作画崩壊
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作画崩壊(さくがほうかい)は、「アニメ作品の作画の品質の秩序を失い、著しく低下している様相」を指す言葉である[1][2]。そのような状況が発生した著名なエピソードにちなんでヤシガニ[3][4]キャベツ[4]と呼ばれることもある。
概要

作画崩壊は、主にアニメの制作段階で、予算やスケジュールの不足などが原因で[4][2]納品までにクオリティの管理が行き届かなかった場合などに発生する。作画のクオリティが乱れた場合に生じる様相はさまざまだが、一例としてはキャラクターのデッサンパース(遠近感)に狂いが生じたり[1]、キャラクターの動きが不自然になったり[3]、彩色のミスなどが発生したりする[3]ような例が挙げられる。あまりに極端な作画崩壊は、不名誉な形で視聴者の間で話題になることもある(詳細は「著名な作画崩壊の例」を参照)。

日本のアニメ産業は、劣悪な労働環境と収入面の問題から後継者が育たず、アニメーターの人材不足が深刻となる一方、少子化による影響もあり、子供向けのアニメに出資するスポンサーは予算を渋るという窮状を抱えている[2]

こうした事情もあり、日本のアニメではしばしば、日本国外での安い人件費による人海戦術を見込み、動画などの作画工程をアジア地域の下請制作会社に国外発注することが行われる[5]。しかしこれを行う場合、作業が国外で行われている間は、地理的な距離や言語の壁の問題のために、クオリティの統一を担うはずの作画監督の指示が行き届きにくいという状況から[6][2]、国外発注では作画崩壊が起こりやすいと言われる[7]

中国韓国に外注された低品質のアニメについてエンドロールに流れるスタッフクレジットが三文字(中国人や韓国人の姓名は姓一字名前二字であることが多いため)であることから「三文字作画」と呼ばれており[8]、日本のアニメファンの間では、スタッフクレジットの作画班に日本国外の人名が並ぶことが、否定的に受け取られることもある[5]。また予算が不足しているアニメ作品では、コストの低い国外発注が多用されるため、作画崩壊が起こりやすいとされる[2]

日本国内外への動画の外注が一般的になるにつれ、原画段階で、動画を意識した指示が詳細に描き込まれるようになるなど[9]、制作現場におけるクオリティ管理の手法は日々変化している。一方で年々アニメ制作の技術が向上するために、アニメファンの目が肥え、またインターネットを通じたファン同士の交流も昔より活発になったため、アニメファンが作画の出来不出来に過敏になっていることを、作画の乱れが注目されやすくなった原因のひとつに挙げる意見もある[2]
著名な作画崩壊の例
初期の作画崩壊

1963年のテレビアニメ『鉄腕アトム』は日本初の30分の連続テレビアニメとして知られるが、その反面スケジュールが追い付かず、制作が間に合わなくてフィルムをツギハギして1話分を作り上げたり、再放送を挿入したりなどのことが頻発していた。そんな中、手塚治虫は第34話「ミドロが沼の巻」をスタジオ・ゼロという制作会社にグロス請けを依頼したことがある。しかし、作画を担当した鈴木伸一石ノ森章太郎藤子・F・不二雄藤子不二雄Aつのだじろうなどのアニメーター毎に作画のばらつきが顕著で、これを見た手塚が無言になるほどの出来だったとされる[10]

1974年のテレビアニメ『チャージマン研!』は、当時の30分アニメ1話あたりの平均的予算が400 - 500万円前後とされていた中で50万円という低予算であったため、制作側もスタッフが勝手にに遊びに行くなど熱意が無く[11]、低調な作画やご都合主義的かつ辻褄が合わないストーリー展開となってしまった。2000年代に入ってから「ツッコミどころ満載の珍作」として再評価された[注釈 1][12]が、本放送当時の作品の知名度は極めて低かった。

1982年のテレビアニメ『超時空要塞マクロス』は、斬新なメカアクションの作画が高く評価された[13]一方、作画を日本国外のスタジオに発注した回が不評であった[注釈 2](詳細は「超時空要塞マクロス#作画問題」を参照)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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