仁義の墓場
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仁義の墓場
Graveyard of honor
監督
深作欣二
脚本鴨井達比古
松田寛夫
神波史男
原作藤田五郎
出演者渡哲也
音楽津島利章
撮影仲沢半次郎
編集田中修
製作会社東映東京
配給東映
公開 1975年2月15日
上映時間94分
製作国 日本
言語日本語
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『仁義の墓場 』(じんぎのはかば)は、1975年東映が制作した日本映画藤田五郎の同名小説が原作。
概要

日活アクションスターとして活躍し、日活退社後は松竹東宝の諸作品で主演・準主演として活躍していた渡哲也東映初主演作品。監督は1973年からの『仁義なき戦い』シリーズで「実録ヤクザ映画」ブームの先鞭を切った深作欣二で、監督の起用は渡本人の希望による[1][2]。 

仁義、組織、盃、掟に牙を剥き、戦後ヤクザの語り草ともなった実在のヤクザ石川力夫の型破り、かつ破滅的な生き様を凄惨な暴力描写で描き通した作品で、実録ヤクザ路線の極北と評される[3][4]。公開当時の興行成績は振るわなかったが[5]、後にその一種異様な迫力が評価され[6]、キネマ旬報「オールタイムベスト・ベスト100」日本映画編(1999年版)では、38位に選出されるなど作品の評価は高い。

翌年には同じ深作監督による続編的作品(物語の連続性はない)『やくざの墓場 くちなしの花』も制作されている。
あらすじ

終戦直後の新宿は、ヤクザと外国勢力との抗争が続く混乱の只中にあった。テキ屋一家「河田組」の石川力夫(渡哲也)は兄弟分の今井幸三郎(梅宮辰夫)、杉浦誠(郷^治)と、中野を拠点とする三国人の愚連隊「山東会」を襲撃しテラ銭を強奪、さらに抗争によって双方摘発される。しかし治安維持に苦慮する警察の計らいで自分らのみ釈放され、まんまと同会を壊滅に追い込んだ彼らは中野今井組を興す。そして石川はこの抗争の最中に知り合った、置屋の若い女、地恵子(多岐川裕美)を強姦して情婦にする。

石川の凶暴性を持て余した組長の河田徹(ハナ肇)は、「池袋親和会」の青木政次(今井健二)を消せと示唆する。石川は青木の情婦を犯し、青木を叩きのめす。大幹部・梶木昇(成田三樹夫)を筆頭に復讐のため集結する親和会勢力に一大抗争の危機を迎えるが、河田に縋りつかれた大親分・関東野津組組長 野津喜三郎(安藤昇)の発案によって、進駐軍に鎮圧するよう仕向けることで事なきを得た。

杉浦は野津の盃を受け、組織に同化していく。破壊衝動の収まらない石川は賭場で悶着を起こし、野津から一喝される。逆恨みから野津の車に放火した石川は河田から激しい制裁を受ける、逆上して親分である河田を刺してしまう。今井にかくまわれる石川だが、その身を案じた妻・地恵子が警察に通報したことから逮捕される。

収監された石川を、親に斬りつけた不義理者として周囲の懲役囚たちがつけ狙う。不安から相次いで暴力騒ぎを起すも、一年六ヶ月の懲役を受けた後、出所した石川は河田組から十年間の関東所払いを食らい、地恵子に体を売らせて獲た金を持って大阪へ移る。この地で肺を病んだ石川は、釜ヶ崎のドヤ街で娼婦からヘロインを覚え中毒となり、売人を襲撃しようとしたところでやはり中毒患者の小崎勝次(田中邦衛)と出会い、意気投合する。

一年後、すっかり身体を蝕まれた石川らは無断で帰京し、今井組の賭場で騒動を起こす。今度も石川をかばおうとした今井ではあったが石川の上京を嗅ぎつけた河田から牽制され、なんとか石川を東京から遠ざけようとする。不実を責める石川に堪忍袋の緒が切れた今井は彼をなじり、怒りに我を忘れた石川は今井を刀で斬りつけ重傷を負わす。逃走後、再び現れた石川は今度は今井を射殺し、制止しようとした彼の妻にも右手に大怪我を負わせる。野方のアパートに潜伏していた石川と小崎を、警官隊はもちろん、河田組員、今井組員が包囲する異様な雰囲気の中、石川は無差別に発砲を繰り返す。薬が切れ禁断症状となった小崎を見て追い詰められ石川は、弾も尽き自棄になって表へ飛び出したところをもみくちゃの状態で取り押さえられる。警察病院に収容された後、彼は殺人及び殺人未遂で懲役十年の刑を宣告される。

昭和二十六年一月二十九日、肺を病んだ体に鞭を打って保釈金を工面するなど石川を献身的に支え続けた地恵子は、心身を磨耗し尽くして自殺した。刑務所内で胸部疾患が悪化した石川が、病気治療のため仮出獄を許される、わずか三日前のことであった……

火葬を終え、地恵子の骨を、手を震えさせながら一つ一つ箸で摘み骨壷に納める石川のサングラスに隠された両目から流れる涙は、頬を伝って灰の上に滴り落ちた。地恵子の骨壷をぶら下げ、死神のように彷徨う石川。河田組に現れた石川は、地恵子の遺骨を齧りながら「そろそろ一家を興したい」と信じられぬ言葉で河田に土地と金をねだる。さらに幹部の神野、松岡からも金を獲た石川は、石材店を訪れ墓石を作るよう要請する。そして「墓にはこう彫ってくれ」と言いながら一枚の紙片を渡した。別の日に石材店を訪れ、黙々と墓石を刻む老石工の横に佇んでいる石川は、なぜか小声で一人笑い、石工に不審がられるのだった。

亡き今井の組を訪れた石川は仏壇を拝ませてくれと頼むが、未亡人はかつて大怪我を負わされた右手を震わせてその願いを固辞する。

墓参りに訪れたところを河田組組員に襲撃され負傷した石川だが、それでも驚異的な生命力で生き延び、病院生活を経て府中刑務所に収監された。そして昭和二十九年一月二十九日、石川は周囲の制止を振り切って刑務所屋上から身を投じ、二十九年の短い生涯を自らの手で終えた。その日は奇しくも亡妻・地恵子の三回忌の日であった。

刑務所の独房内には、石川が書いた遺書が残っていた---「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」

新宿・常円寺境内。石川が建てた自分と地恵子、そして今井の墓石がある。そこにはなぜだか「仁義」の二文字が刻まれていた。その墓を訪れる人は、もう誰もいない。
出演者

石川力夫渡哲也

今井幸三郎:梅宮辰夫

石川地恵子:多岐川裕美

大阪の娼婦:芹明香

今井照子:池玲子

田村卓司:山城新伍

吉岡安夫:室田日出男

遠山敏:曽根晴美

青木政次:今井健二

杉浦誠:郷^治

河田の妾:小林千枝

警察署長:浜田寅彦

岡部:玉川伊佐男

徐辰:汐路章

親分:伊達三郎

夏子:衣麻遼子

米軍通訳:中田博久

売人:藤山浩二

警察次長:近藤宏

石工:三谷昇

河田組組員:浜田晃

野方署署長:河合絃司

親和会組員:日尾孝司

三国人:三重街恒二

武田:土山登士幸

米軍将校:ウィリアム・ロス

河田組組員:苅谷俊介

警官:相馬剛三

三国人:久地明佐藤晟也

刑事:関山耕司

中盆:滝島孝二

神野:前川哲男

今井組組員:花田達

親和会組員:森正親

野津組組員:山之内修

哲:畑中猛重

五郎:城春樹

親和会組員:須賀良、はやみ竜次

三国人:檀喧太

秀:伊藤辰夫

谷:高月忠

親和会組員:亀山達也

三国人:大泉公孝

野津組組員:佐川二郎

今井組組員:溝口久夫、幸英二

売人:沢田浩二

親和会組員:影信之介

河田組組員:横山繁、清水照夫

今井組組員:青木卓司

野津組組員:桐島好夫

河田組組員:浅野謙次郎

看守:五野上力

河田組組員:高島志敏

賭場の客:木村元保

パンスケ:謝秀容、三城貴子、内山朋子、田沢祐子、章文栄

女将:伊藤慶子

親和会組員:木村章平

ボーイ:木村修

看守:山田光一

梶木昇:成田三樹夫

小崎勝次:田中邦衛

河田徹:ハナ肇

野津喜三郎:安藤昇

スタッフ

企画:吉田達

原作:
藤田五郎


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