え付けるストール小便器、その中間の壁掛けストール小便器、筒形小便器などがある[8]。小便専用の便器を「小便器」と言い、通常は男性用であるが、ごくごく稀に女性用も存在する[注釈 1][9]

現代のトイレでは壁にはトイレットペーパーを掛けるペーパーホルダーのほか、タオル掛け、手摺などが設置されることもある。水洗式の場合は、個室内に便器洗浄用のタンクやフラッシュバルブが設置される。換気扇や換気筒などの換気設備が備わっていることも多い。便所内に臭気がこもったり、便所の出入り口から周囲の部屋などに臭気が漂わないように負圧(陰圧)をかけるためである。

日本の女性用の個室では、水を流したかのような擬音を発生する装置が取り付けられていることもある。日本の女性は、自分の用便時の音を他人に聞かせたくない、との意識が男性よりも強く、音を隠すために洗浄水を流すことがあり、男性の便所と比べて水の使用量が極端に多くなってしまう傾向があるので、水道代金が異常なまでに高額化したり、世の中が渇水(水不足)の季節に水不足の原因となってしまうのを防ぐために置かれている。
設備の要素新しいトイレ個室内の諸設備。便器(水道直結型の水洗式、こしかけ式)、トイレットペーパーホルダー、手すり、手洗い、など。尿石防止の薬剤供給装置が連結された自動フラッシュバルブ内蔵新型小便器リアルタイム空き状況

便器




大便器

洋風大便器(こしかけ式大便器)[7]

和風大便器(しゃがみ式大便器)[7]


小便器


ビデ

フラッシュバルブ

サニタリーボックス

手洗い場

ハンドドライヤー

洗面台

浴槽

シャワー) - ホテルの客室の他に、トイレ内に失禁用のシャワーが設けられているケースもある。

括弧書きの設備はホテルマンション病院などで使われている三点ユニットのみにある設備

和式トイレの使い方

水洗トイレの使い方

韓国のトイレの表示
特殊設備

人感センサ

トイレ用擬音装置

サニタイザー

ナースコール

処理の方式
汚水処理技術

世界にはし尿などの汚水を処理する施設や技術に多様な方式が存在する[10]。トイレの形式には湿式と乾式があり、注水式水洗トイレ(2?3リットルの水を使用)や水流式水洗トイレは湿式、それ以外の方式は乾式に分類される[10]。また、汚水の処理方式には集合処理(オフサイト)と個別処理(オンサイト)がある[10]

以上から、汚水処理技術は乾式+個別処理(ピットラトリンなど)、乾式+集合処理(汲み取り式便所など)、湿式+個別処理(腐敗槽など)、湿式+集合処理(下水道処理)の4つに分けられる[10]。なお、発展途上国などで汚水処理技術が導入されていない地域では、宅地の斜面など地上に便器のみが設置されたハンギングラトリン(Hanging latrine)などの形式も残っている[5]
乾式の処理方式

乾式+個別処理

地下浸透式(
ピットラトリン、地下浸透式便槽トイレ):アフリカなどの発展途上国などに残る方式[10]。ピットラトリンは地面を素掘りしてそのまま便槽とする方式である[10]。日本でいう汲み取り式便所とは異なり、ピット(槽)が満杯になったら閉鎖し、別のピットを使用する形式である[5][11]。2007年の日本トイレ協会「途上国のトイレ・環境改善支援事例集第2集」によると発展途上国26か国39事例で最も多い形式がピットラトリンだった[11]。構造上も閉鎖されたピットは1?2年土中に放置して疫学的に無害な土壌に戻すことを前提にした設計になっている[5]

屎尿分離コンポストトイレ(欧州型):北欧諸国などで採用例があり、勾配のある単槽のコンポスト化槽を少しずつ移動して槽の最下部で堆肥になるようにしたコンポストトイレ[10]

屎尿分離コンポストトイレ(ベトナム型):2つの槽を利用し、一方を利用しているうちに、もう一方の槽で堆肥化を行うコンポストトイレ[10]

バイオトイレ:バイオトイレと呼ばれる新たな仕組みの便所も注目されている。仕組みは単純で、便槽の中におがくずを詰め込んであり、攪拌することで排泄された糞尿をオガクズの中に住み込んでいる好気性のバクテリアが分解し、最終的には土と水のみが生成されるものである。


乾式+集合処理

汲み取り式:日本で使われてきた落下式便所の一つ。汲み取り式便所はピットラトリンとは異なり、し尿の処理は便所とは別の場所で行う[10]


湿式の処理方式(水洗式便所)

水洗式便所は水勢により汚物を洗浄して衛生的に処分するための機能を持っている。水洗式便器は、水道管を便器の給水口に接続して、流水により便器内の排泄物を洗浄する。トイレのうち注水式水洗トイレ(2?3リットルの水を使用)や水流式水洗トイレは湿式、それ以外の方式は乾式に分類される[10]。なお、下水道等の整備が十分でない地域において、非水洗便所よりも衛生的であり、より水洗式便所に近い実用性が得られるため設置される便所に簡易水洗式便所がある。

湿式+個別処理

腐敗槽(セプティック・タンク):し尿を住宅やオフィスなどで個別処理する方式[12]。世界的に利用されている伝統的な個別処理方法である[12]。腐敗槽のBOD除去率は50%程度で日本で開発された浄化槽に比べると処理性能は低い[13]

浄化槽:日本などで利用されている個別処理方式システムの一種[10]。し尿及び雑排水(生活に伴い発生する汚水:生活排水)を処理し、終末処理下水道以外に放流するための設備である。汚水の処理には、みなし浄化槽および小規模槽については、「沈殿」による固液分離機能と嫌気性好気性の微生物の浄化作用を利用している。中・大規模槽については、汚水中に含まれる固形分の「除渣」(じょさ)機能と「流量調整」機能、および好気性の微生物の浄化作用および「沈澱」による固液分離を利用している。また、一部の浄化槽では、「ろ過」及び「凝集」による物理的処理および「脱窒機能」を用いて処理水質の高度化を図っているものもある。

ABR(Anaerobic Baffled Reactor):南アフリカやブラジルで開発が進められている腐敗槽を改良した処理方式[10]


湿式+集合処理

下水道:下水道は、主に都市部の雨水および汚水を、地下水路などで集めたのち公共用水域へ排出するための施設・設備の集合体であり、多くは浄化などの水処理を行う。雨水としては、気象学における降水および、いったん降り積もった雪が気温の上昇などで融けた融雪水も含むが、いずれも路面など地表にあるものが対象で、河川水や地下水となったものは除く。汚水としては、水洗式便所からのし尿や、家庭における調理・洗濯で生じる生活排水と、商店やホテル・町工場から大工場にいたる事業場からの産業排水(耕作は除く)などがある。

このほか個別処理や小集落の集合処理で適用されている技術がいくつかある[10]

酸化池(ラグーン):直列につなげた水深の異なる複数の池に水を流しながら曝気で浄化する処理方式[10]

ウエットランド(人工湿地):土壌接触や水生植物のアシやホテイアオイなどを利用してアシやホテイアオイなどを利用して汚濁物質を除去する処理方式[10]

便所の様式.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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出典検索?: "便所" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2021年2月)

便器の形式

大便器には、ざっくりと分けると、「こしかけ式」と「しゃがみ式」があり、そこに着目して分類されることもある。「こしかけ式」は椅子のような高さの便器であり、「こしかける」ようにして使用するものである。「しゃがみ式」は、椅子のような高さはなく、便所の床とさほどかわらない高さの便器にしゃがむようにして用いる便器である。「こしかけ式」は、欧米の家庭では主流であり、「しゃがみ式」はイギリス、フランスなどの公衆便所などでは現在でも主流であり、かつての日本の家庭や公衆便所でも主流であった。
肛門の洗浄

大きく分けて、紙(トイレットペーパー)で拭く方法と、水洗いする方法がある。

紙で拭く場合、使用後の紙を汚物と一緒に水洗で流せる地域と、使用後の紙は備え付けの汚物入れに捨てる地域がある。これは紙の質や下水管の太さなどに依存する。イギリスではトイレットペーパー代わりに不溶性のウェットティシュを使う者も多く、しばしば下水道で大型の異物(ファットバーグ)を成長させる原因となる[14]

水洗いする場合は、いわゆるシャワートイレ方式(先進国で優勢)、便器に付属する専用のハンドシャワーを用い自力で狙いを定めて洗う方式(東南アジアからインドにかけて優勢)、手桶に溜めた水と自分の手を使う方式(インドからトルコにかけて優勢)の3種類に大別できる。

近年は人工肛門を洗浄するためのオストメイト型の洗浄器具を備え付けているトイレもある。
世界の便所

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