企業の社会的責任
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「CSR」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「CSR (曖昧さ回避)」をご覧ください。

企業の社会的責任(きぎょうのしゃかいてきせきにん、: Corporate Social Responsibility; CSR)とは、企業倫理的観点から事業活動を通じて、自主的(ボランタリー)に社会貢献する責任のことである。
概要

CSRは企業が利潤を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者投資家等、及び社会全体)からの要求に対して、適切な意思決定をする責任を指す。CSRは、企業経営の根幹において、企業の自発的活動として、企業自らの永続性を実現し、また、持続可能な未来を社会とともに築いていく活動である[1][注 1]。企業の行動は利潤追求だけでなく多岐にわたるため、企業市民という考え方もCSRの一環として主張されている[2]

貢献度の指標としては功利主義的な社会的投資利益率(SROI)が挙げられる。数値指標はピグー税に議論されるような検証不可能性という問題が残る。

そこで、無責任な企業を発見し淘汰する消費者世論の社会的責任[注 2]、あるいは市民の社会的責任[注 3](いずれも略称は同じくCSR)が必要不可欠と考えられている。社会的責任投資(SRI)はより直接的に評価する。国際標準化機構(ISO)では、対象が企業に限らないという見地から、社会的責任[注 4]の呼称で国際規格 ISO 26000 を2010年11月に策定した。日本語にも翻訳され、JIS規格では JIS Z 26000 「社会的責任に関する手引」として2012年3月に制定された[3]。これについては2001年からの経緯を後述する。

最も基本的なCSR活動として挙げられるのは、企業活動について、利害関係者に対して説明責任を果たすことであるとされる。インベスター・リレーションズ (IR)は代表例である。環境問題に対する企業の責任が唱えられたのをきっかけに、様々なステークホルダーに対する責任が問題とされるようになった。環境(対社会)はもちろん、労働安全衛生・人権(対従業員)、雇用創出(対地域)、品質(対消費者)、取引先への配慮(対顧客・外注)など、幅広い分野に拡大している。国連では、このうちの「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」に関する10原則をグローバル・コンパクトとして提唱し、世界中の企業・団体に参加を呼びかけている。

CSRは、同族企業の多いドイツ帝国で生まれた考え方である。ワイマール憲法の第153条第3項には、所有権の社会的責任が規定され、企業のそれを基礎づけた。なお、ドイツの同族企業には100 %支配でINAベーリンガーインゲルハイムカール・ツァイスフォイトミーレヘラーなどがある。100 %に近いものでロバート・ボッシュ、7割支配ではダルムシュタットのメルクがある。所有者一族が多国籍のものではドドゥコ・グループがある。

フランスも、シュナイダーエレクトリックミシュランダッソーを代表とする同族企業が多く、ノブリス・オブリージュという考え方がある。21世紀に入ってからは、アメリカ合衆国で、ワールドコムエンロンなどの重大な企業の不正行為粉飾決算)が起こり、企業の社会的責任が一層強く意識されることとなった。

会社法において、株式会社につき、CSRをどのように扱うべきかについては議論がある。経営者は、法令の範囲内において株主の利潤を最大化すべき、という(少なくとも法学の世界においては)伝統的な考え方に対して、経営者がCSRを考慮することを積極的に認める見解がある。後者は、現代社会におけるCSRの重要性をその根拠とするものであるが、前者の立場からはCSRの名の下に経営者の権限濫用を許しかねない等の批判がある。もっとも、前者の見解はCSRを全く無視すべきというのではなく、あくまで株主の利潤の最大化の手段として考えるべきこととなる。

似たような概念にとして、企業による社会貢献活動フィランソロピーメセナがあるが、利益の一部を寄付することで社会的責任を果たすことができるわけではないので、これらは社会的責任とは区別して考えるべきものである。
CSRの多様性

CSRは地域、国家、企業により発展の仕方が異なる。アメリカでは、利害関係者に対して説明責任を果たし、会社の財務状況や経営の透明性を高めるなど、適切な企業統治とコンプライアンス(法令遵守)を実施し、「リスクマネジメント」、「内部統制」を徹底する。ヨーロッパでは、企業の未来への投資の一環として持続可能な社会を実現するため、環境や労働問題などについて企業が自主的に取り組む。これらの活動は相互補完的である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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