Schistosomiasis
別称Bilharzia, snail fever, 片山熱[1][2]
罹患した11歳男児。腹水がみられる。
発音[???st?s??ma??s?s, -to?-, -so?-]
住血吸虫症(じゅうけつきゅうちゅうしょう、Schistosomiasis)は、住血吸虫科に属する寄生虫に感染することにより引き起こされる病気の総称である[5]。致死率こそ高くないものの、長期にわたり内臓を痛める慢性疾患であり、社会的経済的影響が大きい。淡水産の巻貝が中間宿主となっており、皮膚を汚染された水に浸すことで感染する。
歴史的には、灌漑網を整備したメソポタミアやエジプトの初期農耕社会ですでに蔓延しており、日本には水田耕作とともに弥生時代に持ち込まれたと考えられている[9][注釈 1]。アフリカや中東にかけてはビルハルツ住血吸虫症が今なお流行しており、ダムや灌漑水路の普及とともにますます拡大している[9]。エジプトでは、1970年完成のアスワン・ハイ・ダムの貯水開始とともに感染が爆発的に拡大した[9][注釈 2]。
WHOによれば、世界77か国で2億人以上が感染しているとされる[9][10]。「顧みられない熱帯病」のひとつである[11]。 マラリアとならんで農耕生活の広がりによって拡大した感染症であり、灌漑に用いる河川や湖沼に生息する巻貝が中間宿主となって、人には生水を通して感染する[9]。 住血吸虫の保虫者は慢性的な胃や胸の痛み、疲労感、下痢などを訴え、虫卵が膀胱や尿管の粘膜に集まるため尿路に障害が生じる[9]。フランス史の英雄、ナポレオン・ボナパルトは尿道の激しい痛みをかかえており、従来、その原因は尿路結石とされていたが、彼の症状を子細に検討した医師によれば、エジプト・シリア戦役の際に感染したビルハルツ住血吸虫症
歴史
症状腕に生じたセルカリア皮膚炎
住血吸虫症は基本的には慢性疾患である。住血吸虫が皮膚から侵入したときにかゆみを伴う発疹(セルカリア皮膚炎)がみられる。急性期の症状としては、発熱、蕁麻疹、下痢、肝脾腫、せきなどがあり「片山熱[12]」と呼ばれているが、目立った症状のない不顕性感染となることも多い。更に、終宿主が鳥類の住血吸虫のセルカリア侵入でも皮膚炎が発症するが、虫体は寄生に成功することなくそのまま死滅するため、皮膚炎のみの症状で終息する。
慢性症状は、成虫の寄生部位によって、尿路住血吸虫症と腸管住血吸虫症とに大別できる。(住血吸虫はそれぞれ尿路または腸管を取り巻く静脈叢に寄生する。)
尿路住血吸虫症では、血尿がみられ、進行すると尿路の線維症や腎炎が認められる。合併症として膀胱癌が増えることも知られている。病変は生殖器にも及び、女性では陰部の炎症や出血、結節、性交痛など、男性では精嚢や前立腺に異常が見られ、不妊の原因にもなる。
腸管住血吸虫症では、腹痛、下痢、血便などがみられる。進行すると肝硬変がおこり、門脈圧亢進により腹水が溜まる。食道静脈瘤が認められ、吐血する場合もある。脳腫瘍に似た症状を示すこともある。 吸虫(扁形動物)のうち、住血吸虫科に属する寄生虫が病原体である。
病原体