人斬り
Hitokiri
監督五社英雄
脚本橋本忍
原作司馬遼太郎『人斬り以蔵』(参考文献)
製作村上七郎、法亢堯次
『人斬り』(ひときり)は、1969年(昭和44年)8月9日公開の時代劇映画。監督は五社英雄。製作はフジテレビジョン+勝プロダクション。配給は大映[5][6]。司馬遼太郎の短編『人斬り以蔵』を参考文献にしたオリジナル作品で、脚本は橋本忍が担当した[6][7]。この年に劇場用映画製作に進出したフジテレビが第1作『御用金』に続いて放った第2作目で[6][8][9]、勝プロダクション初の時代劇製作映画でもある[10][注釈 1]。公開当時は映画倫理管理委員会より成人映画(映倫番号15909)の指定を受けた[11]。
動乱の幕末を舞台に、下級武士出身ながらも京の都を震撼させ「人斬り以蔵」の名を轟かせた土佐最強の暗殺剣士・岡田以蔵の半生を、土佐勤皇党の党首・武市半平太との関係を基軸に描いた娯楽歴史劇である[6][7][12]。キャストは勝新太郎、仲代達矢、三島由紀夫、石原裕次郎といった豪華な顔ぶれで、特に本業が俳優でない三島の起用が大きな話題を呼んだ[6][7][12][13]。
同じく壮大なスケールの歴史劇で同年3月に封切られた三船敏郎率いる三船プロ製作の『風林火山』(東宝配給)との東西時代劇対決の様相ともなり、勝プロの『人斬り』はキネマ旬報ベストテンでは圏外の第14位で、三船の『風林火山』の第10位に敗れたものの、興行成績は1969年度(4月から12月)の興行ベストテン第4位に入る大ヒットとなった[3][4][6][注釈 2]。また2004年(平成16年)発表のオールタイムベスト・テン時代劇のランキングでは第51位となった[16]。
見どころはリアルな死闘の暗殺場面や豪快な殺陣の立ち回りで、勝が扮する以蔵の人間臭い喜怒哀楽や、田中新兵衛役の三島の迫真の切腹演技も好評であった[6][7][8][17]。この約1年後に三島は実際に切腹死するが(詳細は三島事件を参照)、自決のわずか1年前の三島の姿がたっぷりと見られる映画として貴重な資料にもなっている[6][18]。
公開時の惹句は、「斬る!斬る!斬る! 問答無用でぶった斬る!!」、「勝が斬る!仲代が斬る!三島が斬る!裕次郎が斬る! 問答無用でぶった斬る!!」である[10][19][20]。併映は井上芳夫監督の『女賭博師丁半旅』(出演:江波杏子、藤巻潤)である[6][20][注釈 3] 『人斬り』の主役となる岡田以蔵は、製作の勝プロダクション社長でもある勝新太郎が演じている。独立プロを持つ以前は市川雷蔵と共に「カツライス」と呼ばれて大映の二枚看板を担っていた大スター勝新太郎は、映画史に残る時代劇『座頭市』シリーズに代表されるように、迫力満点の殺陣の演技で定評があり、その怪物的なアウトロー役のスケールの大きさと貫禄は主役を張るのに充分であった[10][22][23]。 岡田以蔵といえば、幕末の京都で土佐最強の「人斬り」として怖れられた冷徹な暗殺者という暗く殺気のあるイメージだが、勝新太郎の演じる以蔵はどこか人懐っこく感情表現豊かで、泥臭く人間味のある硬骨漢として登場する[10][18]。また、以蔵が未来に明るい希望を宿しつつ挫折を味わい、絶望の淵から這い上がろうとする様も哀切風に描かれ、坂本龍馬や田中新兵衛との友情や、女郎・おみのへの情愛なども加味された演出となっている[7][10]。
おもなキャスティング
四柱スター競演