住宅ローン
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住宅ローン(じゅうたくローン、housing loan、mortgage)は、「本人及びその家族」または「本人の家族」が居住するための住宅及びそれに付随する土地一戸建てマンション)を購入、新築、増築、改築、既存住宅ローンの借り換えなどを行うために金融機関から受ける融資(ローン)である。
概要

日本では徐々に上昇した物価および地価により、現在の持家購入費用は、立地・延べ床面積・新築か中古かなど条件が異なるが数百万?億円単位と、国民の平均年収[1]を大幅に超えるものが普通である。

住宅ローンはその購入資金を対象に融資を行う商品であり、金利は低く抑えられ、返済期間の多くは35年までと長いのが特徴である。返済期間を長期とすることで毎月の返済額を低減し、30歳前後のサラリーマン世帯において定年退職時まで月収の範囲内で返済を続けて行くことで、高額な持家の取得が容易となった。

住宅ローンを取り扱う会社としては、普通銀行信託銀行信用金庫JAバンク労働金庫など民間の預金取扱金融機関が主流である(ゆうちょ銀行では現状取り扱いが行われていない[2])。その他、長期資金の運用手段として国内資本の生命保険会社日本生命保険など)や、ジャックスなど信販会社、住信ローン&ファイナンスなど不動産担保融資に特化したノンバンク、現存する住宅金融専門会社である協同住宅ローンなど銀行以外でも取り扱われている(以上、総称して「取扱会社」とする)。

2001年には、米国で先行していた住宅ローン債権をMBS証券化し、機関投資家へ売却することで融資資金を調達する新しい形態のモーゲージローン専業会社として、ソフトバンクファイナンス(当時)により「グッド住宅ローン(現:ARUHI)」が創業。2003年に住宅金融支援機構が同様のスキームで円滑な資金供給を行う「証券化支援事業(フラット35)」が登場し、それの取扱いに特化したモーゲージローン専業会社が複数設立されている(積水ハウス系の日本住宅ローンなど)。また、既存の預金取扱金融機関においても、従来の住宅金融公庫融資の後継として、自前の住宅ローンと並行して取り扱っている場合も多い。

なお、「フラット35」「フラット50」を利用した住宅購入資金の融資については、フラット35を併せて参照のこと。
貸出条件

住宅ローンの貸出条件としては、融資を受ける借り手(債務者)本人に安定した収入(給与事業所得など)があり、銀行等が指定した信用保証会社が貸し手に対して連帯保証を承諾し、債務保証委託契約を締結させる事を最低限の条件としている事が一般的である(但し、福利厚生での融資や住宅金融支援機構ネット銀行などの融資では保証会社を使わない場合もある)。保証会社を伴わずに銀行が直接融資する住宅ローンは特にプロパーローンと言われる。

取扱会社によって、貸出金額・年齢・年収・勤続年数・頭金団体信用生命保険加入などの制約・条件を個別に設けている。申込の目安はパンフレットや商品説明書等で公表されているが、細部の審査基準は他のローンやクレジットカードと同じく内規事項であり非公表である。住宅ローンの対象となる購入不動産の登記には取扱金融機関・住宅金融支援機構あるいは保証会社を第一順位とする抵当権設定登記がされる。

銀行等で申し込みを行った場合、信用保証会社あるいは取扱金融機関が債務者個人の信用と購入予定住宅の担保評価額など融資に関する審査を主体的に行うため、年収などの条件や、信用情報上のクレジットヒストリー(他社債務残高や延滞等)に問題が有った場合は謝絶(否決)される場合もある。保証委託契約が伴うローンでは保証会社の審査基準を満たした場合に銀行等へ連帯保証を受諾する旨を回答するため、銀行側の仮審査が可決となった場合でも保証会社側の審査結果が優先される。

住宅購入に際して融資を受ける場合は、審査可決後、物件の一般的に引き渡し時に金銭消費貸借契約書を金融機関と交わし、融資金を返済口座への振込で受け取り、即座にその資金を事前に指定した売主の銀行口座へ振り込む。
金利

完済するまで取扱会社が定めた期間(半年毎など)金利が変動(連動)する変動金利型と、貸出時の金利が完済時まで固定される全期間固定金利型、貸出から一定期間(2年-10年間など)のみ当初の固定金利となり、期間経過後はその時点での固定あるいは変動金利に変更される固定期間選択型や固定金利特約型などがある。

変動金利型は、
短期プライムレートに連動するものが主流で(かつては長期プライムレートが主流)、ゼロ金利により低金利下である場合は利息負担が固定金利型と比べて大幅に抑えられるメリットがあるが、短期間で貸出金利が見直されるため、インフレーション通貨政策により将来金利が上昇した場合は利息負担が倍増するリスク(金利上昇リスク)がある。また、将来の金利が確定していない為、最終的な利息額は完済するまで判明しない。

全期間固定金利型は、変動金利型で起きうる金利上昇リスクを貸し手が負うため、将来金利上昇が起きた場合でも借り手側の利息額は変動せず、完済するまでの利息負担額が確定しているメリットがある。ただし、固定期間に応じて変動金利に数パーセント上乗せした利率であり、貸出当初の金利のままで長期間推移したり、金利の低下が見られた場合は、変動金利に対して上乗せされた利率分、多く利息負担をすることになり損を被る事になる。

固定期間選択型は、貸出当初の一定期間が固定金利となるため、金利上昇局面であり、将来的に金利が下がる場合(例えば、2006年3月のゼロ金利解禁-2009年のゼロ金利復活までの約3年間など)の上昇リスクについてカバーできるが、金利が低下する場合は全期間固定金利型と同様のデメリットが生じる。

取扱会社によってはその他の金利ルールや、総融資額の内訳で契約を分割し(例:2000万円と1000万円)固定と変動のタイプや返済期間を組み合わせる(ミックスする)ことが可能な住宅ローン商品も存在する。

償還期間が長期にわたるため、一般的に利用される元利均等返済の場合、返済初期の利息負担が大きくなっている。そのため、資金に余裕がある場合には、増額返済して元金を減らすこと(繰上返済)で利息負担を軽減することができる。
保証会社・保証料

住宅ローンの場合には「所定の保証会社」の保証が求められる場合が多い。万一返済できなくなった場合には、保証会社が借入れした本人に代わって金融機関に残りの債務を全額返済してくれる、という仕組みであり、金融機関にとっては、個人から返済をしてもらうよりも迅速に債権を回収することが可能となる。また、保証会社に保証をしてもらうためには、保証料が別途必要となる。保証料は、一括で前払いする場合と、金利に保証料率を上乗せして償還していく方法がある。金融機関によっては、審査により人によって保証料(または率)が異なる場合があるので注意が必要である。
借入可能額

住宅ローンの借入可能額(融資額)は、金融機関ごとの審査によって決定される。住宅購入の検討時には、いくらぐらいの物件が購入できるか予算を想定する必要があるため、年収倍率という指標が試算に使われることが多い。年収倍率とは、「自身の年収の何倍までの借入が可能か?」という指標で、借入可能額÷年収で求められる。

年収倍率は一般的に5倍程度が会社員にとって買いやすい状況であるが[3]、住宅金融支援機構のフラット35利用者2019年調査データでは、「土地付注文住宅」の全国の平均年収倍率が7.3倍。新築マンションが7.1倍、販売住宅が6.7倍、注文住宅が6.5倍、中古マンションが5.8倍、中古戸建が5.5倍になっており、いずれも5倍を超えている[4]

このほか、年間の返済総額(元金+利息)が年収に占める割合を表す「返済比率」も使われる。返済比率はおおむね25%?35%が上限とされるが、40%を超える返済比率だと一般的に「身の丈に合わない家」となる。
返済が滞った場合

失職などでローンの返済が長期間滞った場合や自己破産を申請した場合、借り手の連帯保証人である信用保証会社は貸し手である銀行等の求めに応じて代位弁済を行い、抵当権を行使して権利移転を行い、立ち退きを求める場合が多い。しかしながら、この時点では売却は行われていないため、保証会社が不動産業者へ売却した金額が残債務に満たなかった場合、ノンリコースローンでは無い限り、その差額の返済を保証会社に対して行わなければならない。このような場合では借り手が多大な不利益を被るため、返済が困難になった場合は早期に貸し手と相談し、任意売却などの検討を行うべきである。なお、団体信用生命保険が付帯されている場合で不慮の死亡または高度障害となった場合は、そこから支払われる保険金で全額弁済となるため、遺族への負担は生じない。

近年では2008年の世界金融危機発生以来、失業率が上昇したことでやむなく自宅を手放ざるを得なくなった者が発生することになったが、2009年の鳩山由紀夫内閣で就任した亀井静香金融・郵政改革担当相の肝煎りで同年12月に施行した「中小企業金融円滑化法(所謂モラトリアム法)」において、個人の住宅ローン債権の返済期間の延長による月々の返済金の減額など、貸し手に対して要請があれば応じるように盛り込ませている。

二重ローン問題対策として、2011年東日本大震災の影響により返済が困難になった被災者を対象とした「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」(被災ローン減免制度)が同年8月22日より運用開始されている[5][6][7]


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