便の色・尿の色
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便の色・尿の色(べんのいろ・にょうのいろ)では便(大便)尿の色について記述する。健康な人の便・尿は一部の例外を除いて、食物飲み物の色に関わらず便は黄土色、尿は淡黄色?黄色の特徴的な色を示す。

健康人の便・尿を特徴的な色に染めている色素は主に古い赤血球が壊されヘモグロビンが代謝されて作られるビリルビンが細菌などの作用によってさらに変化して作られるステルコビリンウロビリンウロクローム)によるものである[1][2]。また、薬剤疾患などによって便・尿の色が左右される事もある。
健康な人の便・尿の色
胆汁色素生成でのマクロファージの役割

標準的な体格(例として体重60kgの男性)の人では体内におよそ4.8リットルの血液があり、赤血球容積率(ヘマトクリット値)はおよそ45%なので、およそ2.16L、2.2kgの赤血球が存在する。赤血球の寿命は120日であるので毎日18gの赤血球が古くなり破壊されている[3][4][5]。古くなった赤血球は肝臓・脾臓のマクロファージが分解する[6]

赤血球の主要成分であるヘモグロビンの材料の一つヘムはマクロファージによって原子と一酸化炭素ビリベルジンに分解され[6]、ビリベルジンはただちに酵素で還元されビリルビンになる[2]。このマクロファージが生成した時点でのビリルビンは水に融解しない遊離あるいは非抱合型ビリルビンであるが、これは血漿アルブミンと結合して血漿中に入り肝臓に達する[2][7]。この段階でのアルブミンと結合した非抱合型ビリルビンを間接ビリルビンという[1][6]

健康人の正常な状態では1日に250-300mgのビリルビンが作られるが、その70%は古くなった赤血球、10-20%は無効造血(生産に失敗した赤血球)、10%は肝において作られる[8]
肝臓

マクロファージが古くなった赤血球を分解して作った間接ビリルビンは肝細胞に入る[6]。また、マクロファージによるものではなく赤血球が循環中に壊されて血液中に放出されたヘモグロビンは血漿中のハプトグロビンと結合し、肝細胞に取り込まれる。また、血漿中に放出されたヘモグロビンの一部は酸化されメトヘモグロビンとなり、ヘムが遊離し、このヘムはヘモペキシンと結合し肝細胞に取り込まれる。肝細胞に取り込まれたヘムは分解されビリルビンとなる[6]

結局のところ、いくつかの過程はあるが、赤血球外に放出されたヘモグロビンのヘムは非抱合型ビリルビンなり、最終的には肝臓において非抱合型ビリルビンはグルクロニルトランスフェラーゼ酵素によってグルクロン酸抱合(グルコルニド抱合)され、これは水溶性の緑色を帯びた黄色い色素である抱合型ビリルビン(直接ビリルビン)であり、抱合型ビリルビンは一部は血液中に入るが大部分は胆汁中に排出される[6][7]

ビリルビンを含む胆汁は十二指腸に放出され、ビリルビンは結腸の細菌によって加水分解され無色のウロビリノーゲンになる[7]。消化管中のウロビリノーゲンは一部は再吸収され血液中に入るが、大部分は代謝され色素ステルコビリンになる。健康な人の便の特徴的な色はステルコビリンによるものである[2]
尿の色乳麋尿症(英語版)(乳び尿症)の尿。

腸で生成されたウロビリノーゲンの一部は再吸収され血液中に入る。このウロビリノーゲンは門脈循環で再度胆汁に排出されるものもあるが、一部は尿として排出される[7]。尿に排出されたウロビリノーゲンは酸化されウロビリンウロクローム)になり、ウロビリンは尿を特徴的な黄色にする[2]

脱水尿色チャートを使うと、尿の色によって簡易的に脱水状態を知ることができる[9][10]

状態水分摂取の行動
問題無し普段通りに水分摂取
問題無しコップ1杯の水分を摂取
脱水1時間以内に 250ml の水分を摂取
屋外あるいは発汗していれば 500ml の水分を摂取
脱水今すぐ 250ml の水分を摂取
屋外あるいは発汗していれば 500ml の水分を摂取
脱水今すぐ 1000ml の水分を摂取
この色より濃い、あるいは「赤色」「茶色」が混ざっていたら直ちに医療機関へ

厚生労働省 職場の安全サイト「尿の色で脱水症状チェック」の記載を参考。(表示環境によって色調が異なります)
見られることの多い便・尿の色の異常
黒色便

異常な色の便で比較的見られることが多い便に黒色便がある。

黒色便が出る原因としては

上部
消化管出血

鉄剤やビスマス製剤などの影響

イカ墨を含む食品の喫食、ほうれん草などの大量摂取の場合が多く[11]、薬剤や食品によらない黒色のタール様便は上部消化管出血によるもので、出血した血液に含まれるヘモグロビンが胃液など消化液や細菌によって変化したものである[12]

便が長期間空気に晒されるとウロビリノーゲンからウロビリンへの変化が進み色が黒っぽくなる[13]
赤色便

赤い便も見られることが多く、主に消化管・肛門からの出血が原因である。上部消化管からの出血ではヘモグロビンが変色するのに十分な時間があるので黒色便になるが、下部消化管・肛門からの出血ではヘモグロビンが変色するのに十分な時間がないので赤いまま出てくる。出血箇所が回腸-結腸だと暗赤色、直腸-肛門だと鮮血便になる[11][12]。「血便」も参照
灰色便

閉塞性黄疸では肝臓から腸に排出される胆汁の流れが閉ざされる。その原因は胆石胆管の閉塞、胆管や膵臓の腫瘍などである[7]。したがって腸内にビリルビンが排出されないのでウロビリノーゲン-ステルコビリンが生成されず特徴的な色素がないために大便は灰色となる。しかし、血中の抱合型ビリルビン(直接ビリルビン)は排出されないため血中濃度が高くなり尿中に排出される。そのため閉塞性黄疸では大便は灰色になる代わりに尿は暗黄色になる[2]

抗生剤の服用によって腸内の嫌気性細菌が減少するとビリルビンを還元してウロビリノーゲンを作る量が減るので便の色も薄くなる[14]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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