仮面劇場
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仮面劇場
著者
横溝正史
発行日1938年
ジャンル小説
日本
言語日本語
ページ数242

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『仮面劇場』(かめんげきじょう)は、横溝正史の長編推理小説。およびそれを原作としたテレビドラマ作品。

これまでにテレビドラマ1作品が制作されている。
概要

原型となる短編作品は1938年10月から11月まで『サンデー毎日』に『仮面劇場』として連載され、1942年7月に八紘社杉山書店から単行本として刊行される際に『旋風劇場』に改題したものである。この改題は「時局からして仮面などとは穏やかでない」という理由によるもので、内務省の監視に対応するための出版側の自主規制と考えられている。その後、大幅に改稿して長編『暗闇劇場』として1947年8月に一聯社から刊行され、1970年10月に講談社版『横溝正史全集2』に収録される際に改題して当初の『仮面劇場』に戻った[1][2]
ストーリー

6月12日日曜日、遊覧船で乗り合わせた大道寺綾子と由利麟太郎は、小豆島沖で生きながら水葬されている盲聾唖の美少年・虹之助を発見する。資産家未亡人である綾子は虹之助を鎌倉の邸宅に引き取ることにするが、そのころには天神祭が近づいていた。7月15日、虹之助を連れて天神祭の河渡御を舟で見物していた綾子は婚約者・志賀恭三の従妹にあたる人気歌手・甲野由美に遭遇する。虹之助は由美から漂う丁字香に反応して興奮し、オールでなぐりかかろうとする。

綾子が8月2日に鎌倉に戻ると恭三が迎えに来ていた。冒険家である恭三が冒険行のとき以外に寄宿している甲野家が、綾子が虹之助を連れて戻る直前に西荻窪から鎌倉へ転居したという。甲野家は小豆島で醤油醸造を営んでいたが、先代・四方太の死後、家業を親戚に譲って未亡人・梨枝子は甲野兄妹宅へ移っていた。さらに、そのころから小豆島にいた恭三の妹・琴絵が行方不明になっている。甲野家の人々は虹之助の正体を知っている様子だが、それを明らかにしようとはしない。

8月15日、綾子が虹之助を連れて訪ねた甲野家は梨枝子を残して出払っていた。皆を探しに出た綾子が由美を見つけて虹之助を残してきたことを告げると、由美は慌てて駆け戻る。家では梨枝子が毒殺されたうえ、梨枝子が押絵を作っていた羽子板を虹之助が振り回して暴れたらしく血まみれになっていた。

綾子に電報で呼ばれた由利は甲野家の人々に琴絵のことを尋ね、アルバムの写真を確認しようとすると琴絵の顔だけが切り取られていた。さらに、興奮状態で一室に保護されていた虹之助がいなくなり、足跡を追うと海岸に続いていて沖合にボートが流されていた。ボートでは甲野静馬の画家仲間で甲野家に同居している鵜藤が毒殺されており、虹之助は鵜藤にバイオリンの弦で首を絞められていたが死んではいなかった。

この騒ぎの間に恭三に電報が来ており、恭三は返信を打っていた。由利はその電報の文面から、琴絵が千住にある鈴木という精神病院にいることを突き止める。由利と三津木が渡船で病院へ向かう途中、虹之助そっくりの少女を見つける。それは病院を抜け出した琴絵だった。由利たちは追おうとするが、コートを着た人物がモーターボートで連れ去ってしまう。

琴絵の追跡を諦めて鈴木病院を訪ねた由利たちは、小豆島出身で甲野家や志賀家の事情に詳しい院長から、志賀兄妹の父が妻と四方太の不義を疑ったあげく放蕩に身を持ち崩し、獄中死した経緯を聞かされる。

1週間後、虹之助を連れて歩いていた綾子は、稲村ヶ崎の崖の上で久々に道具を出してきて絵を描いていた静馬に遭遇する。静馬と別れて砂浜へ降りると恭三が現れて旅に出ることを打ち明け、その前に虹之助を遠ざけるよう求める。そのとき静馬が崖の上から転落してきた。

そのころ鈴木院長が、琴絵がよく行っていた科(しぐさ)[3]が由利たちが帰ったあと気になったといって、改めて由利を訪ねてきた。それは、虹之助が失明前に修得していた発声と触覚による読唇によって他人と言葉を交わせることを示すものであった。そこへ綾子から凶事を知らせる電話が入る。

静馬は毒殺されていたが摂取経路が判らず、警察は最後に接触したという理由で恭三を逮捕していた。犯行の全貌に気付いていた由利は拘留されていた恭三を連れ出させ、由美がいる甲野家へ急ぐ。由美は久々にフルートを吹いていたが、その音が突然途絶える。フルートに塗られた毒で殺されるところであったが、由利が準備していた吐瀉剤で命は取り留める。

大道寺家には琴絵と虹之助が残っていた。琴絵を誘拐したのは綾子であった。恭三が甲野家との間の秘密を語ろうとしないため距離が縮まらないことに苛立った綾子が秘密を聞き出そうとしていたのである。2人を連れてくるべく家に戻った綾子は、虹之助が言葉を話せ、一連の事件の犯人でもあることにも気づく。虹之助も綾子に気づかれたことを察して頸を絞めるが、殺すには至らなかった。

庭に出ようとした虹之助を琴絵が外へ連れ出した。琴絵はボートを見つけて沖へ出る。皆が呼んでいる、その中に恭三の声もあると琴絵に聞かされた虹之助は義眼に隠していた毒薬を取り出し、ボートの上で琴絵と心中する。

虹之助は、志賀兄妹の父が妻と四方太の不倫を疑い、復讐として梨枝子と通じて産ませた子供である。九州の山奥の温泉で秘密に出産して山窩に里子に出されたが、小豆島へ戻ってきたのはおそらく甲野家に復讐するため。追い出すわけにもいかず屋敷内の土蔵に幽閉していたところ、琴絵と恋に落ちてしまった。恭三は虹之助を殺してしまおうと考えたが、それに気づいた梨枝子が静馬と鵜藤を口説き、誰かに救われることを期待して水葬礼にしたのである。

恭三と綾子は結婚し、声楽の修業をする由美を後見するためパリへ旅立った。
登場人物

虹之助 - 「盲にして聾唖なる虹之助の墓」と記された位牌と共に、生きながら水葬にされ、東部瀬戸内海巡りの観光船に救助された、三重苦の美少年。

大道寺綾子 -
鎌倉の中御門に屋敷を構える汽船会社重役・大道寺慎吾の未亡人。没落した男爵家の娘。虹之助を最初に発見し、引き取って教育を施そうとする。

志賀恭三 - 世界中を駆けずり回っている冒険家。甲野兄妹の従兄(母親同士が姉妹)。綾子が再婚を考えている相手。

志賀琴江 - 恭三の妹。甲野四方太の死後、恭三が東京へ連れて行ったあと行方不明。

甲野由美 - 有名な女流歌手。西荻窪に居住していたが、虹之助が大道寺家に来る直前に鎌倉へ転居してきた。

甲野静馬 - 由美の兄。洋画家で春陽会の会員。由美と共に鎌倉へ転居してきた。

甲野四方太 - 甲野兄妹の父。物語が始まる前月に死去。小豆島の醤油醸造元の名家。子供たちが芸術の道に進んだため、醸造事業は親戚に譲るよう手配していた。

甲野梨枝子 - 甲野兄妹の母で、志賀兄妹の母の妹。夫・四方太の葬式を済ませると小豆島を出て子供たちと同居している。病で足腰が立たない。

鵜藤五郎 - 静馬と同郷の画家仲間で、甲野家に書生のような形で同居している。

君江 - 綾子の母方の叔母。夫と死別後、大道寺家の家事一切を切り盛りしている。

鈴木(院長) - 千住で精神病院を開業している医者。志賀恭三とは同郷の古い友人。父親も小豆島で医者をしており、甲野四方太の親友だった。

由利麟太郎 - 私立探偵。かつて警視庁の捜査課長であった。

三津木俊助 - 新日報社の花形記者。由利先生と組んで多くの事件を解決しており、本作でも甲野家の事情などを調査する。

江馬(警部) - 梨枝子殺害事件に司法主任として関わる。由利先生の名声を知っており、協力的。

原型作品からの加筆内容


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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