位相偏移変調
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位相偏移変調(いそうへんいへんちょう)もしくは位相シフトキーイング(英語: phase-shift keying, PSK)は、基準信号搬送波)の位相変調または変化させることによって、データを伝達する、デジタル変調である。目次

1 概要

2 序論

2.1 定義


3 用途

4 二位相偏移変調 (BPSK)

4.1 計算


5 四位相偏移変調 (QPSK)

6 差動(差分)位相偏移変調 (DPSK)

7 関連項目

8 脚注

概要

デジタル変調においては、デジタルデータを表現するために有限個の異なる信号を使う。PSKでは有限個の特有な位相が使われ、一つの位相に複数のビットが割り当てられる。通常、それぞれの位相は等しい数のビットを符号化する。位相に割り当てられる各々のビットパターンをシンボルと呼ぶ。復調器は、変調において使用されたシンボルセットに合わせてに設計され、まず、受信信号の位相を明らかにし、次に位相を対応するシンボルへマッピングすることで変調前の元データを取り戻す。これは、受信信号の位相を基準信号と比較可能なことを受信機に要求する、そのようなシステムをcoherent phase-shift keying (CPSK)と呼ぶ。

また、波の位相を「決定」するためにビットパターンを使う代わりに、指定された量を変えて使う事ができる。復調器は、受信信号から位相それ自体でなく、受信信号の位相の変化を確認する。この仕組みは連続した位相の違いに依存するので、差動(差分)位相偏移変調(DPSK)と呼ばれる。DPSKは、受信信号(ノンコヒーレント)の正確な位相を決定するために、基準信号のコピーを受信器が持っている必要がないため、通常のPSKよりもかなり実行しやすい。そのかわり、DPSKは復調時の誤りを生じやすい。考慮している特定のシナリオの正確な条件は、どの仕組みが使用されるか決める。
序論

デジタル信号の伝送で使用される、主なデジタル変調技術は、次の三種類である。

振幅偏移変調

周波数偏移変調

位相偏移変調

全て、データ信号に応じて、基準信号、搬送波(通常シヌソイド)の一部の特性を変化させることによってデータを伝送する。PSKの場合、データ信号を表すために位相を変化させる。この様にPSKで信号の位相を利用するためには、以下の二つの方法がある。

情報を伝達する信号の位相自体を見る方法。この場合、復調器は受信信号の位相を比較する基準信号を持たなければならない。

情報を伝達する信号の位相の「変化」を見る方法。すなわち、位相の差を判断する。この方式の一部の構成では、基準搬送波を必要としない。

PSKを表現する便利な方法に、信号空間ダイヤグラムがある。これは、同相の信号を実数軸に、直角位相の信号を虚数軸にとったガウス平面上に信号点を示す方法である。垂直な軸におけるそのような表現は、簡単な実現に適している。同相軸に沿ったそれぞれの信号点の振幅はコサイン(またはサイン)波を変調し、さらに直角位相軸に沿った振幅はサイン(またはコサイン)波を変調する。

PSKでは、選ばれる信号点は、通常円のまわりに、均一の角度間隔で配置される。これにより、隣接点間の位相距離を最大にし、干渉に対する耐性を最大にする。それらの点は全て同一のエネルギーで送信が可能であるように、上に配置される。この方法によって、それらが表す複素数のノルムは等しくなり、コサインとサイン波に必要となる振幅も同じになる。いくつの位相を用いても良いが、一般的な例として、二つの位相を使用する、二位相偏移変調や、4つの位相を使用する四位相偏移変調が存在する。伝達されるデータは通常バイナリであるので、PSKは通常、2の累乗である信号点の数で設計される。
定義

誤り率を数学的に計算するためには、いくつかの定義が必要となる:

E b {\displaystyle E_{b}} = 1ビットあたりのエネルギー

E s {\displaystyle E_{s}} = 1シンボルあたりのエネルギー = k E b {\displaystyle kE_{b}} 1シンボルあたりkビットのエネルギー

T b {\displaystyle T_{b}} = ビット間隔

T s {\displaystyle T_{s}} = シンボル間隔

N 0 / 2 {\displaystyle N_{0}/2} = ノイズ電力スペクトル密度(
W / Hz )

P b {\displaystyle P_{b}} = 符号誤り率

P s {\displaystyle P_{s}} = シンボル誤り率

Q ( x ) = 1 2 π ∫ x ∞ e − t 2 / 2 d t = 1 2 erfc ⁡ ( x 2 ) ,   x ≥ 0 {\displaystyle Q(x)={\frac {1}{\sqrt {2\pi }}}\int _{x}^{\infty }e^{-t^{2}/2}dt={\frac {1}{2}}\,\operatorname {erfc} \left({\frac {x}{\sqrt {2}}}\right),\ x\geq {}0} .

Q(x)は、平均がゼロ、分散が1となるガウスの確率密度関数でランダムな過程から得られた単一のサンプルがx以上である確率である。それは相補ガウスエラー関数の規格化された形である。ここで示した誤り率は加算性白色ガウス雑音(AWGN)のものである。この誤り率はフェーディングのものよりは低く、理論的な比較に適している。
用途

比較対象として挙げられるQAMと比較すると、PSKはその単純さのため、既存の技術を用いて広く利用されている。

最も一般的な無線LAN規格IEEE 802.11b[1][2]は、要求されるデータ転送速度に応じて、様々なPSKを組み合わせて利用している。

1Mbit/sの基本速度では、DBPSKを使用し、拡張された2Mbit/sの速度では、DQPSKが使われ、5.5 Mbit/s と11Mbit/sのフルレートでは、QPSKが利用される。このとき、CCKも併用される。

高速無線LAN規格IEEE 802.11g[1][3]では、6, 9, 12, 18, 24, 36, 48 そして 54 Mbit/sの8つのデータ転送速度を持つ。6、9Mbit/sのモードではBPSKが、12、18Mbit/sのモードではQPSKが、残りの4つの高速なモードでは、QAMが利用される。

その単純さのため、BPSKは低コストの受動的な送信機に利用され、ISO14443を満たすRFIDに利用されている。このRFIDは、生体認証パスポートクレジットカードやその他の用途に利用されている。

Bluetooth2は、低いレート(2 Mbit/s)ではπ / 4-DQPSKが、2台の装置のリンクが十分に強いとき高いレート(3 Mbit/s)では8-DPSKが使われる。Bluetooth1は、ガウス最小偏移変調で変調され、バージョン2では、どちらの変調方式を選択するかにより、より高速の転送速度を出すことができる。
二位相偏移変調 (BPSK) BPSKにおける信号空間ダイヤグラム

BPSK(英語: binary phase-shift keying)はPSKで最も単純な形式である。これは180°分離された2つの位相を使い、「2-PSK」とも呼ばれる。信号点がどこに置かれるかは必ずしも特に重要ではなく、そしてこの形ではそれらは実軸において0°と180°に示される。この方式は、誤った内容に復号されるには、致命的なほどの妨害波が必要であるため、全てのPSKの中で最も強力なものである。しかし、図にあるように1シンボルあたり1ビットのみの変調が可能であるため、帯域幅が限定されている場合高速のデータ転送には不適切である。


AWGN環境下におけるBPSKの符号誤り率(BER)を示すと以下のとおりになる:

P b = Q ( 2 E b N 0 ) {\displaystyle P_{b}=Q\left({\sqrt {\frac {2E_{b}}{N_{0}}}}\right)}

1シンボルにつき1ビットだけなので、これはシンボル誤り率(SER)でもある。

通信伝送路よってもたらされる任意の位相シフトがある状態で、復調器はどの信号点がどれかを伝えることができない。そのため、データは変調前にしばしば特異的に符号化される。
計算

バイナリデータは、以下の信号でしばしば伝達される:

s 0 ( t ) = 2 E b T b cos ⁡ ( 2 π f c t + π ) = − 2 E b T b cos ⁡ ( 2 π f c t ) {\displaystyle s_{0}(t)={\sqrt {\frac {2E_{b}}{T_{b}}}}\cos(2\pi f_{c}t+\pi )=-{\sqrt {\frac {2E_{b}}{T_{b}}}}\cos(2\pi f_{c}t)} バイナリ"0"を示す。
s 1 ( t ) = 2 E b T b cos ⁡ ( 2 π f c t ) {\displaystyle s_{1}(t)={\sqrt {\frac {2E_{b}}{T_{b}}}}\cos(2\pi f_{c}t)} バイナリ"1"を示す。 f c {\displaystyle f_{c}} は搬送波周波数

従って、信号スペース(signal space)は一つの基底関数によって表すことができる。

ϕ ( t ) = 2 T b cos ⁡ ( 2 π f c t ) {\displaystyle \phi (t)={\sqrt {\frac {2}{T_{b}}}}\cos(2\pi f_{c}t)}

1は E b ϕ ( t ) {\displaystyle {\sqrt {E_{b}}}\phi (t)} によって表現され、0は − E b ϕ ( t ) {\displaystyle -{\sqrt {E_{b}}}\phi (t)} によって表現される。この割り当てはもちろん、任意である。



四位相偏移変調 (QPSK) QPSKの信号空間ダイヤグラム。隣のシンボルと1ビットだけ異なる。

quaternary または quadriphase PSK、 4-PSK、4-QAMとも言われる[4]。QPSKは信号空間ダイヤグラムで4点使用し、円状に配置される。4段階の位相を用いて、QPSKは1シンボルにつき2ビットを符号化することができる。さらにグレイ符号を用いて符号誤り率を小さくできる。QPSKのビット誤り率は、BPSKと同じになる

P b = Q ( 2 E b N 0 ) . {\displaystyle P_{b}=Q\left({\sqrt {\frac {2E_{b}}{N_{0}}}}\right).}

しかしながら、BPSKと同じビット誤り率を達成するためには、電力を2倍必要とする。(2ビットが同時に送られるため)シンボル誤り率は次のように与えられる: P s {\displaystyle \,\!P_{s}} = 1 − ( 1 − P b ) 2 {\displaystyle =1-\left(1-P_{b}\right)^{2}}
= 2 Q ( E s N 0 ) − Q 2 ( E s N 0 ) {\displaystyle =2Q\left({\sqrt {\frac {E_{s}}{N_{0}}}}\right)-Q^{2}\left({\sqrt {\frac {E_{s}}{N_{0}}}}\right)} .

もし、信号対雑音比が高い(実用的なQPSKシステムのために必要であるような)ならば、シンボル誤り率は次のように近似される:

P s ≈ 2 Q ( E s N 0 ) {\displaystyle P_{s}\approx 2Q\left({\sqrt {\frac {E_{s}}{N_{0}}}}\right)}

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