代替肉
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肉の代わりにテンペを用いたテンペバーガー豆腐を代替肉とした酢豚大豆タンパクで作ったミートパイ

代替肉(だいたいにく)とは、従来の家畜肉の代替として作られた食品のことである。代替肉は世界人口の増加や畜産に伴う環境負荷動物福祉などの解決策として注目されている[1][2]

植物性原料の魚介類乳製品鶏卵なども含めて「代替食品[3]」と総称されることもある。代替肉には大きく分けて二種類あり、大豆などの植物性原料を使い、肉の食感に近づけたプラントベース(植物由来)食品と、動物の細胞培養して作る培養肉など動物細胞ベースの代替肉がある。また、マイコプロテイン(菌類由来のたんぱく質)も注目を集めている[4]。一般的に、植物性のものが代替肉としてよく知られている[5][6][1]。このページでは培養技術以外の代替肉(魚介類含む)を中心に述べる。「培養肉」、「代替乳」、および「代替卵」も参照

日本では動物由来の成分が含まれている場合でも、主な原材料が植物由来である場合は、プラントベース(植物由来)食品に含める場合もある[7][8][6]

プラントベースドミート(PBM)[9]、フェイクミート、大豆ミート[9]、大豆肉、ソイミート(soy=大豆)、疑似肉、植物性タンパク、アナログミート、ダミーミートなどとも呼ばれる。

代替肉市場は国際的に拡大しており、政府による投資も行われている。特にオランダ、オーストラリア、イギリス、カナダ、シンガポール、デンマーク、イスラエルの7か国は積極的で、これら7か国で、代替肉への投資は8億ドルを超える[10]

2021年時点で、代替食品に取り組む会社は世界780社以上にのぼる[11]。アジアでは数年前まで代替肉開発を行うスタートアップの資金調達はゼロだったが、2021-2022年にかけて7億ドル以上を資金調達した[12]。大手食肉企業もまた代替肉市場に参入する。JBSTysonCargillを含む米国最大の6つの食肉会社はすべて、代替肉会社に投資したり、独自の代替肉製品ラインを立ち上げている[13]
技術

発酵技術[14][15]や、マイコプロテイン(菌類由来のたんぱく質)を利用したもの[4]、藍藻 (シアノバクテリア) の繊維で質感のタンパク質を作り出したもの[16]などの研究が進められている。
背景

FAO(国連食糧農業機関)の統計によると[17]、年間で約800億頭の陸生家畜が食用にと殺されている。魚については、養殖と天然を合わせて毎年1兆?3兆匹が食用になっている[18]。2050年には世界人口が100億人に達すると言われており、FAOは世界の食肉消費が2050年までに73 %、乳は58 %増えるだろうと予測[19]する。しかし、この膨大な動物消費が、公衆衛生や動物福祉への懸念、気候への影響な多く問題に直面しているとOECD-FAOの2023 年報告書は指摘している。そのため肉の消費が2075年頃に減少すると推測する[20][21]
環境負荷

世界銀行が2024年に発表したデータによると気候緩和戦略として効果的な方法のトップ1が植林と再植林、続いてトップ2が代替タンパク質だという[22]。48か国210名の気候科学者、食品/農業の専門家らが参画した調査によると、パリ協定の目標に沿うためには、2036 年までに世界の家畜からの排出量を 61% 削減する必要があるという[23]。地球上の居住可能な土地の約40 %[24]畜産業に使われており、多くの専門家は、森林破壊温室効果ガス排出、水資源の大量消費など畜産業が環境破壊の主因の一つだと指摘する[25][26]。食品の環境負荷に関する研究によると、植物性タンパク質は従来の肉よりも気候、水、土地への影響が小さい[27]。肉を植物性タンパク質に置き換えた場合、温室効果ガス排出量は86 - 99 %少なく、土地利用は97 - 99 %少なく、大気汚染は70 - 99 %少なく、毒性のある化学物質の生産量は83 - 99 %少なく、水の使用量は95 - 99 %削減できる[28][29]。2022年5月に発表された研究は、畜産由来の肉を、代替肉に移行すれば、2050年までに年間の森林減少を半減させると同時に温室効果ガスの排出量を削減できるとする[30]

2006年にFAO(国際連合食糧農業機関)は「畜産業はもっとも深刻な環境問題の上位2.3番以内に入る」とする調査報告書を発表。以降も畜産業は拡大を続けている[31]。2019年12月、科学者らは、畜産業がこのまま拡大し続けるなら2030年には気温1.5度上昇するのに必要な二酸化炭素の49 %を畜産業が排出することになると述べ、「これ以上家畜生産を増やさない」というピーク点を設定すべきだと表明した[32]

2019年1月16日付の英医学雑誌『ランセット』は、食の改革を行わないと、地球に「破滅的」なダメージが待ち受けているとして、「野菜を多くとり、肉、乳製品、砂糖を(半分に)控えるよう」に提案する論文を発表[33][34]デンマークはランセットの提案に沿って、2021年に公式の食事ガイドラインを更新、成人は週に肉を350g(ハンバーガー約3個に相当)を推奨した[35]北欧閣僚理事会もまた、2023年に、肉を減らし植物ベースの食事を推奨する栄養ガイドラインを発行した[36]。2022年の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)では、議長国・エジプトが、地球規模の気候変動による被害を軽減するための行動計画を発表。計画には、植物由来の原料を使った「代替肉」の市場の拡大が盛り込んだ[37]。2023年のCOP28では、ケータリングの2/3を植物由来のメニューが提供されている[38]

2019年、世界経済フォーラムは、代替肉が温室効果ガス排出量の大幅な削減につながるとして、食用肉から代替肉への切り替えを主張[39]。2021年には国連食料システムサミットでは、畜産業と持続可能の両立に関する議論が白熱した[40]。また、世界有数のシンクタンクCSISは、畜産業における人獣共通感染症薬剤耐性リスクをあげ、「代替タンパクへの投資は、米国に戦略的利益をもたらす」としている[41][42]。畜産のもたらす環境問題の詳細については「家畜#家畜と環境」を参照
動物倫理

動物福祉や脱動物搾取と言う考えは、代替肉市場の拡大のトリガーとなっている[43][44][45]

2018年に行われた、ドイツ、スペイン、イギリス、フランスで、ベジタリアンの動向に関する調査の四か国合計データによれば、「肉を食べない」または「消費を減らす」と回答した動機として一番多かったのが、「殺すための飼育は残酷なため(49 %)」、次が「飼育条件の悪さのため(12 %)」、続いて「肉への嫌悪感(10 %)」、「環境への影響(8 %)」「健康(3 %)」という結果であった[19]

農畜産業振興機構が2021年1-3月にかけて実施した8カ国におけるアンケート調査によると、肉を食べない割合はドイツで13 %と最も高く、次いで米国が11 %、日本が9 %となった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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