仮面舞踏会
著者横溝正史
発行日1974年11月
発行元講談社
ジャンル小説
国 日本
言語日本語
ページ数319
コードISBN 4041304385
ISBN 978-4041304389(文庫本)
ウィキポータル 文学
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示
『仮面舞踏会』(かめんぶとうかい)は、横溝正史の長編推理小説[注 1]。「金田一耕助シリーズ」の一つ。
本作を原作として、現在(2014年3月)までにテレビドラマ2作品が制作されている。 本作は1962年7月号から雑誌『宝石』で連載されるが、1963年2月号で横溝正史の風邪のため中断。その後、何度にもわたる改稿の末、1974年に書き下ろし作品として刊行された。角川文庫版の冒頭には「江戸川乱歩に捧ぐ」という一文がある。本作の連載を開始した1962年は作者が還暦の年で、乱歩は作者に「横溝は偉いもんだ、還暦の年になってまだ書いてる」と言ってくれたのに、「それを中絶したんじゃ乱歩にすまんと思った」と作者は述べている[1]。 本作の時代は昭和35年(1960年)に設定されており、金田一耕助が活躍する長編としては、比較的に新しい時代となる。軽井沢の別荘地を舞台に、旧華族、芸能人、音楽家、学者らを登場人物として、横溝長編としては怪奇色を極力抑えた作品である。警察側に屈折した若手エリートを配したり新機軸も多い。しかしながら、他の代表作である『犬神家の一族』や『獄門島』などと同じく、第二次世界大戦や血縁というものが重要な要素となっている。 作者は本作を自選ベスト10の7位に挙げており、その理由として、兄事する西田政治が「おまえの作品のなかでも上位にランクされるべきもの」と折紙をつけてくれたから、と説明している[2]。 2021年12月に作者の遺族から寄贈され、二松学舎大学が調査を進めていた資料の中から、本作の草稿(200字詰め原稿用紙660枚)が新たに発見された[3]。登場人物像などに、連載とも単行本とも異なる記述があるという[3]。2022年10月、吉備路文学館 金田一耕助が軽井沢で心中を試みた男女を発見し、片方の田代信吉を救った1959年(昭和34年)8月16日のこと、同じ軽井沢で元子爵で戦前の二枚目映画スター・笛小路泰久の死体が軽井沢のプールで発見された。酔ったうえでの事故として処理されたが、その前年の1958年(昭和33年)暮れに新劇俳優の阿久津謙三が交通事故で死んでおり、地元軽井沢署の日比野警部補は2人と過去に結婚・離婚している映画女優で銀幕の大スターの鳳千代子に疑いの目を向ける。 鳳千代子は、過去に4回の結婚・離婚歴を持っていた。彼女の最初の結婚相手である笛小路泰久とは美沙という娘をもうけ、美沙は笛小路の母・篤子の元で育てられるようになったが、笛小路は応召し、終戦後復員したものの映画界への復帰には失敗する。笛小路と円満に協議離婚した千代子は、その後も娘の美沙のために笛小路家に経済援助を行っていた。2番目の結婚相手は阿久津謙三で、同じ新劇女優の妻・藤村夏江を捨てさせて一緒になったが、これも長続きしなかった。3番目は洋画家の槇恭吾、4番目が作曲家の津村真二で、いずれも長く続かず離婚に至っている。 そして1960年(昭和35年)8月14日、千代子は飛鳥元忠公爵の次男で、戦後神門財閥を作り上げた財界の大物の飛鳥忠熈と恋愛中で、飛鳥は台風の襲来を迎えていた軽井沢の別荘に、千代子も近くの高原ホテルを訪れていたところ、その軽井沢の一角で槇恭吾が彼の別荘のアトリエで殺されているのが発見された。飛鳥忠熈は千代子の夫であった男が次々に死んだ件について金田一耕助に調査を依頼していたのだが、その金田一がちょうど軽井沢に滞在していたので槇の件についても捜査を依頼した。 地元警察の日比野警部補や近藤刑事が捜査を行っている中、金田一たちが現場に駆けつけると、槇は鍵のかかったアトリエの中で机の上に突っ伏して死んでいた。死因は青酸カリを服用されたものであった。槇の死体を移動した机の上には朱色と緑色のマッチ棒が、そのままの形であったり折られたりして、意味ありげに並べられていた。死体の尻には蛾の鱗粉が付着していた。 捜査の結果、槇は津村真二の音楽会の切符を美沙に渡すために、前夜切符を取りに別荘に使いをやっていたこと、その津村が失踪していることが分かった。アトリエ脇に止まっていた車のトランクにつぶれた蛾が発見され、さらに津村のバンガローからもおびただしい蛾と3本のマッチ棒が発見されたことから、槇は津村宅で殺された後、トランクに入れられてアトリエまで運ばれたものと思われた。事件後には黒ずくめの殺し屋スタイルの男が目撃されていた。殺し屋スタイルは津村愛用のファッションであった。さらに、バンガローの窓の外には津村の元弟子であり、昨年心中未遂した田代信吉のスカーフがぶら下がっていた。 そして軽井沢には他にも美沙と祖母・篤子、忠熈の娘婿夫妻など忠熈の関係者たち、津村の弟子の立花茂樹、さらには阿久津の先妻の藤村夏江など多くの関係者が集っており、犯人探しは混迷を極める。
概要
ストーリー
登場人物
金田一耕助(きんだいち こうすけ) - 私立探偵
等々力大志(とどろき だいし) - 警視庁警部
山下(やました) - 長野県警警部
日比野(ひびの) - 長野県警軽井沢署警部補、捜査主任
近藤(こんどう) - 長野県警軽井沢署刑事
古川(ふるかわ) - 長野県警軽井沢署刑事
鳳千代子(おおとり ちよこ) - 女優
飛鳥忠熈(あすか ただひろ) - 元公爵家の御曹司、千代子の恋人
飛鳥寧子(あすか やすこ) - 忠熈の妻、故人
飛鳥熈寧(あすか ひろやす) - 忠熈の息子、イギリスに留学中
神門雷蔵(しんもん らいぞう) - 寧子の父、神門財閥の創始者、故人
秋山卓造(あきやま たくぞう) - 忠熈の部下
多岐(たき) - 飛鳥家女中
桜井熈子(さくらい ひろこ) - 忠熈の娘
桜井鉄雄(さくらい てつお) - 熈子の夫
栄子(えいこ) - 桜井家女中
的場英明(まとば ひであき) - 考古学者
村上一彦(むらかみ かずひこ) - 的場の弟子
笛小路泰久(ふえのこうじ やすひさ) - 映画俳優、元子爵、千代子の最初の夫
笛小路篤子(ふえのこうじ あつこ) - 泰久の継母
笛小路美沙(ふえのこうじ みさ) - 泰久と千代子の娘
里枝(りえ) - 笛小路家女中
阿久津謙三(あくつ けんぞう) - 新劇俳優、劇団「草の実座」座長、千代子の2番目の夫
藤村夏江(ふじむら なつえ) - 阿久津の先妻
樋口操(ひぐち みさお) - 夏江の友人
槇恭吾(まき きょうご) - 洋画家、千代子の3番目の夫
根本ミツ子(ねもと ミツこ) - 槙の別荘の管理人
津村真二(つむら しんじ) - 作曲家、千代子の4番目の夫
篠原克巳(しのはら かつみ) - 新現代音楽協会理事
立花茂樹(たちばな しげき) - 芸術大学音楽部作曲科の学生、津村の弟子、一彦の友人
田代信吉(たしろ しんきち) - 芸術大学音楽部作曲科の学生、心中未遂経験あり
小宮ユキ(こみや ユキ) - 田代の恋人、田代と心中し死亡
テレビドラマ
1978年版
監督長野卓
出演者古谷一行
長門勇
草笛光子
木村功
エンディング茶木みやこ「あざみの如く棘あれば」
製作
プロデューサー青木民男
制作毎日放送
放送
放送国・地域 日本
放送期間1978年6月3日 - 6月24日
放送時間土曜日22:00 - 22:55
放送分55分
回数4
テンプレートを表示
『横溝正史シリーズII・仮面舞踏会』は、TBS系列で1978年6月3日から6月24日まで毎週土曜日22時 - 22時55分に放送された。全4回。五社協定の廃止から10年近く経過したこの時期のテレビドラマとしては珍しく、東宝所属または元所属の俳優を5人も出演させている。