伊方発電所(いかたはつでんしょ)は、愛媛県西宇和郡伊方町に所在し、四国電力が所有している日本の原子力発電所。伊方原子力発電所(いかたげんしりょくはつでんしょ)、伊方原発(いかたげんぱつ)とも呼ばれる。本記事では、以下「伊方原発」と表記する。 四国島最西部、佐田岬半島付け根付近の北側斜面に位置し、瀬戸内海(伊予灘)に面している。四国電力および四国地方唯一の原子力発電所である。国内原発で唯一内海に面する。 1号機(初号機)は1972年11月に原子炉設置許可を受け、1977年9月に運転を開始している。2017年に運転40年目を迎えることとなるが、四国電力では、1号機の新規制基準適合のための対策や、安全対策を図るための工事に必要な技術や費用などを検討していたが、運転期間延長の認可申請を見送り、2016年3月に1号機の廃炉を発表、同年5月10日をもって廃止した[1]。2号機は運転再開を前提としていたが[2]、ぎりぎりまで検討し[3]、新規制基準を満たすには大規模工事が必要で、かなりの投資をせざるを得ず、当時は運転延長認可を受けても60年運転が上限であり、投資回収リスクを払拭できず[4][5]、苦渋の判断であったがやむなく2018年5月23日に廃止した。 3基が稼働していた頃、伊方原発は「四国全体の電力の約4割以上をまかなう」と原発PRで謳われることがあった。実際の四国電力の設備容量合計から見れば2割余り[7]だが、定期点検などで休止することもあることと、通常は出力100%で定常運転するため、実際の発電ベース上では4割を越えることもあった。 番号原子炉形式定格電気出力初臨界運転開始運転終了施工・型式現況
概要
地震対策について:南海トラフの巨大地震や中央構造線の断層による地震などを調査し、最大規模の地震の揺れ(650ガル他)を想定している。重要な建物は頑固な岩盤上に設置しているため、地震の揺れは柔らかい地盤上の建物に比べ1/2から1/3程度となると想定している。
浸水対策について:最大の津波の高さは津波が重なり大きくなる場合など激しい条件でも8.1mと想定しており、海抜10mにある伊方発電所への影響はないと考えている。タンクの破損などによる浸水にも備え、水密扉(厚さ35cm)の設置や海水ポンプの浸水防止対策などを行っている。
冷却手段の確保について:冷却式非常用発電装置や複数の電源車を分散配備。配電線を海抜95mの変電所から2ルート敷設。複数の中型ポンプ車や水中ポンプを分散配備。
重大事故対策について:対応拠点として緊急時対策所を設置。格納容器内の水素爆発を防止するため、水素処理装置の設置。大型放水砲、大型ポンプ車の配備[6]。
発電設備
1号機加圧水型軽水炉56.6万kW1977年2月17日1977年9月30日2016年5月10日三菱・2ループ廃炉作業中
2号機1981年8月19日1982年3月19日2018年5月23日
3号機加圧水型軽水炉89.0万kW1994年3月29日1994年12月15日―WH、三菱・3ループ[8]2022年01月24日から運転再開[9]
年表
1972年(昭和47年)11月 - 初号機の原子炉設置許可。
1973年(昭和48年)6月 - 初号機の建設工事開始。
1976年(昭和51年)3月 - 四国電力・愛媛県・伊方町により、伊方原子力発電所周辺の安全確保及び環境保全に関する協定を締結(1985年4月と2013年8月に一部改定)[10]。
1977年(昭和52年)
1月 - 初号機が初臨界。
3月 - 2号機の原子炉設置許可。
9月30日 - 1号機(初号機)が運転開始。
1978年(昭和53年)2月 - 2号機の建設工事開始。
1981年(昭和56年)7月 - 2号機が初臨界。
1982年(昭和57年)3月19日 - 2号機が運転開始。
1986年(昭和61年)
5月 - 3号機の原子炉設置許可。
11月 - 3号機の建設工事開始。
1994年(平成6年)
2月 - 3号機が初臨界。
12月15日 - 3号機が運転開始。
2011年(平成23年)
4月末に3号機が定期検査に入り、7月10日予定だった再稼働は延期となった[11]。
9月4日には1号機も定検に入った[11]。
2012年(平成24年)1月13日 - 2号機が定期検査のため送電停止。
福島第一原子力発電所事故の影響により既に定期検査に入っている1号機および3号機の運転再開の目途が立たず、この日から伊方発電所の送電は全停止となる[12]。
2013年(平成25年)7月8日 - 3号機が原子力規制委員会に対し新規制基準への適合性確認申請。2016年3月23日に委員会の認可を受ける[13][14]。
2016年(平成28年)
3月25日 - 1号機の廃炉を決定[15][16]。3号機の再稼働に向けての使用前検査を原子力規制委員会に申請[1][13][15][17]。
5月10日 - 1号機の運転が終了[18]。
6月24日 - 3号機の再稼働に向けて、燃料装荷を開始[19]。
8月22日 - 3号機を定格熱出力で再稼働させた。7月17日に発生した1次冷却水系統のポンプ不具合のために遅れが生じた[20]。
2017年(平成29年)
6月28日 - 原子力規制委員会が1号機廃止措置計画を認可[21]。