人間と市民の権利の宣言
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この項目では、フランスの人権宣言について説明しています。その他の用法については「人権宣言」をご覧ください。
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1789年の人間と市民の権利の宣言(ジャン=ジャック・フランソワ・ル・バルビエの絵画)

人間と市民の権利の宣言(にんげんとしみんのけんりのせんげん、: Declaration des Droits de l'Homme et du Citoyen)は、人間の自由平等人民主権言論の自由三権分立所有権の神聖など17条からなるフランス革命の基本原則を記したものである。単に人権宣言(じんけんせんげん)とも呼ばれ、通常は世界人権宣言などの他の人権宣言と区別するためにフランス人権宣言と呼ばれる。

憲法制定への第一段階として、1789年8月26日憲法制定国民議会によって採択された。
宣言の採択

ラファイエットによって宣言が起草された当時、宣言は絶対王政から立憲君主制への移行の一部、つまり憲法制定の前段階として意図されていた。1789年の理念を体現するもので、1791年憲法の基調となった。しかしすぐにフランス王国共和制になり憲法も代わったので、この文書は2度も全面的な修正をうけた。基本精神は残しつつも、1789年の人権宣言が法体系のなかに組み込まれていた時期は短い。

宣言で述べられた諸原理は、個人主義ロック抵抗権の考え方、ルソーによって理論化された社会契約モンテスキューによって支持された権力分立といった啓蒙時代の哲学的、政治学的諸原理に由来する。

宣言は、ジョージ・メイソンの手になる1776年6月12日に採択されたバージニア権利章典や、1776年7月のアメリカ独立宣言にもまた基づいている。
宣言の要旨

諸原理のこの言明は、かつて起こったよりも非常に過激な社会の再秩序化(re-ordering of society)の核心を含んでいる。バスティーユ襲撃から6週間そして封建制廃止から3週間後、宣言は国民主権と機会均等の教義を押し出た。すなわち、第三条―いかなる主権の原理も本質的に国民に存する。どの団体も、どの個人もそこから明確に発しないような権威を行使することはできない。

これは、君主政の政治的理論が王権神授説であった前革命的状況と対照をなしている。第六条―(中略)全ての市民は、法の下の平等にあるので、彼らの能力に従って彼らの徳や才能以上の差別なしに、全ての公的な位階、地位、職に対して平等に資格を持つ。

重ねて、これは三部会(上級聖職者つまり司教司祭助祭貴族、そして第三身分として知られる残余の人々。前二者が特権を持つ)における社会の前革命的区分と好対照をなしている。特に、貴族や他の特権階級に生まれ、そのために特別な権利を享受する(あるいは剥奪される)という人民の理念と矛盾をなす。

全ての市民は「自由所有、安全、圧制への抵抗」の権利を付与されている。宣言は、「…各人の自然権の行使は、社会の他の構成員にこれらの同一の権利の享受を保証するという限界だけしか持たない」という事実に法の必要が由来することを論じている。従って、宣言は、法を「一般意志の表明」として見、権利のこの平等性を促進することと「社会に対して害のある行為だけ」を禁止することを意図していた。そして、第十六条―権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない。

宣言はまた、先行するアメリカ合衆国憲法や同年に提案された権利章典に類似のいくつかの条項を提出していた。合衆国憲法のように、宣言は、共同の防衛に備える必要についての議論と課税についてのいくつかの広範な原理を述べている。宣言はまた、いかに公益信託を果たしたかに関する公的行為者 (public agents) からの説明への公的権利 (public right) を明示している。合衆国権利章典のように、宣言は、刑法の「事後的な ex post facto」適用に備え、無罪の推定言論と出版の自由、「[宗教上の意見の]表明は法によって設立された公的秩序を乱さないことを規定された」信教の自由の少し弱い保証といった原理を打ち出している。宣言は、収用権 (public right of eminent domain) に反対して所有権 (rights of property) を主張している。すなわち、第十七条―所有は不可侵で神聖な権利であるので、法的に示された公的必要性が明白にそれを要求する場合や、公正で優先的な保障 (just and prior indemnity) の条件の下でなければ、何人も私的使用を奪われえない。

ただし、この宣言において人権が保障されていたのは、「市民権を持つ白人男性」のみである(Homme=「人」=「男性」、Citoyen=「男性市民」)。これは、当時の女性奴隷有色人種を完全な人間として見なさないという観念に基づくものである。これに対し、劇作家オランプ・ド・グージュは、女性にも市民権を与えてその人権を保障するよう要求する、人権宣言を模した17か条からなる宣言文「女権宣言」(女性および女性市民の権利宣言、フランス語: Declaration des droits de la femme et de la citoyenne)を発表した[1]
今日への影響

フランス共和国憲法1958年10月4日に採択。別名「第五共和政憲法」)の前文によれば、宣言に述べられた諸原理は立憲的価値 (constitutional value) をもっている。多くの法律や規則は、それらが「憲法院」(Conseil Constitutionnel) や国務院 (コンセイユ・デタ Conseil d'Etat) によって解釈されうるようなそれらの原理に従っていなかったためにとり消された。

1789年の宣言における多くの原理は、現今でも広範囲に及ぶ含蓄をもつ。市民間での不要な差を設けるようにみえる課税の立法や実施は、反立憲的として取り消される。また、民族的な根拠での積極的差別是正措置 (positive discrimination) の提案は、その内容が実施された場合、生まれによってより多くの権利を享受する人々の民族的範疇を設けることになるために、平等の原理を侵害するとして却下される。
遺物

2003年、ユネスコは「世界の記憶」に1789年の宣言の文書を登録した。
翻訳

山本桂一「人および市民の権利宣言」高木八尺・末延三次・宮沢俊義編『人権宣言集』所収、岩波文庫、1957年

樋口陽一・吉田善明編『解説世界憲法集』所収、三省堂、初版1988年、改訂版1991年、第3版1994年、第4版2001年

辻村みよ子「人および市民の権利宣言」初宿正典・辻村みよ子編『新解説世界憲法集』所収、三省堂、初版2006年、第2版2010年、第3版2014年、第4版2017年

高橋和之「人および市民の権利宣言」高橋和之編『[新版]世界憲法集』所収、岩波書店、初版2007年、第2版2012年

石井三記「【資料】一七八九年フランス人権宣言試訳
」『名古屋大學法政論集』255巻、2014年3月28日

出典^ オリヴィエ・ブラン、辻村みよ子訳『女の人権宣言―フランス革命とオランプ・ドゥ・グージュの生涯』岩波書店、1995年、237-238頁。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-00-000256-2


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